ボランティアにお願おねがいして、貴重きちょう品ひんや思い出おもいでの品しなを探さがしてもらいました。

出でてきたのは大おおきな箱はこ。中なかはきれいな状態じょうたいのままです。

飾かざる時期じきは過すぎていますが、「宝物ほうもつ」が見みつかったことが少すこしだけ前まえを向むかせてくれました。

「立ち止たちどまりたいけど…」

廣田ひろた寿子ひさこさん（63）は地震じしんで珠洲すず市し宝立ほうりゅう町まちの自宅じたくが倒壊とうかい。

一緒いっしょに住すんでいた夫おっとの均ひとしさん（65）と義理ぎりの母親ははおやの咲子さきこさん（93）を亡なくしました。

被災ひさい後ご、いったんは県けん外がいで暮くらす子こどものもとに身みを寄よせていましたが、珠洲すず市内しないにある実家じっかから自宅じたくに通かよい、少すこしずつ片付かたづけを続つづけています。

廣田ひろた寿子ひさこさん

「この現状げんじょうを見みると、ほんとにあんまり変かわってないので。あっという間あっというまだったし、これから先さきもまだまだ続つづく。長ながいので、本当ほんとうに1つ1つ私わたしにできることをやってきました。

1つずつこなしていかないとなかなか決着けっちゃくがつかないことが多おおいので。立ち止たちどまりたいけど、立たち止とまれないっていうのが現実げんじつなので」

「まさかこれが」

倒壊とうかいした自宅じたくは、解体かいたいすることが決きまっています。

3月末げつまつ、寿子ひさこさんは専門せんもんの知識ちしきを持もったボランティアに依頼いらいして、自宅じたくの中なかにある貴重きちょう品ひんや思い出おもいでの品しなを探さがしてもらいました。

がれきの山やまから見つけ出みつけだした大おおきな箱はこ。

開あけてみると、中なかには3段飾だんかざりの、昔むかしながらのひな人形ひなにんぎょうが入はいっていました。

寿子ひさこさん

「こっち見みていいですか？ああ、全然ぜんぜん大丈夫だいじょうぶでした。めっちゃきれいです」

お内裏だいりさまにおひなさま。

三さん人にん官女かんじょも1つも壊こわれていませんでした。

女の子おんなのこの孫まごが多おおく、春はるになると娘むすめや孫まごのために飾かざってきたものです。

寿子ひさこさん

「全然ぜんぜんぬれていない。まさかこれが助たすかってくれるとはびっくりです。宝物ほうもつを見みつけました。見みつからないと諦あきらめていたのが見みつかるのはうれしいですよね。解体かいたいするときは見みつけるといってもできんよね、そこまで」

ひな祭ひなまつりの時期じきはもう過すぎています。

それでも家族かぞくで大切たいせつにしてきた「宝物ほうもつ」が見みつかったことが、すこし前まえを向むかせてくれました。

「ちょっと落ち着おちついたら、時期じきはずれのおひなさま出だそうかな。それぐらいしか楽たのしみないし。本当ほんとうにありがとうございます」

ほかにも出でてきたものがあります。

亡なくなった義理ぎりの母はは、咲子さきこさんが詠よんだ短歌たんかの冊子さっしです。

短歌たんかを愛あいした咲子さきこさんが手書てがきでつづった、大切たいせつなものでした。

「見みつけてもらって本当ほんとうに喜よろこんでいると思おもいます。なんせ短歌たんかが趣味しゅみなので、短歌たんかの詩集ししゅうであったりとか、見みつけるのは本当ほんとうに諦あきらめていました、全部ぜんぶ」

「私わたしだけが生いかされた」

寿子ひさこさんは、亡なくなった均ひとしさん、咲子さきこさんと同おなじ家いえの中なかにいました。

今いまでもふと当時とうじのことを思い出おもいだすと、つらくなります。

1月つき、2月つき、3月つきと過すぎました。

今いまはとにかく、1つ1つできることを続つづけていくしかないと考かんがえています。

寿子ひさこさん

「動うごけるかなと思おもって動うごき過すぎるところがあるので、子こどもたちからは『ちょっと休やすめ』と言いわれています。でもね、『主人しゅじんの分ぶんまで頑張がんばらないと』という思おもいもあったりして。『私わたしだけが生いかされた』っていうところもあるので。胸むねが痛いたくなるときもあるんですけど、能登のとの女おんなの人ひとは強つよいですから、頑張がんばるしかないです」

（金沢かなざわ放送ほうそう局きょく 記者きしゃ 園山そのやま紗しゃ和わ）