その結果、去年1年間でこのうちの10隻余りが、尖閣諸島から200キロ以内の東シナ海でも活動していたことがわかりました。
中には尖閣諸島の領海や接続水域を航行した船も確認できました。
中国漁船に実際、「海上民兵」が乗っていたかどうかは分かりませんが、海上保安庁も、こうした東シナ海での動きを把握していて、その活動を注視しています。
CSISのグレゴリー・ポーリング上級研究員は、「海上民兵を活用し、平時から圧力をかけ続けることで、監視・警戒する海上保安庁に負荷をかけている」と分析しています。
表向き漁業をしていますが、国の政治的や軍事的な目的を達成するためにさまざまな活動をするとされています。 CSISは去年11月に発表した報告書で、中国側の公開情報などをもとに広東省や海南省を母港とし、南シナ海で活動する合わせて122隻の漁船を、海上民兵の船として特定し、それらの船のリストを公表しています。 CSISの分析では、これらの漁船は領有権を争う海域などに大量に出航して居座る示威活動のほか、体当たりなどの妨害、監視や偵察の活動を担っているということです。 海上保安庁などによりますと、中国政府は「民兵」については、法律などで武装力として位置づけていますが、「海上民兵」については公式な見解を示していないということです。
CSISによりますと、中国は、南シナ海の南沙諸島、英語名・スプラトリー諸島で、2016年に人工島を建設して以降、平時の活動を通して実効支配を進める動きを強め、「海上民兵」の漁船を積極的に活用しているとしています。 アメリカ海軍の司令官は、2016年5月、中国が造成する人工島の周辺などにアメリカ軍の艦艇を派遣した際、艦艇が海上民兵が乗り組む船に取り囲まれるケースが相次いだことを明らかにしました。 最近では、去年3月、中国と領有権をめぐって対立するフィリピン政府が、自国の排他的経済水域とする南シナ海の海域で、中国の漁船およそ220隻が停泊しているのが確認され、一部の漁船はおよそ2か月もとどまり続けました。 フィリピン政府やアメリカの国務省は、これらの漁船に「海上民兵」が乗り組んでいるという見方を示していました。 この際、中国外務省の報道官は「中国側の漁船の作業は合法だ」などと述べ、正当性を主張したうえで、「中国の漁民をいわゆる『海上民兵』と呼ぶ理由がわからない。下心と悪意がある」などと反発していました。
まず、多くの漁船が、中国がフィリピンやベトナムなどと領有権を争う南シナ海を航行しています。 しかし、7月末以降、南シナ海から東シナ海に向かって行く複数の漁船が確認できます。 日本が主張するEEZ=排他的経済水域の付近を航行し、一時とどまるなどして、再び、南シナ海の方向へ戻っていました。
この船は、南西から北東に移動し、尖閣諸島の領海や接続水域を通過。 その後、今度は北東から南西に向かって再び尖閣諸島付近を航行し、南シナ海に戻っていました。 去年1年間で確認されたこれらの漁船は10隻余りで、CSISのポーリング上級研究員によりますと、海南島の三亜市から出港した船が多く、より訓練を受けた漁船とみられると指摘しています。
ポーリング上級研究員は、「中国側としては、海上民兵を活用し、平時から圧力をかけ続けることで、監視、警戒する海上保安庁に負荷をかけている」と分析しています。 その上で、「中国の目標は、尖閣諸島周辺と南シナ海全体を実効支配することだ。軍事力には及ばない海警局の船と民兵船を利用し続け、南シナ海と同じように尖閣諸島周辺もゆっくりと、着実に支配を強めていることに対して、日本側としてどう対応していくか考えなくてはならない」と指摘しました。 また、中国の海洋政策を研究している筑波大学の毛利亜樹助教は「尖閣諸島をめぐっての緊張は、国力を増大させてきた中国とアメリカの優位をめぐる競争という大きな対立構造の一部だ。中国の挑戦を直視しつつ、複合的な対応をしていく冷静さと視野の広さが日本には必要だ。軍事衝突へのきっかけを日本側から作ることは大きな失敗だ。現場海域では海上保安庁がいまやっているように中国を静かに押し返しつつ、外交で国際社会を味方につける対応に尽きる」と指摘しています。
「海上民兵」表向き漁業 軽武装で特別な訓練受ける
中国は南シナ海で「海上民兵」を活用 米研究所指摘
南シナ海から東シナ海に向かう複数の漁船を確認
米専門家 中国の目標は尖閣諸島周辺と南シナ海の実効支配