消防によりますと、城の中心的な建物の「正殿」などが激しく燃え、現在、消防車20台以上が出て消火活動を続けています。
警察によりますと、この火事で、「正殿」と「北殿」が全焼しました。
また、「南殿」など城内にあるほかの建物にも次々と燃え広がっているということです。
消防などによりますと、これまでのところ、けが人の情報は入っていないということです。
首里城は、琉球王国時代のおよそ500年前に建てられ、昭和8年に国宝に指定されましたが、太平洋戦争中の沖縄戦で焼失しました。
平成4年には「正殿」が復元され、その後、ほかの建物も順次復元されていて、平成12年には城跡が県内にあるほかの城の跡とともに「世界遺産」に登録されています。
首里城では、今月27日から琉球王国時代の儀式を再現する「首里城祭」というイベントが開かれていて、警察によりますと、31日未明まで開催予定の催しの準備などが行われていたということです。
警察や消防が火が出た原因などを調べています。
那覇市消防局によりますと今回の火事で消火活動にあたっていた40代の男性隊員1人が脱水症状を訴え、近くの病院に運ばれて
手当てを受けているということです。
那覇市は午前6時20分、首里公民館と石嶺公民館に避難所を開設しました。
市は午前6時から城南小学校にも避難所を開設しています。
那覇市役所によりますと午前7時現在、石嶺公民館に3人、城南小学校には6人が避難しているということです。
城南小学校には一時、30人が避難していたということです。
首里城周辺には住宅街があり、午前4時すぎには南から南東の方向に小さな火の粉が飛んでいて、警察は近くに立ち入らないよう呼びかけています。
那覇市消防局は、午前4時すぎから市の防災無線を使って市内全域に対し、首里城で火災が起きていることと、風にあおられて火の粉が飛ぶおそれがあるとして住宅などの火災に警戒するよう呼びかけています。
首里城公園は
首里城公園は那覇市東部の市内を一望できる高台にあり、沖縄都市モノレール「ゆいレール」の首里駅のすぐそばにあります。
首里城公園の周辺には学校施設が複数あり、城西小学校、首里高校、それに県立芸術大学の首里当蔵キャンパスが隣接しています。
首里城公園は、来年の東京オリンピックで行われる聖火リレーの沖縄県内のルートにもなっています。
県の実行委員会は、沖縄の歴史や文化の魅力、そして平和の大切さを国内外に発信することを踏まえてルートを選定していて、首里城公園は、県内で初日となる来年5月2日のスタート地点となっています。
「正殿」とは
首里城公園のホームページによりますと、首里城の「正殿」は、琉球王国最大の木造建築物で、百浦添御殿とも呼ばれています。
琉球王国の支配を示す象徴で首里城で最も中心的な建物です。
2層3階建ての木造造りや龍の形に装飾された柱は日本や中国にも例がなく独自の形式だとしています。
1階は「下庫理」と呼ばれ主に国王みずから政治や儀式を執り行う場所、2階は「大庫理」と呼ばれ、国王と親族、女官らが儀式を行う場所、3階は通気を目的とした屋根裏部屋となっています。
また、正殿の壁などには桐油が塗られていて、下地の一部は漆が塗られているということです。
「琉球の象徴」
首里城の復元や保存の作業に携わり琉球王国の歴史が専門の琉球大学の高良倉吉名誉教授は「炎に包まれている首里城を見て絶句した。沖縄戦で失われた琉球の歴史の象徴的な存在の首里城をよみがえらせようということを合言葉に、30数年前から復元プロジェクトに携わり、その作業は多くの人間の知恵の結晶でもあった。首里城は建物だけではなく、内部の道具類なども当時のまま復元していて、現実を受け止めきれていない」と話していました。
また首里城の復元に携わった沖縄県立博物館・美術館の田名真之館長は火災の映像を見て「復元の苦労を知っているだけに火災は信じられません。資料がなく、宮大工もいない中で、材料になる木を台湾から持ち込むなどして復元が進められた多くの人の英知が詰まっている建物です。ことばにならない思いです」と話していました。
「首里城祭」の期間中
首里城公園では、4日前の今月27日から毎年恒例の「首里城祭」が始まり、来月3日までの期間中、さまざまなイベントが行われているところでした。
初日はおよそ700人による華やかな「琉球王朝絵巻行列」が行われ、今週末の3連休中の来月3日には、国王が、国家の安寧と五穀豊じょうを祈願するため、お寺を参詣(さんけい)した様子を再現した「古式行列」など多くのイベントが予定されています。
近くの人は
首里城から南西に500メートルほどの距離にあるコンビニの店員によりますと「午前3時ごろに消防車のサイレンを聞いて、火災に気がつきました。ここまでパチパチと燃える音が聞こえて、赤く大きな炎も見えます。首里城が燃えていると聞いてとても驚いています。一刻も早く火が消えてほしいです」と話していました。
また火事の様子を近くで見ていた男性は「長らく築いてきたものがと思うとなんともたまらない気持ちです」とぼう然と立ち尽くして話していました。
近くのマンションに住む63歳の男性は、「窓の外を見ると火の粉が空を舞っているのが見えた。首里城は沖縄の人の心の支えだと思うので燃えたとは信じたくないです」と話していました。
60代の男性は「パトカーのサイレンで火災を知りました。家の上に火の粉が降っていて、危ないなと思い、家を出ました。戦後にやっと首里城が復旧したのにまた火事だと思うと残念です」と話していました。
70代の女性は「午前2時40分ごろにサイレンが鳴ったのですぐに気がつきました。首里城からは小さい火の粉がたくさん降っていました。こんな火災は初めてです。ことばが出ません」と震えながら話していました。
すぐ近くに住む70歳の男性は、「午前3時ごろから消防車のサイレンの音が鳴り止まなかったのですが、まさか首里城が燃えるとは思わず、驚いています。首里城が保管している文化財も燃えていないか、心配です」と話していました。