“月つきの裏うらからサンプル” 中国ちゅうごくの無人むじん月面げつめん探査たんさ機きカプセルが帰還きかん

中国ちゅうごくが進すすめてきた宇宙うちゅう開発かいはつの計画けいかくとは？月つき資源しげんをめぐる国際こくさい的てきな動うごきは？

詳くわしくお伝おつたえします。

先月せんげつ打ち上うちあげられた中国ちゅうごくの無人むじんの月面げつめん探査たんさ機き「嫦娥じょうが6号ごう」は、月つきの裏側うらがわに着陸ちゃくりくして土壌どじょうや岩石がんせきなどのサンプルを採取さいしゅしたあと、今月こんげつ4日にちに月面げつめんを離はなれました。

中国ちゅうごく国家こっか宇宙うちゅう局きょくは、サンプルを収おさめたとするカプセルが25日にち切り離きりはなされ、日本にっぽん時間じかんの午後ごご3時じすぎ、内陸ないりく部ぶの内モンゴル自治うちもんごるじち区くに着地ちゃくちし、ミッションは成功せいこうしたと発表はっぴょうしました。

【動画どうが】カプセル着地ちゃくち時じの様子ようす

カプセルは、今後こんご、北京ぺきんに運はこばれたあと分析ぶんせきが行おこなわれるということで、月つきの裏側うらがわのサンプルが確認かくにんされれば世界せかいで初はじめてとなります。

これを受うけて、習近平ちから国家こっか主席しゅせきは「人類じんるい史上しじょう初はじめて月つきの裏側うらがわからのサンプルリターンを実現じつげんし、宇宙うちゅう強国きょうこくと科学かがく技術ぎじゅつ強国きょうこくを築きずく上うえで、またひとつ象徴しょうちょう的てきな成果せいかを得えた」とするメッセージを出だしました。

中国ちゅうごくとしては、今回こんかいのミッションの成功せいこうをアピールして、今後こんごの月面げつめん探査たんさと開発かいはつの分野ぶんやで、世界せかいをリードしていきたい考かんがえです。

「嫦娥じょうが6号ごう」とは

中国ちゅうごくの無人むじんの月面げつめん探査たんさ機き「嫦娥じょうが6号ごう」は地球ちきゅうからは見みえない月つきの裏側うらがわに回り込まわりこんで岩石がんせきなどのサンプルを採取さいしゅし地球ちきゅうに持ち帰もちかえる「サンプルリターン」を目指めざしています。

月つきは、常つねに同おなじ面めんを地球ちきゅうに向むけているため、地球ちきゅうから月つきの裏側うらがわを見みることはできず、電波でんぱも届とどかないため通信つうしんも直接ちょくせつできません。

このため、中国ちゅうごくは、ことし3月つきに打ち上うちあげた中継ちゅうけい衛星えいせいを用もちいることで、月つきの裏側うらがわの「嫦娥じょうが6号ごう」と地球ちきゅうの間まの通信つうしんを行おこなえるようにしました。

こうした通信つうしん上じょうのハードルがあるため、月つきの裏側うらがわからの「サンプルリターン」は難易なんい度どが高たかいとされ、成功せいこうすれば世界せかいで初はじめてとなります。

これまでの経緯けいい ねらいは

「嫦娥じょうが6号ごう」は、先月せんげつ3日にちに打ち上うちあげられおよそ1か月かげつ後ごの今月こんげつ2日にち、月つきの裏側うらがわへの着陸ちゃくりくに成功せいこうしたとしています。

着陸ちゃくりくしたのは、月つきの裏側うらがわの南極なんきょく周辺しゅうへんで、中継ちゅうけい用ようの衛星えいせいを介かいして地球ちきゅうとの通信つうしんを続つづけながら、月つきの裏側うらがわの複数ふくすうの地点ちてんで地表ちひょうや地中ちちゅうから土壌どじょうや岩石がんせきのサンプルを採取さいしゅしたということです。

そして、着陸ちゃくりくから2日にち後ごの今月こんげつ4日にち、採取さいしゅしたサンプルを載のせて月面げつめんを離陸りりくして予定よていどおり月つきの周回しゅうかい軌道きどうに入はいり、地球ちきゅうへの帰還きかんに向むけて待機たいきしていました。

中国ちゅうごくが月つきの裏側うらがわでの探査たんさを進すすめてきたのは、世界せかい初はつの成果せいかを出だすことで、長年ながねん、アメリカが先行せんこうし続つづけてきた宇宙うちゅう開発かいはつの分野ぶんやで存在そんざい感かんを高たかめ、国威こくい発揚はつようにつなげるねらいがあるとみられます。

また、月つきの南極なんきょく周辺しゅうへんには、飲のみ水すいや燃料ねんりょうとしての利用りようが期待きたいされる水みずが、氷こおりの状態じょうたいで存在そんざいする可能かのう性せいが指摘してきされていて、今回こんかい得えられたデータをもとに、今後こんごの月つき探査たんさや開発かいはつを有利ゆうりに進すすめていくねらいもあるとみられます。

2000年代ねんだい以降いこう進すすむ「嫦娥じょうが計画けいかく」

月つきの探査たんさ計画けいかくは、中国ちゅうごくが加速かそくさせている宇宙うちゅう開発かいはつの重要じゅうような柱はしらの1つです。

中国ちゅうごくは、仙女せんにょになって月つきに昇のぼったという中国ちゅうごくの伝説でんせつ上じょうの女性じょせい「嫦娥じょうが」にちなんで月つき探査たんさプロジェクトを「嫦娥じょうが計画けいかく」と名付なづけ、2000年代ねんだい以降いこう、次々つぎつぎと実行じっこうに移うつしてきました。

2007年ねんと2010年ねんに、それぞれ月つき探査たんさ衛星えいせい「嫦娥じょうが1号ごう」と「嫦娥じょうが2号ごう」を打ち上うちあげ、月つきの立体りったい画像がぞうを撮影さつえいしたのに続つづき2013年ねんには「嫦娥じょうが3号ごう」で探査たんさ車両しゃりょうを月つきに送おくり、月面げつめんの調査ちょうさを行おこないました。

2019年ねんには「嫦娥じょうが4号ごう」が、世界せかいで初はじめて月つきの裏側うらがわに探査たんさ機きを着陸ちゃくりくさせ、翌よく2020年ねんの「嫦娥じょうが5号ごう」で月つきの表側おもてがわで岩石がんせきなどのサンプルを採取さいしゅして地球ちきゅうに持ち帰もちかえる「サンプルリターン」を成功せいこうさせました。

そして、今回こんかいの「嫦娥じょうが6号ごう」で、月つきの裏側うらがわからの「サンプルリターン」を目指めざすとしています。

中国ちゅうごく政府せいふは、今後こんご、2026年ねんごろに「嫦娥じょうが7号ごう」、2028年ねんごろに「嫦娥じょうが8号ごう」をそれぞれ打ち上うちあげ、さらに月つき探査たんさを進すすめる計画けいかくです。

そして2030年ねんまでに中国人ちゅうごくじん宇宙うちゅう飛行ひこう士しによる有人ゆうじんでの月面げつめん着陸ちゃくりくを目指めざすほか2035年ねんまでに月面げつめんに科学かがく実験じっけんや資源しげん開発かいはつを行おこなう研究けんきゅうステーションを整備せいびするとしています。

加速かそくする中国ちゅうごくの宇宙うちゅう開発かいはつ

中国ちゅうごくは、2030年ねんまでに世界せかいの宇宙うちゅう開発かいはつをリードする「宇宙うちゅう強国きょうこく」を目指めざすという目標もくひょうを掲かかげ、月つきの探査たんさ計画けいかく以外いがいにもさまざまな分野ぶんやで開発かいはつを加速かそくさせています。

・宇宙うちゅうステーション「天宮てんぐう」

2022年ねんには、アメリカや日本にっぽんなどが計画けいかくに参加さんかするISS＝国際こくさい宇宙うちゅうステーションとは別べつに、中国ちゅうごく独自どくじの宇宙うちゅうステーション「天宮てんぐう」を完成かんせいさせました。

宇宙うちゅう空間くうかんにおける拠点きょてんとして中国人ちゅうごくじん宇宙うちゅう飛行ひこう士しを常駐じょうちゅうさせていて、ことし4月つきにも宇宙うちゅう船せん「神かみ舟ふね18号ごう」を打ち上うちあげ交代こうたいする宇宙うちゅう飛行ひこう士し3人にんを送り込おくりこんでいます。

・火星かせいの探査たんさ「天てん問とい1号ごう」

火星かせいの探査たんさ計画けいかくも進すすめていて、2021年ねんには探査たんさ機き「天てん問とい1号ごう」を火星かせいに到達とうたつさせ、アメリカに次ついで火星かせい表面ひょうめんの探査たんさを成功せいこうさせました。

観測かんそくした画像がぞうデータをもとに火星かせいの地形ちけい図ずを公開こうかいした際さいには、クレーターなどに中国ちゅうごくの地名ちめいに由来ゆらいする名前なまえをつけたと明あきらかにしてアピールしています。

・「中国ちゅうごく版ばんGPS 北斗ほくと」

4年ねん前まえの2020年ねんには、中国ちゅうごく政府せいふは「中国ちゅうごく版ばんGPS」とも呼よばれる位置いち情報じょうほうシステム「北斗ほくと」の全ぜん世界せかいでの運用うんようが始はじまったとしています。

中国ちゅうごく政府せいふは「宇宙うちゅう空間くうかんの利用りようは平和へいわ目的もくてきだ」と強調きょうちょうして開発かいはつを加速かそくさせていますが、計画けいかくには軍ぐんが深ふかく関かかわっているとされ、国際こくさい社会しゃかいからは宇宙うちゅう空間くうかんの軍事ぐんじ利用りように懸念けねんの声こえが出でています。

月つき資源しげんをめぐる国際こくさいルールは未み確立かくりつ

月つきをめぐる各国かっこくの競争きょうそうが激はげしくなる一方いっぽう、月つきの資源しげんに関にかんする国際こくさい的てきなルールは、事実じじつ上じょう、確立かくりつしていません。

宇宙うちゅうの利用りように関にかんする初はじめてのルールとして、1967年ねんに発効はっこうした「宇宙うちゅう条約じょうやく」は日本にっぽんやアメリカ、中国ちゅうごく、ロシアなど主要しゅような国くにを含ふくめ、締約ていやく国こくは110か国かこく以上いじょうに上のぼります。

宇宙うちゅう条約じょうやくでは、すべての国くにが自由じゆうに宇宙うちゅう空間くうかんを探査たんさできることを認みとめ、特定とくていの国くにが月つきなどの天体てんたいや宇宙うちゅう空間くうかんを自国じこくの領土りょうどとすることを明確めいかくに禁きんじています。

一方いっぽう、宇宙うちゅうにおける資源しげん開発かいはつについての明確めいかくな規定きていはありません。

また、1979年ねんに採択さいたくされた「月つき協定きょうてい」は、月つきの資源しげんは人類じんるいの共同きょうどうの財産ざいさんで国くにや企業きぎょう、個人こじんの所有しょゆう物ぶつにはならないと定さだめていますが、日本にっぽんやアメリカ、それに中国ちゅうごくやロシアなど宇宙うちゅう開発かいはつを進すすめている主要しゅような国くには参加さんかしていません。

国内こくないの法律ほうりつで定さだめる動うごき

こうした中なか、宇宙うちゅう空間くうかんで企業きぎょうが採取さいしゅした資源しげんの扱あつかいに関にかんして、国内こくないの法律ほうりつで定さだめようという動うごきが相次あいついでいます。

アメリカは2015年ねん、民間みんかん企業きぎょうが宇宙うちゅう空間くうかんで採取さいしゅした資源しげんをその企業きぎょうの所有しょゆう物ぶつとして認みとめる法律ほうりつを定さだめ、その後そのご、ルクセンブルクやUAE＝アラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽうも同おなじ趣旨しゅしの法律ほうりつを作つくっています。

日本にっぽんでも2021年ねんに「宇宙うちゅう資源しげん法ほう」が成立せいりつし、一定いっていの条件じょうけんのもと、企業きぎょうが採取さいしゅした資源しげんがその企業きぎょうの所有しょゆう物ぶつとなることを認みとめています。

また国連こくれんの委員いいん会かいの中なかでは新あらたな国際こくさいルールを定さだめようという議論ぎろんが始はじまっています。

月つきの開発かいはつ競争きょうそう 各国かっこくは

月つきを舞台ぶたいにした各国かっこくや企業きぎょうの開発かいはつ競争きょうそうはここ数すう年ねん、激はげしさを増ましています。

去年きょねん、インドは、無人むじんの月面げつめん探査たんさ機き「チャンドラヤーン3号ごう」の月つきへの着陸ちゃくりくに成功せいこうし、月面げつめんへの無人むじん探査たんさ機きの着陸ちゃくりくに成功せいこうした国くにとしては、旧きゅうソビエト、アメリカ、それに中国ちゅうごくに次ついで世界せかいで4か国かこく目めとなりました。

また日本にっぽんもことし1月つき、無人むじん探査たんさ機き「SLIM」の月面げつめん着陸ちゃくりくに成功せいこうし、インドに次ついで5か国かこく目めとなりました。

一方いっぽうで、ロシアは去年きょねん、無人むじんの月面げつめん探査たんさ機き「ルナ25号ごう」で、旧きゅうソビエト以来いらいおよそ半はん世紀せいきぶりとなる月面げつめん着陸ちゃくりくを目指めざしましたが、通信つうしんが途絶とだえ、成功せいこうしていません。

民間みんかん企業きぎょうではことし2月つき、アメリカの宇宙うちゅう開発かいはつ企業きぎょう「インテュイティブ・マシンズ」が無人むじんの月つき着陸ちゃくりく船せんの月面げつめん着陸ちゃくりくに成功せいこうし、民間みんかん企業きぎょうとしては世界せかいで初はじめてとなりました。

月面げつめん着陸ちゃくりくをめぐっては、日本にっぽんの企業きぎょうやアメリカの別べつの企業きぎょうも着陸ちゃくりく船せんの開発かいはつを進すすめています。

月つきの南極なんきょく付近ふきんには、水みずが氷こおりの状態じょうたいで存在そんざいしている可能かのう性せいが指摘してきされていて、各国かっこくは将来しょうらい、飲のみ水すいや燃料ねんりょうとして利用りようできるかに高たかい関心かんしんを示しめしていて、今後こんごも競争きょうそうが続つづく見込みこみです。

アメリカの「アルテミス計画けいかく」

「アルテミス計画けいかく」は、アメリカが主導しゅどうする国際こくさい月つき探査たんさプロジェクトです。

1960年代ねんだいから70年代ねんだい、人類じんるいを月面げつめんに送り込おくりこんだ「アポロ計画けいかく」以来いらい、およそ半はん世紀せいきぶりに月つきに宇宙うちゅう飛行ひこう士しを送り込おくりこむことを目指めざしています。

計画けいかくの名前なまえの由来ゆらいとなっている「アルテミス」は、ギリシャ神話しんわの月つきの女神めがみで、「アポロ計画けいかく」の由来ゆらいとなった「アポロ」とは双子ふたごのきょうだいです。

現在げんざいの計画けいかくでは2026年ねん9月つきに宇宙うちゅう飛行ひこう士しが月面げつめんに降り立おりたつミッションを実施じっしすることを目標もくひょうとしています。

これに先せんだって、2025年ねん9月つきに宇宙うちゅう飛行ひこう士しを乗のせた宇宙うちゅう船せんが、月つきの周まわりを周回しゅうかいする試験しけん飛行ひこうを行おこなうことを目指めざしています。

さらには2026年ねん以降いこうも継続けいぞく的てきに宇宙うちゅう飛行ひこう士しによる月つきの探査たんさが行おこなわれる予定よていで、月面げつめんでの長期ちょうき滞在たいざいや将来しょうらい、火星かせいの有人ゆうじん探査たんさも見据みすえています。

NASA＝アメリカ航空こうくう宇宙うちゅう局きょくはこのプロジェクトで使用しようする宇宙うちゅう船せん「オリオン」や大型おおがたロケットの開発かいはつを進すすめていて2022年ねんには無人むじんの宇宙うちゅう船せんを大型おおがたロケットで打ち上うちあげ、月つきを周回しゅうかいして地球ちきゅうに帰還きかんさせる試験しけん飛行ひこうを行おこないました。

また、宇宙うちゅう飛行ひこう士しが月面げつめんに降り立おりたつ際さいに活用かつようする、月つきを周回しゅうかいする新あらたな宇宙うちゅうステーション、「ゲートウェイ」の建設けんせつも予定よていされています。

アルテミス計画けいかくは国際こくさい協力きょうりょくのもと進すすめられていて、日本にっぽんやヨーロッパなども参加さんかし、ゲートウェイの建設けんせつやプロジェクトに必要ひつような機材きざいの開発かいはつに協力きょうりょくすることになっています。

日本にっぽんはことし4月つき、アメリカ側がわと月面げつめん探査たんさに関にかんする取り決とりきめに署名しょめいし、この中なかでNASAが日本人にっぽんじん宇宙うちゅう飛行ひこう士しに2回かいにわたり月面げつめんに着陸ちゃくりくする機会きかいを提供ていきょうし、探査たんさ活動かつどうを行おこなう一方いっぽうで、日本にっぽん側がわはJAXA＝宇宙うちゅう航空こうくう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこうがトヨタ自動車とよたじどうしゃなどとともに開発かいはつを進すすめている有人ゆうじん月面げつめん探査たんさ車しゃの開発かいはつや運用うんようにかかる費用ひようなどを負担ふたんして月面げつめん探査たんさに協力きょうりょくすることなどが盛り込もりこまれました。

またアメリカの民間みんかん企業きぎょうでは、宇宙うちゅう開発かいはつ企業きぎょう「スペースX」が月面げつめん着陸ちゃくりくに使用しようすることを想定そうていした大型おおがた宇宙うちゅう船せん「スターシップ」やこれを打ち上うちあげるための大型おおがたロケットの開発かいはつを進すすめていて、今月こんげつ行おこなわれた試験しけん飛行ひこうでは、目標もくひょうとしていた、宇宙うちゅう船せんの地球ちきゅうへの帰還きかんが初はじめて確認かくにんされています。