この中では、「この新しい治療選択肢をまず日本の皆様に、そしてこの薬を必要とする多くの国々に提供できるよう、引き続き、取り組んでまいります」としています。
その上で、「23日より医薬品卸への出庫を開始し、ゾコーバの処方・調剤が可能な登録医療機関・薬局からの発注を順次、受け付ける予定です。緊急承認医薬品として安全性情報の迅速かつ確実な収集と、医療機関に対するタイムリーな提供に取り組みます」としています。
そして、会社では、今後、正式承認の取得を目指す考えを示しました。
詳しくお伝えします。
新型コロナウイルスは感染すると細胞内に侵入し、ウイルスそのもののRNAをコピーして増えていきますが、新たな薬ではコピーの準備段階で働く酵素を機能しなくすることでウイルスの増殖を抑えます。 薬が働く仕組みは、アメリカの製薬大手、ファイザーが開発した飲み薬「パキロビッドパック」と同様となっています。 「ゾコーバ」について、塩野義製薬はことし9月下旬、最終段階の治験で発熱などの症状が出る期間が短くなり、症状を改善する効果が確認されたと発表しました。
投与は1日1回、5日間行われましたが4日目の段階でウイルスの量が偽の薬を投与された人に比べて30分の1程度に減り、重篤な副作用はなかったとしています。 さらに、実験では現在、主流となっているオミクロン株の「BA.5」を含む変異ウイルスに対しても高い効果を示したとしています。 一方で、動物実験では胎児に影響があったことから、妊娠中や妊娠の可能性のある女性は服用できないほか、慢性の病気の治療で薬を服用している場合には服用できないケースもあるとみられます。 厚生労働省は薬事承認が行われることを前提に100万人分を購入することで塩野義製薬と契約していて、国から医療機関に配分され患者の費用の負担は当面はないということです。
そのうえで「オミクロン株が主流となり致死率が下がっているのは確かだが、持病が悪化して亡くなる人はインフルエンザより割合がかなり高く、感染した子どもが重症化して死亡するケースも出てきている。日本は欧米などと比べて感染したことのある人が少なくコロナに免疫がある人はまだ少ないため、感染拡大の波は今後も続く可能性が高いので、治療薬やワクチンを準備していくことは引き続き、重要になっている」と話していました。
薬を使用できるのは、12歳以上の人となっていますが、妊娠中の女性などは使用が禁止されていることや複数の医薬品が併用禁止になっていることから、最初の2週間程度は安全対策として、薬が働く仕組みが同様のアメリカの製薬大手ファイザーが開発した飲み薬「パキロビッドパック」を処方した実績のある医療機関や薬局に限定する予定です。 その後は特段の要件は設けず、各都道府県が選定した医療機関での処方や薬局での調剤ができる体制を整えたうえで、処方可能な医療機関については都道府県などのウエブサイトで公開するとしています。 また今回は新たに設けられた「緊急承認」の制度で承認を行ったため、塩野義製薬は有効性や安全性についての追加のデータの提出などを行った上で、今後1年以内に通常の薬事承認の申請を行うことが義務づけられています。
製薬会社が開発した治療薬やワクチンなどの使用を認める「薬事承認」の手続きでは、通常、申請から承認までおよそ1年ほどかけて審査が行われ、時間を要することからワクチンの承認が海外より遅れた要因のひとつと指摘されていました。 これを受けてことし5月、感染症の流行時などの「緊急時」で「代替手段がないこと」を条件に国内外で開発されたワクチンや治療薬などを迅速に承認するための「緊急承認」の制度が新たに設けられました。 「ゾコーバ」も「緊急承認」の枠組みで審査されることとなり、6月に専門家会議で最初の審議が行われましたが、有効性などについて慎重に議論を重ねる必要があるとして判断が見送られました。 1か月後の7月に開かれた2回目の会議でも「有効性が推定されるという判断はできない」などとして再び判断が見送られ、継続審議となっていました。 こうしたなか、医療機関がひっ迫した”第7波”を踏まえ、9月に日本感染症学会などが重症化リスクが低い患者も服用できる飲み薬が必要だとして早期の承認を求める提言を厚生労働省に提出していました。
「緊急承認制度」は感染症の流行といった緊急時に代替手段がない場合、ワクチンや治療薬などを迅速に承認することを目的にことし5月に設けられた制度で、治験の最終結果が出る前でも安全性が確認され、有効性が推定されれば承認できるとしています。 「ゾコーバ」について塩野義製薬はことし2月、厚生労働省に承認を申請し、その後、緊急承認制度の枠組みのもとで審議されてきました。
その上で「国は臨床試験で有効性が最低限、どの程度示されれば、承認できるのか具体的なラインを示すなど、制度の透明化や負担を減らすことといった改善をはからないと、絵に描いた餅のような制度になってしまうのではないか」と指摘しました。
処方の対象や期待される効果は
専門家「医療現場で望まれてきた薬」
供給開始は
過去の審議では承認2度見送りも
「緊急承認」運用の課題も