記事後半では現地に入ったNHK取材班が撮影した現地の状況について詳しくお伝えしています。
ロサンゼルス近郊の山火事 被害拡大
アメリカ西部ロサンゼルス近郊のパシフィック・パリセーズで7日、発生した山火事は、非常に強い風によって急速に燃え広がり、火事の範囲はおよそ64平方キロメートルに拡大しました。
8日にNHKの取材班が現地で取材したところ、海沿いを走る幹線道路は濃い煙に覆われ、沿道にある飲食店や住宅の数々が激しく焼け落ちていました。
また砂浜のすぐ手前まで地面が焦げているのが確認でき、山側から海に向けて広がった炎の勢いの強さをうかがわせました。
一方、ロサンゼルス北東部で続いている別の火災も市街地に燃え広がり、消防によりますとこれまでに少なくとも5人が死亡し1100を超える建物が焼失するなどの被害を受けました。
警察によりますと、あわせて10万人以上の住民に避難の指示や警告が出されているということです。
アメリカ国立気象局は、ロサンゼルス周辺の一部の地域では10日まで強い風が吹くなど火災が拡大しやすい条件が続くとしていて、カリフォルニア州は非常事態を宣言してほかの州からの応援も得て消火などの対応にあたっています。
“乾燥した風と非常に低い湿度で火災拡大”
アメリカ西海岸のロサンゼルス近郊の山火事について、アメリカのNBCテレビは「サンタ・アナ」と呼ばれるこの地域に特有の乾燥した風と、非常に低い湿度が火災の拡大につながっていると伝えています。
アメリカ国立気象局は、7日から8日にかけてカリフォルニア州南部のロサンゼルス郡やベンチュラ郡で「生命を脅かす、破壊的で広範囲の暴風」が吹くおそれがあるとして警戒を呼びかけていました。
一帯の空気は非常に乾燥していてここに強風が吹くことで非常に危険な状況になり「新たな火災が発生した場合、延焼を食い止めるのは非常に困難で、生命にも影響を及ぼす可能性がある」としています。
UCLA=カリフォルニア大学ロサンゼルス校の専門家は、現状について、今季で最も風が強い状況だと指摘しています。その上で南カリフォルニアでは去年の夏は特に暑くほとんど雨が降らなかったうえ、空気が乾燥した状態が続くことで草木の乾燥が進み、山火事が起きやすい状態となっていると分析しています。
【現場の状況は】美しい海沿いの地域が一変
NHKの取材班は7日、当局の許可を得て山火事が起きている地域を取材しました。
ロサンゼルス近郊のサンタモニカの市街地を出発して海沿いの幹線道路を北西に10分ほど車で進むとあたりに濃い煙が立ちこめて視界が悪くなりました。
この幹線道路はカリフォルニア州でも有数の海沿いの美しい景色が見られるドライブルートとして知られていますが山火事によってその景色は様変わりしてしまっていました。
幹線道路を進むにつれて焦げたような臭いもひどくなり、クルーは防護マスクを着用して取材にあたりました。
消防車両が沿道のビーチの駐車場に多数、待機していたほか、幹線道路をひっきりなしに行き来していました。
被災した地域は海岸に面した斜面が多い高級住宅街で、芸能人などいわゆる「セレブ」が多く住んでいることで知られています。
道路からは斜面に建てられた邸宅も見ることができますが、中には原形をとどめないほどに焼け落ちた建物もあったほか、広い幹線道路を挟んだ海側にも焼け焦げた跡があるなど火が海岸にまで達したことを伺わせました。
シーフード料理を提供する地域の有名なレストランも全焼していました。
また道路とビーチの間に住宅が並んでいた場所では、家のほとんどが焼けて海が見通せるようになりそこに住宅があったことすらわからないほどになっていて、かろうじて残っていた住宅からも火が上がり消火活動が行われていました