家族かぞく3人にんで献花けんかに訪おとずれた市内しないの20代だいの男性だんせいは「この地区ちくに住すんでいた祖母そぼを津波つなみで亡なくしました。この日ひになると悲かなしい気持きもちになります。時間じかんが経たっても気持きもちの整理せいりはつきません」と話はなしていました。

黄色きいろいハンカチはこの1年間ねんかんで200枚まいほど増ふえ、これまでのものと合あわせておよそ900枚まいになったということで、発起ほっき人じんの加納かのう純一郎じゅんいちろうさん（72）は「亡なくなられた方ほうに私わたしたちが元気げんきで暮くらしていることが届とどけばいいなと思おもいます」と話はなしていました。

消防しょうぼう団だんのメンバーだった山形やまがたさんは、すぐに自宅じたくを飛び出とびだして近ちかくの水門すいもんを閉とじたあと、町内ちょうないを回まわって避難ひなんを呼よびかけたということです。妻つまや子こども夫婦ふうふたちは高台たかだいに避難ひなんして無事ぶじでしたが、海沿うみぞいで民宿みんしゅくを営いとなんでいた姉あねや親類しんるいが犠牲ぎせいになったということです。

山形やまがたさんは「あの日ひのことは決けっして忘わすれません。大おおきな被害ひがいを受うけましたが、全国ぜんこくの皆みなさんから支援しえんを受うけたおかげで頑張がんばってこられました。毎年まいとし、この日ひは感謝かんしゃの気持きもちで迎むかえています」と話はなしていました。

自宅じたくが全壊ぜんかいし、いまは災害さいがい公営こうえい住宅じゅうたくに住すんでいるという川戸かわど弘ひろし秋あきさん（69）は「田老たろうには津波つなみが数すう十じゅう年ねんおきにやってきます。これからも避難ひなんの方法ほうほうなどを頭あたまに入いれて生活せいかつしなければならないと思おもいます」と話はなしていました。

津波つなみで兄あにを失うしなったという地元じもとに住すむ梶山かじやま美喜子みきこさん（78）は「震災しんさい発生はっせい当時とうじのことを時折ときおり思い出おもいだすことがあります。最近さいきんは昔むかしの田老たろうと比くらべて、1人にん暮くらしの人ひとが多おおくなったような気きがします」と話はなしていました。

山崎やまざきさんは「海うみを見みると今いまでも悲かなしい気持きもちになります。それでも、これからも津波つなみは来くると自覚じかくして、思い出おもいだして子こどもたちに伝つたえていかなくてはいけないと思おもいます」と話はなしていました。

長安寺ちょうあんじは、先行せんこうして避難ひなん指示しじの解除かいじょを目指めざす「特定とくてい復興ふっこう再生さいせい拠点きょてん区域くいき」の中なかにあり、避難ひなん指示しじは今月こんげつ31日にちに解除かいじょされる見通みとおしですが、現地げんちで寺てらを再開さいかいする見通みとおしはたっていないということです。横山よこやま住職じゅうしょくは「浪江なみえ町まち津つ島とうに戻もどる雰囲気ふんいきは出でていますが、遺骨いこつを含ふくめて、まだ帰かえることができません。まだまだこれからだと思おもいます」と話はなしていました。

震災しんさいが起おきる前まえに石巻いしのまき市しに住すんでいて、今いまは名取なとり市しに住すむ40代だいの男性だんせいは「石巻いしのまきにある別べつの日和ひわ山さんを思い出おもいだしながら日の出ひのでを見みていました。『生いかされている自分じぶんが、亡なくなった人ひとの分ぶんもできることをしていきたい』という思おもいになりました」と話はなしていました。

また、閖上ゆりあげ地区ちくで出会であった夫おっとと訪おとずれた仙台せんだい市しの50代だいの女性じょせいは「震災しんさい当時とうじは家いえがぐちゃぐちゃになり、思い出おもいだすとつらい気持きもちになります。でも、『忘わすれたくないし、忘わすれてはいけない』という思おもいで、手てを合あわせに来きました」と話はなしていました。

橋本はしもとさんは震災しんさい直後ちょくごから陸前りくぜん高田たかだ市しなどで炊き出たきだしなどのボランティアを行おこない「奇跡きせきの一本松いっぽんまつ」の保存ほぞん事業じぎょうにも携たずさわったということです。橋本はしもとさんは「地元じもとの人ひとたちと奇跡きせきの一いち本ほん松まつを守まもってきたので3月つき11日にちは思い入おもいいれがあり、毎年まいとし訪おとずれています」と話はなしていました。

また、千葉ちば県けんの今関いまぜき友とも太ふとしさん（31）は「震災しんさい当時とうじ、消防しょうぼう士しだった私わたしに命いのちと向き合むきあうきっかけを教おしえてくれたところなのできょう訪おとずれました。ことしから看護かんご師しとして働はたらくので、命いのちに寄り添よりそいながら仕事しごとをしたい」と話はなしていました。

五十嵐いがらしさんは、津波つなみで自宅じたくを失うしなったあと市内しないで自宅じたくを再建さいけんしましたが、おととし2月つきと去年きょねん3月つきのいずれも市内しないで震度しんど6強きょうの揺ゆれを観測かんそくした2回かいの地震じしんで大おおきく壊こわれ、別べつの住すまいへの転居てんきょを余儀よぎなくされました。

五十嵐いがらしさんは「あの日ひを忘わすれることなんてできませんが、12年ねんがたってようやく少すこし受け入うけいれられたような気きがします。この経験けいけんをしっかり伝つたえていかなければいけないという気持きもちが強つよくなっています。そのために私わたしは生き残いきのこったのかなと。これからも語り継かたりつぎたいです」と話はなしていました。

公園こうえんに設置せっちされた銘板めいばんには、震災しんさいで犠牲ぎせいになった人ひとのうち家族かぞくの同意どういが得えられた1128人にんの名前なまえが地区ちくごとに刻きざまれていて、訪おとずれた人ひとたちは銘板めいばんの前まえで深々ふかぶかと頭あたまを下さげるなどして犠牲ぎせい者しゃに祈いのりをささげていました。

震災しんさいで妻つまを亡なくした気仙沼けせんぬま市しの50代だいの男性だんせいは「ことしは13回忌かいきの区切くぎりということで、また気持きもちを新あらたにしてこれから家族かぞく全員ぜんいんで頑張がんばっていきたいと思おもいます」と話はなしていました。

東京とうきょうから父親ちちおやとともに訪おとずれた11歳さいの小学生しょうがくせいは「ひとつの地震じしんで起おきた津波つなみでこんなに大おおきな被害ひがいになったと知しって悲かなしい気持きもちになりました」と話はなしていました。

震災しんさい前まえ、地区ちくにはおよそ800世帯せたい、2200人にんが住すんでいましたが、津波つなみでおよそ200人にんが犠牲ぎせいとなり、地区ちくの海沿うみぞいは災害さいがい危険きけん区域くいきとなったため住宅じゅうたくの建築けんちくが制限せいげんされています。

大学だいがくさんは毎月まいつき11日にちの月つき命日めいにちに欠かかさず家族かぞくとの思い出おもいでがつまったこの地区ちくに戻もどり、祈いのりをささげてきました。11日にちも大学だいがくさんは海うみから朝日あさひが昇のぼる時間じかん帯たいに訪おとずれ亡なき妻つまの名前なまえが刻きざまれた慰霊いれい碑ひに線香せんこうを手向たむけたあと、鐘かねを鳴ならして亡なくなった家族かぞくを思おもい手てを合あわせていました。

警察庁けいさつちょうによりますと、地震じしんや津波つなみの被害ひがいなどで亡なくなった人ひとは1万まん5900人にん、行方ゆくえ不明ふめい者しゃは2523人にんとなっています。また多おおくの人ひとが長期ちょうき間かんの避難ひなん生活せいかつを余儀よぎなくされ体調たいちょうが悪化あっかして死亡しぼうするいわゆる「震災しんさい関連かんれん死し」に認定にんていされた人ひとは、復興ふっこう庁ちょうと各かく都県とけんによりますと3792人にんとなり、この1年ねんで福島ふくしま県けんと宮城みやぎ県けんであわせて6人にん増ふえました。

「震災しんさい関連かんれん死し」を含ふくめた東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいによる死者ししゃと行方ゆくえ不明ふめい者しゃは2万まん2215人にんにのぼります。

避難ひなん生活せいかつを余儀よぎなくされている人ひとは、減少げんしょうが続つづいているものの復興ふっこう庁ちょうのまとめでは先月せんげつの時点じてんで3万まん884人にんとなっています。

被害ひがいの大おおきかった岩手いわて・宮城みやぎ・福島ふくしまの3県けんでは、この12年ねんで道路どうろや住宅じゅうたくといったハード面めんの復興ふっこうが進すすむ一方いっぽう、沿岸えんがん部ぶなどでは人口じんこうが減少げんしょうしています。総務そうむ省しょうによりますと、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい前まえの2010年ねんから去年きょねんの間まの人口じんこうの減少げんしょう率りつは、全国ぜんこくでは1％だったのに対にたいし、岩手いわて県けんと福島ふくしま県けんでは10％、宮城みやぎ県けんでは3％と厳きびしい状況じょうきょうになっています。

こうした中なか、NHKが岩手いわて・宮城みやぎ・福島ふくしまの被災ひさい地ちの1000人にんにWEB上じょうで行おこなったアンケートでは将来しょうらいにわたって今いまの街まちに住すみ続つづけたいと答こたえた人ひとが8割わり近ちかくにのぼった一方いっぽう、「若わかい世代せだいが住すみ続つづけられる街まちにするために足たりないと思おもうもの」を複数ふくすう回答かいとうでたずねたところ、「仕事しごとや産業さんぎょう」と答こたえた人ひとが61％と最もっとも多おおくなりました。

若わかい世代せだいの定着ていちゃくをはかり人口じんこう減少げんしょうを食い止くいとめるには新あらたな雇用こようを生み出うみだし、地域ちいき経済けいざいを回復かいふくさせることが求もとめられていて、地域ちいきのにぎわいをどう取り戻とりもどすかが大おおきな課題かだいとなっています。