今回の問題を受けて、自民党は23日すべての議員を対象にした会合を開き、政治資金規正法の改正に向けて独自の案をまとめました。
案は「再発防止に向けた最優先の制度改革」と「再発防止策以外の検討項目」の2つの要素で構成しています。
このうち「再発防止に向けた最優先の制度改革」では、議員の責任を強化するため、収支報告書が法律に基づいて作られていることを確かめたことを示す「確認書」を作成することを議員本人に義務づけるとしています。
そして会計責任者が虚偽の記載や不記載で処罰された際に、議員が内容を確かめず「確認書」を作成していた場合は議員の公民権を停止するとしています。
また収支報告書に不記載があった場合、記載していなかった収入を国に納付させ、会計責任者が処罰された場合はより厳格な措置を講じるとしています。
さらに外部監査を強化し、議員の政治団体の支出だけでなく収入も対象に含めることや収支報告書のオンライン提出を義務づけることも盛り込んでいます。
一方「再発防止策以外の検討項目」では、政党交付金の使いみちや政党から議員に支給される「政策活動費」の透明性のあり方、それに政治資金パーティー収入の透明性のあり方などについて各党と真摯(しんし)に協議を行うとしています。
自民党はこうした案をもとに、公明党との間で実務者による協議を進めて週内にも合意を目指す方針です。
自民 作業チーム座長 鈴木氏「厳しい罰則 連座制に近い」
自民党の作業チームの座長を務める鈴木馨祐・元外務副大臣は会合のあと記者団に対し「厳しい罰則を導入して再発防止に向けて抑止力を効かせることが最大の趣旨で、『知らない、秘書がやった』という言い訳はできなくなる。厳密な『連座制』ではないが『連座制』と言われるものには近いと思う」と述べました。
また収支報告書に不記載があった場合、記載していなかった収入を国に納付させる措置について「与野党問わずさまざまな不記載の事案があったが、すべてにおいて適用されることになる」と述べました。
今後 与野党協議の見通し
自民党の案がまとまったことで今後は、政治資金規正法の改正に向けて与党の協議を経て与野党の協議が行われる見通しです。
今後の協議はどうなるのか。
各党の案を比較しますと、再発防止に向けて、議員本人の責任を強化しようという方向性は、一致しています。
いわゆる「連座制」ということばを使っている党もあり、収支報告書に虚偽の記載や不記載があった場合に、具体的にどういう仕組みで議員本人の責任を強化するのかが最大の焦点になります。
収支報告書のさらなるデジタル化や透明化を図るため、政治資金に対する外部監査の強化についても多くの党が主張しています。
一方、企業・団体献金の扱いや、党から議員に支給される「政策活動費」、国会議員に毎月100万円が支給されている旧「文書通信交通滞在費」、今の「調査研究広報滞在費」の使途の公開などについてどこまで検討が進むのかもポイントになる見通しです。
自民 森山総務会長「衆院特別委で与党の考え示したい」
自民党の森山総務会長は記者会見で「岸田総理大臣が議員本人の責任強化や外部監査の強化、デジタル化による透明性向上などを法改正のポイントとして挙げているので、それに沿った案になると思う。今週26日には衆議院の特別委員会が開催される予定なので、それまでに党内の意見集約を行い、与党としての考えを示したい」と述べました。
自民 松山参院幹事長 “報告書確認を議員に義務づけ 大変有効”
自民党の松山参議院幹事長は記者会見で、党独自の案に、収支報告書の内容の確認を議員本人に義務づけることを盛り込む方向で調整していることについて「議員の責任を明確化し、収支報告書の正確性を担保する上でも大変有効だ。1年間の収支報告書は膨大な量で、本人がきちんと確認するのは大変な作業になるので、デジタル化も必要になってくるだろう」と述べました。
自党 梶山幹事長代行「政治家が責任を持つ制度を」
自民党の梶山幹事長代行は、記者会見で「不適切な会計処理が行われた場合に、会計責任者にとどまらず、政治家が責任を持つ制度を作らなければならない。公職選挙法の『連座制』を、そのまま適用するのが適切かは議論する余地があるが、より厳格な責任体制の確立と罰則の強化は必要だ」と述べました。
立民 泉代表「国民の期待に応える内容ではない」
立憲民主党の泉代表は党の会合で「これだけ大きな不祥事を起こしながら、自民党は改革案を小さく出している。『裏金問題』が免責されるものではなく、全く国民の期待に応える内容ではない。私たちは、企業・団体献金の禁止や政策活動費の廃止、政治資金パーティーもやめるべきだと言っている。こうした明快さが自民党の改革には何も無く、実質ゼロ回答のようなものだ。微修正の改革案でお茶を濁させることを許してはいけない」と述べました。
維新 音喜多政調会長「岸田総理大臣の姿勢は極めて消極的」
日本維新の会の音喜多政務調査会長は、記者団に対し「議員本人への罰則強化などは、まさに最低限の最低限で、やって当たり前だ。自民党には、企業・団体献金や、政策活動費の廃止、それに政治資金パーティーの規制について、率先して結論を出そうとする気配が全く見られない。岸田総理大臣の姿勢は極めて消極的で残念だ」と述べました。
公明 山口代表「『連座制』優先度高い」
公明党の山口代表は、記者会見で「自民党が案を示す方向が見えてきたが、『やっと』というのが正直なところだ。自民党自身が、みずから改革を成し遂げる具体的な姿勢を示していくことが重要で、そうでなければ政治の信頼回復は難しくなる」と指摘しました。
その上で、具体的な法改正の内容について「いわゆる『連座制』で議員の責任を強化し、抑止力を高めることの優先度が高い」と述べました。
また、国会議員に支給されている旧「文書通信交通滞在費」、現在の「調査研究広報滞在費」の使いみちや公開のあり方についても検討したいという認識を示しました。
共産 穀田国対委員長「対応には本気度と反省が感じられない」
共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「自民党の対応には本気度と反省が感じられない。つい先日まで『自民党の改革案は無い』と言っておいて、岸田総理大臣が問い詰められると『出します』と言い、右往左往している。どこから考えてもいいかげんであきれてものが言えない」と述べました。
国民 玉木代表「野党案をまとめ与党にぶつけることも一案」
国民民主党の玉木代表は、記者会見で「まずは自民党案について、条文も含めて内容を見させて頂きたい。自民党は、最初は『出さない』と言っていたが、公明党からも尻をたたかれてようやく出すことになった。小出しに、言われた分だけ出していく態度そのものが、国民からの大きな不信感を招いている。払拭につながるのか、厳しく見定めていきたい」と述べました。
また、玉木氏は「与党案が仮にまとまるのなら、野党として共通で『絶対やるべき』ということをまとめて出すことも一案だ。立憲民主党は、政治資金パーティーの禁止などを主張しているが、『自民党がそれを飲まないかぎり留保付きだ』としており、どこまで実効性があるかだ。本当にやらなければならない改革を、まず野党で案をまとめて与党にぶつけることも一案だ」と述べました。