山やまの鯨くじら・海うみのいのしし

大おおきな大おおきなクジラはすぐにお腹はらを減へらしてしまい、餌えさをとるにも大騒動だいそうどう。山やまは崩くずれ、川かわはせき止とめられ、しまいには山やまの神様かみさまが住すむ大山おおやまに激突げきとつする始末しまつでした。

山やまの神様かみさまはほとほと困こまってしまって、海うみの神様かみさまに相談そうだんしました。クジラを海うみでもらってくれないか？と言いった山やまの神様かみさまに、海うみの神様かみさまは、では泳およぎが下手へたでいつも餌えさをとれないでいるイノシシが可哀想かわいそうだから、イノシシを山やまにあげようと言いいました。

こうして住すむ場所ばしょを変かえたクジラとイノシシでしたが、イノシシは不満ふまんでした。大好物だいこうぶつのエブラウナギ（海蛇うみへび）が山やまにはいなかったのです。サワガニを捕とって食たべていたイノシシでしたが、ついに山やまの神様かみさまに相談そうだんしに行いきました。

すると、山やまの神様かみさまは自分じぶんに噛かみ付ついてきたマムシをエブラウナギの代かわりに食たべて良よい。と言いい、それ以来いらい、イノシシは蛇へびを食たべるようになったのでした。

一方いっぽう、クジラは広ひろい海うみの中なかで大喜おおよろこびで魚さかなを食たべていましたが、あまりに沢山たくさんの魚さかなを食たべるものだから、魚さかなたちが海うみの神様かみさまに苦情くじょうを言いいに行いきました。

海うみの神様かみさまは、クジラにオキアミを食たべるように言いいつけましたが、オキアミは小ちいさくクジラはなかなか満腹まんぷくにならないので、神様かみさまの目めを盗ぬすんでは魚さかなを沢山食たくさんたべていました。

二度目にどめの苦情くじょうを聞きいた海うみの神様かみさまは怒いかって、シャチを呼よび「クジラを見張みはって、もし言いいつけを破やぶるようなら噛かみ付ついてしまえ！」と命令めいれいしました。それで今いまでもシャチはクジラが言いいつけを破やぶっていないか追おい掛かけ回まわすようになったのでした。

クジラは悲かなしくて、もといた陸りくに帰かえりたいと思おもうようになりました。時ときどき々、陸りくに近ちかづくクジラがいるのは陸りくを恋こいしがっているからだそうです。