ブラジルの国立宇宙研究所によりますと、ことし1月から今月25日までの森林火災の発生件数は7万9000件と去年の同じ時期に比べて82%多く、今の基準で観測が始まった過去6年で最も多い記録的なペースで増加しています。
こうした状況を受けてブラジルのボルソナロ大統領は、今月24日からアマゾンに陸軍や海軍、空軍など最大4万4000人を投入しているほか、1回で1万2000リットルの水をまくことができる、消防用の航空機などを投入し、消火活動にあたっています。
ブラジルでは家畜の放牧地を広げるために、この時期、違法に森林火災を起こすことがありますが、ことしは干ばつの影響などでこうした火災が燃え広がっているということで、軍の関係者が厳しく監視するとしています。
さらにボルソナロ大統領はアメリカのトランプ大統領と連絡を取り、アメリカからの協力も得て火災への対策を行うとしています。
しかし、アマゾンの広い範囲で多数の火災が発生しているだけに軍の派遣による効果には懐疑的な声もあがっていて、火災が収束するめどはたっていません。
森林火災の原因と影響は
ブラジルではこの10年、環境を重視し、アマゾン保護にも積極的な政党が政権を維持してきました。
しかし、ことし1月に就任したボルソナロ大統領は、アマゾンは重要な経済資源だと強調。日本やアメリカにも共同開発を呼びかけるなど、環境を保護しつつ、開発も重視する姿勢を打ち出しました。
ブラジルでは家畜の放牧地を広げるために、この時期、違法に森林火災を起こすことがありますが、ボルソナロ大統領が開発を重視する姿勢を強調した結果、現場では取締りが緩くなったとされていて、森林火災の増加につながっていると指摘が出ています。
また、森林火災が増加したことで煙が空を覆い、飛行機の運航にも一部で影響が出始めているほか、先週、ブラジル最大の都市サンパウロでも煙の影響で空が黒く曇ることがありました。
さらに、アマゾンの保護を軽視するボルソナロ大統領の姿勢により、アマゾンで暮らす多くの原住民が命の危険にさらされているという指摘も出ています。先月には、ブラジル北部のアマゾン川の奥地で先住民の指導者が武装した採掘業者に殺害され、先住民保護区の集落が占領されるという事件がありました。事件後の政府の対応が迅速でなかったこともあり、ボルソナロ大統領がアマゾン保護を軽視する姿勢が事件を許すきっかけになったという批判がヨーロッパを中心に高まりました。
また、国連もボルソナロ大統領に対して開発を重視する政策を再検討するよう求めるなど、ボルソナロ政権への国際的な圧力が高まっています。
非難の声にブラジル大統領は
フランスのマクロン大統領などヨーロッパ各国の首脳からは、ボルソナロ大統領が開発優先でアマゾン保護に消極的な姿勢が森林火災を助長しているとして、非難する声もあがっています。
これに対してボルソナロ大統領は、今月初めアマゾンの森林破壊のデータを発表している国立宇宙研究所の所長を、「うそのデータを流している」として退任させました。
また、G7の議題として取り上げたフランスのマクロン大統領を「彼はうそつきだ」と非難したほか、23日にはツイッターで「マクロン大統領がアマゾンの問題を自分の政治的利益のための道具として利用しようとしている」と投稿するなど、反発を強めています。
官房長官「日本も必要な支援を」
菅官房長官は、記者会見で「状況を懸念している。まずは消火に向けた対応が必要であり、G7=主要7か国としても、可能な支援を各国が検討し、実施することで意見が一致している。日本としても必要な支援を行っていきたい」と述べました。