能登のと半島はんとう地震じしんでも… “女性じょせいの視点してん”入いれた防災ぼうさい・災害さいがい支援しえんを

「下着したぎや、おりものシートのニーズは後回あとまわしにされた」

能登のと半島はんとう地震じしんの被災ひさい地ちの女性じょせいから、聞きかれた声こえです。

3月つき8日にちは国連こくれんが定さだめる「国際こくさい女性じょせいデー」。

災害さいがい時じ、女性じょせいの視点してんを取り入とりいれた支援しえんについて考かんがえてみませんか。

“着替きがえができる場所ばしょもない” 支援しえん続つづける女性じょせいは

女性じょせい防災ぼうさいリーダーの育成いくせいなどに取り組とりくんでいる小山こやま内ない世よ喜子のぶこさんは、石川いしかわ県けん穴水あなみず町まちの避難ひなん所しょで支援しえんを続つづけています。

支援しえんした避難ひなん所しょの中学校ちゅうがっこうは、一時いちじは200人にん以上いじょうが避難ひなんしていましたが、性別せいべつにかかわらず空あき教室きょうしつなどに多おおくの人ひとが寝泊ねとまりして、着替きがえができる場所ばしょもなくプライバシーへの配慮はいりょがされていない状況じょうきょうだったということです。

自宅じたくが全壊ぜんかいし、この避難ひなん所しょで生活せいかつしている橋詰はしづめ里美さとみさんに、発はつ災わざわい直後ちょくごの状況じょうきょうを聞ききました。

橋詰はしづめ里美さとみさん

「仕切しきりもないし、あってものぞいたら見みえる高たかさで、布団ふとんの中なかで着替きがえていた。食料しょくりょうの確保かくほが優先ゆうせんされ、下着したぎやおりものシート、尿にょう取とりパッドなど、衛生えいせい用品ようひんのニーズは後回あとまわしにされた。女性じょせいならではの体調たいちょうの変化へんかもあり、避難ひなん所しょの運営うんえいには女性じょせいが関かかわることが必要ひつようだと感かんじた」

こうした状況じょうきょうを聞き取ききとった小しょう山内やまうちさんは、避難ひなんしている人ひとたちとともに、プライバシーを守まもれるようパーティションを設置せっちしたほか、食事しょくじの準備じゅんびや掃除そうじなどの避難ひなん所しょで必要ひつような仕事しごとを書き出かきだし、一部いちぶの人ひとの負担ふたんにならないよう当番とうばん制せいにするなどの環境かんきょうづくりを進すすめたということです。

一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん「男女だんじょ共同きょうどう参画さんかく地域ちいきみらいねっと」 小しょう山内やまうち世よ喜子のぶこ 代表だいひょう理事りじ

「女性じょせいの場合ばあい、清潔せいけつを保たもたなければ膀胱ぼうこう炎えんなどになったりするおそれがあるが、声こえを上あげにくい。また、炊き出たきだしは女性じょせいが作つくるのが当たり前あたりまえとなってきて、それが1か月かげつ2か月かげつ続つづくと女性じょせいが疲弊ひへいしてしまう。自主じしゅ防災ぼうさい会かいなどで話し合はなしあうときには、女性じょせいが入はいって意見いけんを言いうことが大事だいじだ」

“女性じょせい職員しょくいんゼロ”の自治体じちたいが半数はんすう以上いじょう

災害さいがい時じには男女だんじょでニーズや影響えいきょうに違ちがいが出でやすいとして、国くには自治体じちたいに対にたいし、防災ぼうさいを担当たんとうする部署ぶしょに女性じょせい職員しょくいんを配置はいちするなどして災害さいがい対応たいおうを進すすめるよう呼よびかけています。

しかし、内閣ないかく府ふが去年きょねん12月つきにまとめた調査ちょうさでは、全国ぜんこく1741の市区しく町村ちょうそんで、防災ぼうさいや危機きき管理かんりの担当たんとう部局ぶきょくに配置はいちされている女性じょせい職員しょくいんの割合わりあいは、去年きょねん4月つきの時点じてんで平均へいきんで12.2％にとどまり、女性じょせい職員しょくいんが全まったくいない自治体じちたいは900を超こえ、半数はんすう以上いじょうにのぼっています。

生理せいり用品ようひんの種類しゅるい増ぞう 更衣こうい室しつや授乳じゅにゅう室しつも 群馬ぐんま 渋川しぶかわ

群馬ぐんま県けん渋川しぶかわ市しでは5年ねん前まえの台風たいふう被害ひがいをきっかけに防災ぼうさい対策たいさくに女性じょせいの視点してんを盛り込もりこむ取り組とりくみを進すすめています。

防災ぼうさいの担当たんとう部局ぶきょくである危機きき管理かんり室しつにこれまで配置はいちされていなかった女性じょせい職員しょくいんを3人にん配置はいちしたほか、地域ちいき防災ぼうさい計画けいかくに関かかわる女性じょせいメンバーを6割わりまで増ふやしました。

また、女性じょせいの意見いけんを踏ふまえて備蓄びちく品ひんを見直みなおして女性じょせい用ようの生理せいり用品ようひんの種類しゅるいを増ふやすなどしたほか、避難ひなん所しょを設営せつえいする際さいには更衣こうい室しつや授乳じゅにゅう室しつを設もうけるレイアウトを作成さくせいして、プライバシーを確保かくほするパーティションを設置せっちする訓練くんれんを実施じっししたり、高齢こうれい者しゃなどが避難ひなんしやすいよう自主じしゅ避難ひなん所しょにも毛布もうふや食料しょくりょうなどの備蓄びちくを設置せっちしたりしたということです。

渋川しぶかわ市し 危機きき管理かんり室しつ 野中のなか文子ふみこ室長しつちょう

「これまで防災ぼうさいの仕事しごとは男性だんせいの仕事しごとという考かんがえが強つよく、女性じょせいが参加さんかしにくい状況じょうきょうだった。女性じょせいの視点してんを取り入とりいれることで特とくに避難ひなん所しょの対策たいさくの見直みなおしにつながった。男性だんせいも女性じょせいもともに取り組とりくむことで、地域ちいきの防災ぼうさい力りょくの向上こうじょうにもつなげたい」

計画けいかくに理想りそう的てきなことを書かいていても

災害さいがいとジェンダーの問題もんだいに詳くわしい静岡しずおか大学だいがくの池田いけだ恵子けいこ教授きょうじゅは、防災ぼうさい対策たいさくに女性じょせいの視点してんを盛り込もりこむことの必要ひつよう性せいを指摘してきしています。

静岡しずおか大学だいがく 池田いけだ恵子けいこ教授きょうじゅ

「女性じょせいのニーズや男性だんせいのニーズ、子育こそだて世代せだいのニーズなどそれぞれの被災ひさい者しゃに違ちがうニーズがある中なかで、男性だんせいの目線めせんだけで支援しえんをするのには無理むりがある。実際じっさいに女性じょせい職員しょくいんが配置はいちされた自治体じちたいでは職員しょくいんがいない自治体じちたいに比くらべ、女性じょせい用品ようひんの備蓄びちくのほか避難ひなん所しょ運営うんえいの指針ししんに女性じょせいへの支援しえんなどの項目こうもくを盛り込もりこむことが進すすんできている」

内閣ないかく府ふが去年きょねんに公表こうひょうした男女だんじょ共同きょうどう参画さんかくの視点してんでの防災ぼうさいなどの取り組とりくみ状況じょうきょうを調しらべた結果けっかによりますと、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいのあと、全国ぜんこく1651の市区しく町村ちょうそんが地域ちいき防災ぼうさい計画けいかくや避難ひなん所しょ運営うんえいの指針ししんを作つくったり修正しゅうせいしたりしたとしています。

このうち▼プライバシーの確保かくほを盛り込もりこんだと答こたえたのがおよそ82％、▼妊産婦にんさんぷや乳幼児にゅうようじがいる女性じょせいへの支援しえんがおよそ71％、それに▼避難ひなん所しょ運営うんえいへの女性じょせいの参画さんかくの推進すいしんがおよそ59％となっています。

池田いけだ教授きょうじゅはこうした動うごきを一定いってい程度ていど評価ひょうかする一方いっぽう、実際じっさいに災害さいがいが起おきた際さいには避難ひなん所しょで女性じょせいだけが炊き出たきだしを担にない、議論ぎろんや行政ぎょうせいとの調整ちょうせいの場ばには男性だんせいしかいない状況じょうきょうがみられるなど、計画けいかくに書かかれた通とおりに実行じっこうされているかどうかには課題かだいがあるとして「計画けいかくに理想りそう的てきなことを書かいていても、災害さいがい時じにはふだんの社会しゃかいの姿すがたが現あらわれ、日常にちじょうの『性別せいべつ役割やくわり分担ぶんたん』がより顕著けんちょになる」と指摘してきしました。

こうした課題かだいを解決かいけつするために、防災ぼうさい訓練くんれんで男性だんせいが炊き出たきだしを担にない、女性じょせいが全体ぜんたいへの指示しじやテントの設営せつえいを行おこなうなど、ふだんみられる役割やくわりを入れ替いれかえて行いった地域ちいきもあるということです。

池田いけだ教授きょうじゅ

「地域ちいきの女性じょせい防災ぼうさいリーダーを育成いくせいし、ふだんから地域ちいきで男性だんせいも女性じょせいも防災ぼうさいの担い手にないてになることを実体じったい化かしてくことが必要ひつようだ。リーダー層そうに多様たよう性せいがあった方ほうが一人ひとりひとりに必要ひつような支援しえんが届とどきやすくなる」