5年前に消費税率が5%から8%に引き上げられた際は、半年以上前から住宅や自動車などで駆け込み需要が起きましたが、今回は、これまで、目立った駆け込み需要は見られませんでした。
しかし、今月に入って、家電量販店では特に、テレビや洗濯機などで高機能で比較的価格の高いモデルの売れ行きが伸び、駆け込み需要と見られています。
大手デパートでは宝飾品や時計などの高額商品の駆け込み需要が伸びる一方、化粧品や衣料品は伸び方が小さく、商品によって差が出ています。
専門家の間では、5年前の増税の時より全体としては駆け込み需要の規模は小さくなるという見方が多く、政府も「目立った駆け込み需要は起きていない」としています。
これについて、キャッシュレス決済のポイント還元制度への期待など政府の景気対策の効果がすでに出ているという見方がある一方で、大きな駆け込み需要が起きないほど、消費がすでに弱まっているという見方もあり、増税後の消費の動向が注目されます。
専門家「駆け込み小さい」
消費税率の引き上げを前にした駆け込み需要について、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は、「駆け込み需要のかなりの部分は増税の直前に出てくるので、日用品を中心に、駆け込みが出てくるのはこれからだ。ただ、駆け込み全体としては前回の増税時より、かなり小さくなると思う」と分析しています。
斎藤さんは、駆け込み需要の規模が小さい理由について、次の3つを挙げています。
5年前の増税の時と比べて税率の引き上げの幅が小さいうえ、「軽減税率」の導入で酒類と外食を除く飲食料品の税率が据え置かれること。
前回、駆け込みでの購入が多かった自動車などの高額商品は、買い替えのサイクルが長く、今回は、そもそも需要が少ないこと。
そしてキャッシュレス決済のポイント還元制度など政府が実施する景気対策の効果があるとしています。
そのうえで、斎藤さんは、「国内の消費は、前回の増税前の2年ぐらいを見ると、年平均で、2%ほど伸びていたが、今回は1%ほどにも達しておらず、もともとの消費の基調が、かなり弱い」として、前回の増税時と比べて消費意欲そのものが低いと指摘しています。
このため、「政府は、駆け込み需要と、その反動による落ち込みを抑えることに政策の重点を置いているが、税率の引き上げで物価が上昇し、消費者の実質的な収入は目減りしてしまうので、反動が小さくても、その後、消費の弱さが長引く可能性がある」と話しています。