【動画どうが公開こうかい】沖縄おきなわ戦せん当時とうじ 旧きゅう日本にっぽん軍ぐん司令しれい部ぶ壕ごうの新あらたな映像えいぞうが公開こうかい

旧きゅう日本にっぽん軍ぐんが、この場所ばしょにあった司令しれい部ぶを放棄ほうき。

その後そのご、多おおくの住民じゅうみんと兵士へいしが混在こんざいして南みなみへ逃のがれていく中なかで、アメリカ軍ぐんの激はげしい攻撃こうげきを受うけ、多おおくの住民じゅうみんの犠牲ぎせいを出だすことになりました。

今回こんかい、その司令しれい部ぶ壕ごうの新あらたな映像えいぞうが公開こうかいされました。

公開こうかいされた映像えいぞうは

沖縄おきなわ県けんは、県民けんみんの4人にんに1人にんが命いのちを落おとした1945年ねんの沖縄おきなわ戦せんで旧きゅう日本にっぽん軍ぐんの第だい32軍ぐんが首くび里さと城じょうの地下ちかに造つくった司令しれい部ぶ壕ごうの調査ちょうさを行おこなっています。

4年ねん前まえに「第だい5坑道こうどう」と呼よばれる区域くいきの映像えいぞうを公開こうかいしたのに続つづき、このたび新あらたに「第だい2坑道こうどう」と「第だい3坑道こうどう」の撮影さつえいを行おこない、22日にち公開こうかいしました。

このうち「第だい3坑道こうどう」は、多おおくの観光かんこう客きゃくが訪おとずれる守まもり礼れい門もん周辺しゅうへんの地下ちか13メートルほどの場所ばしょに広ひろがっていて、牛島うしじま満みつる司令しれい官かんの執務しつむ室しつなどがあったとされています。

「南部なんぶ撤退てったい」決定けっていが住民じゅうみん犠牲ぎせいの拡大かくだいに

第だい32軍ぐんは当時とうじ、南下なんかしてきたアメリカ軍ぐんを前まえに劣勢れっせいを強しいられていて、牛島うしじま司令しれい官かんらは司令しれい部ぶ壕ごう周辺しゅうへんで決戦けっせんを仕掛しかけるか、沖縄おきなわ本島ほんとう南部なんぶへ撤退てったいして戦闘せんとうを継続けいぞくするか議論ぎろんした結果けっか、5月つき22日にちに南部なんぶへの撤退てったいを決きめました。

南部なんぶには住民じゅうみんたちも避難ひなんしていて犠牲ぎせいが拡大かくだいし、およそ3か月かげつ続つづいた沖縄おきなわ戦せんのうち、第だい32軍ぐんが南部なんぶへ撤退てったいして以降いこうのおよそ1か月かげつの期間きかんに多おおくの住民じゅうみんが亡なくなっています。

県けんは、司令しれい部ぶ壕ごうの5つある出入り口でいりぐちのうち2つを整備せいびして、来らい年度ねんどと再来さいらい年度ねんどに公開こうかいしていきたいとしています。

全長ぜんちょう約やく1キロの壕ごう 当時とうじは約やく1000人にんが

第だい32軍ぐんの司令しれい部ぶ壕ごうは、首くび里さと城じょうの地下ちかの深ふかさおよそ10メートルから30メートルの場所ばしょに、5つの出入り口でいりぐちのある坑道こうどうが南北なんぼくに縦断じゅうだんするように掘ほられていて、全長ぜんちょうはおよそ1キロと沖縄おきなわ県内けんないにある地下ちかごうの中ちゅうでも屈指くっしの規模きぼとなっています。

首くび里さと城じょうの地下ちかの地盤じばんがアメリカ軍ぐんの攻撃こうげきに耐たえられる強度きょうどを持もっていたとされることに加くわえ、高台たかだいにあって周囲しゅういの戦況せんきょうを把握はあくしやすかったことからこの場所ばしょに構築こうちくされ、当時とうじ、1000人にん以上いじょうがいたと考かんがえられています。

沖縄おきなわ戦せんの当時とうじ、通信つうしん隊員たいいんとして司令しれい部ぶ壕ごうに出入でいりしていた宮平みやだいら盛さかり彦さんは生前せいぜん、NHKの取材しゅざいに対にたいし、「司令しれい部ぶ壕ごうの中なかにちょっとした部屋へやがあり、そこで作戦さくせん会議かいぎなどをやっていたのだと思おもう。地図ちずを広ひろげるなどしている人ひとの姿すがたが見みえた」と話はなしていました。

今回こんかい公開こうかいされた「第だい2坑道こうどう」「第だい3坑道こうどう」は

この司令しれい部ぶ壕ごうのうち、今回こんかい撮影さつえいされたのは、「第だい2坑道こうどう」と「第だい3坑道こうどう」です。

「第だい3坑道こうどう」の出入り口でいりぐちは、多おおくの観光かんこう客きゃくが訪おとずれる守まもり礼れい門もんのすぐ近ちかくで、地下ちか13メートルほどの場所ばしょに高たかさ2メートル、幅はば3メートルほどのトンネルが続つづいています。

司令しれい部ぶが撤退てったいした直後ちょくごに調査ちょうさを行おこなったアメリカ軍ぐんの報告ほうこく書しょによると、牛島うしじま満みつる司令しれい官かんの執務しつむ室しつなどがあったとされ、報告ほうこく書しょの写真しゃしんからは、壁面へきめんに柱はしらが並ならべられ壕ごうを支ささえていたことがわかります。

また、参謀さんぼうの1人にんは、内部ないぶの空気くうきの流ながれが悪わるかったことから、出入り口でいりぐちに比較的ひかくてき近ちかいこの場所ばしょに首脳しゅのうの部屋へやが配置はいちされたと記しるしています。

その先さきに続つづく「第だい2坑道こうどう」を70メートルほど進すすむと司令しれい部ぶが南部なんぶ撤退てったいの前まえに爆破ばくはした地点ちてんに行いき当あたります。

その先さきには暗号あんごう室しつなどがある「第だい1坑道こうどう」があるとされていますが、司令しれい部ぶ撤退てったい後ごにアメリカ軍ぐんが入はいって以降いこう、内部ないぶは確認かくにんされていません。

また、今回こんかいは、「エンジニアリングトンネル」と呼よばれる小規模しょうきぼな坑道こうどうも撮影さつえいしました。

この坑道こうどうがどのように使つかわれていたかは分わかっていませんが、比較的ひかくてき、保存ほぞん状態じょうたいがよく、当時とうじの柱はしらの一部いちぶがそのまま残のこっていることが確認かくにんできました。

当時とうじ 南部なんぶに避難ひなんし戦闘せんとうに巻き込まきこまれた人ひとは

79年ねん前まえの1945年ねん5月つき22日にち、旧きゅう日本にっぽん軍ぐんの第だい32軍ぐんは首くび里さと城じょうの地下ちかに造つくった司令しれい部ぶを放棄ほうきし、沖縄おきなわ本島ほんとう南部なんぶに撤退てったいすることを決きめました。

そのおよそ1か月かげつ前まえ、那覇なは市しの山田やまだ芳男よしおさん（93）は育そだての親おやである大だい叔母おばの菊枝きくえさんや大だい叔父おじの朝あさ功いさおさんと司令しれい部ぶの近ちかくにあった自宅じたくから南部なんぶに避難ひなんしました。

第だい32軍ぐんが撤退てったい後ご、住民じゅうみんと日本にっぽん兵へいが混在こんざいする中なかで、アメリカ軍ぐんの攻撃こうげきが激はげしさを増ましていきます。「鉄てつの暴風ぼうふう」とも呼よばれる大量たいりょうの砲弾ほうだんから逃げ惑にげまどう中なか、山田やまださんは多おおくの人ひとの死しを目の当まのあたりにしました。

山田やまださんは「自分じぶんたちは兵隊へいたいと一緒いっしょに逃にげているようなものだった。そのため犠牲ぎせいが多おおくなったと思おもう」と当時とうじを振り返ふりかえっています。

そしてアメリカ軍ぐんの攻撃こうげきによって山田やまださんは菊枝きくえさんと朝あさ功いさおさんを失うしないました。

菊枝きくえさんが亡なくなったのは南部なんぶ撤退てったいの決定けっていから1か月かげつ後ごの6月つき22日にちです。

その日ひは、第だい32軍ぐんが司令しれい部ぶを移転いてんした糸満いとまん市し摩文仁まぶに周辺しゅうへんの壕ごうにいて、別べつの場所ばしょに避難ひなんしようと壕ごうの外そとに出でた直後ちょくご、銃弾じゅうだんに倒たおれました。

アメリカ兵へいに従にしたがい山田やまださんも壕ごうから出でて、その後そのご、トラックで北部ほくぶの収容しゅうよう所しょに移動いどう中ちゅう、山田やまださんのひざの上うえで菊枝きくえさんは息いきを引き取ひきとりました。

山田やまださんは「大叔母おおおばが壕ごうから出でて行いこうとするのを『一緒いっしょに行いくから待まってよ』と引き止ひきとめることができなかった。元気げんき者しゃだったのでくやしい」と今いまも声こえをかけなかったことを悔くやんでいます。

その上うえで山田やまださんは「ロシアがウクライナ侵攻しんこうを始はじめた時とき、沖縄おきなわ戦せんを真っ先まっさきに思い出おもいだし、われわれが体験たいけんしたことと同おなじだとかわいそうに思おもった。戦争せんそうをすれば互たがいに被害ひがいが出でて、戦勝せんしょう国こくも敗戦はいせん国こくもない。話し合はなしあって戦争せんそうを起おこさないようにする、それしかない」と話はなしていました。

県けん “司令しれい部ぶ壕ごう 早期そうきに調査ちょうさ 保存ほぞん・公開こうかいを”

沖縄おきなわ戦せんから79年ねんとなる中なか、これまで平和へいわ学習がくしゅうで活用かつようされてきたガマや壕ごうの中なかには、風化ふうかや劣化れっかが進すすんで入いれないところが出でてきています。

また、自治体じちたいによっては近年きんねん、開発かいはつや防災ぼうさい対策たいさくの一環いっかんで一部いちぶの壕ごうを埋うめ戻もどすケースもあるということです。

こうした中なか、沖縄おきなわ県けんは、第だい32軍ぐんの司令しれい部ぶ壕ごうについて、住民じゅうみんの命いのちを軽視けいしした沖縄おきなわ戦せんの実相じっそうを凝縮ぎょうしゅくした戦跡せんせきだとして保存ほぞん・公開こうかいに取り組とりくんでいて、来年度らいねんどには「第だい5坑口こうこう」を令りょう和わ8年度ねんどには「第だい1坑口こうこう」の公開こうかいを目指めざしています。

玉城たまき知事ちじは「早期そうきに調査ちょうさをし、公開こうかいできるところは公開こうかいをして、広ひろく県民けんみんや国民こくみんの皆みなさんに沖縄おきなわにおける戦況せんきょうの状況じょうきょうなどについて、歴史れきし教育きょういくとしてしっかりと伝つたえていかなくてはいけない」と述のべています。

「人ひとの記憶きおく」から「モノの記憶きおくへ」

22日にち、新あらたに公開こうかいされた第だい32軍ぐん司令しれい部ぶ壕ごうの「第だい2坑道こうどう」と「第だい3坑道こうどう」の映像えいぞうについて、沖縄おきなわ戦せんの専門せんもん家かで20年ねん以上いじょう前まえにみずから調査ちょうさに入はいったこともある元もと沖縄おきなわ国際こくさい大学だいがく教授きょうじゅの吉浜よしはま忍しのぶさんに聞ききました。

「すでに映像えいぞうが公開こうかいされている第だい5坑道こうどうはまっすぐ伸のびている通路つうろなのに対にたいし、今回こんかい、撮影さつえいされた坑道こうどうは交差こうさするなど複雑ふくざつさがあり、まさに『司令しれい部ぶ壕ごう』だという印象いんしょうを受うけた。壕ごうを支ささえた坑木こうぼくやつるはしで掘ほった跡あとなど当時とうじのものが残のこり、リアリティーや歴史れきしを感かんじる一方いっぽうで、水みずがたまっていたり崩落ほうらくしていたりする現実げんじつも感かんじている」

その上うえで、次つぎのように述のべて保存ほぞんや公開こうかいに取り組とりくむべきだとしています。

「どのように使つかわれていたのかを明あきらかにするため、アメリカ軍ぐんの資料しりょうと32軍ぐん幹部かんぶの手記しゅきを突き合つきあわせて、何なにが残のこっているのか調査ちょうさしてほしい。戦争せんそう体験たいけん者しゃが急激きゅうげきに少すくなくなるいま、人ひとの記憶きおくからモノの記憶きおくへと転換てんかんする分岐ぶんき点てんに来きている」

また、第だい32軍ぐん司令しれい部ぶ壕ごうで決きめられた南部なんぶ撤退てったいについては。

「当時とうじの日本にっぽん軍ぐんの戦略せんりゃくによって南部なんぶに軍人ぐんじんと民間みんかん人じんが混在こんざいし、住民じゅうみんが攻撃こうげきの対象たいしょうになってしまい犠牲ぎせいが増ふえた。第だい32軍ぐん司令しれい部ぶ壕ごうはそうした作戦さくせんが決きめられた場所ばしょであることを具体ぐたい的てきに伝つたえていく戦跡せんせきだ」