決定は、逮捕から1年以上あとに現場近くの“みそタンク”から見つかった衣類について、弁護側の新たな実験結果などをもとに、「袴田さんが犯行時に着ていたという確定判決の認定には合理的な疑いが生じる」と指摘した上で、捜査機関によるねつ造の疑いにも言及し、厳しく批判しました。
弁護団によりますと、この決定について検察は、最高裁判所に特別抗告しないことを決めました。
特別抗告の理由は憲法違反や判例違反がある場合に限られ、検察当局は、こうした理由を見いだすのは難しいと判断したものとみられます。
これにより、死刑判決の確定から40年余りを経て、静岡地方裁判所でやり直しの裁判が開かれることになります。
死刑が確定した事件で再審が開かれるのは5件目で、過去4件はいずれも無罪が言い渡されています。
再審の審理は、確定した有罪判決を最初に言い渡した裁判所で行われ、今回は裁判員制度が始まる前の事件のため裁判官だけで審理にあたります。 検察が争わなければ1回で審理が終わることもあり、無罪が言い渡され確定したら名誉回復のため官報と新聞に判決を掲載し、公に知らせることになっています。 一方、判決に不服がある場合は通常の裁判と同様に控訴や上告をすることができます。
1990年に栃木県で当時4歳の女の子が殺害されたいわゆる「足利事件」では、殺人などの罪で無期懲役が確定した菅家利和さんが無実を訴えて裁判のやり直しを求め、2009年に東京高等裁判所が再審を認める決定をしました。 この事件では、DNAの再鑑定の結果、菅家さんが犯人ではない可能性が高いという見解が示され、再審を認める決定が出される前に、検察が刑の執行を停止して菅家さんを刑務所から釈放する異例の措置をとり、再審開始決定についても特別抗告しませんでした。菅家さんは、その後再審で無罪判決が言い渡され、確定しています。 また、1995年に大阪 東住吉区の住宅で11歳の女の子が死亡した火事では、放火や殺人の罪で無期懲役が確定した青木惠子さんたち2人が裁判のやり直しを求め、2012年に大阪地方裁判所が認める決定をしました。 検察は大阪高等裁判所に即時抗告しましたが、2015年に退けられ、大阪高等検察庁は「事実認定には直ちに承服しがたい点があるものの、憲法違反などがあるとまでは言えない」などとして特別抗告を断念しました。 その後開かれたやり直しの裁判で、検察は有罪の主張や立証をせず、無罪が確定しました。
その後も、1948年に熊本県で夫婦2人が殺害された「免田事件」や1955年に宮城県で住宅が全焼して一家4人が遺体で見つかった「松山事件」、1954年に静岡県で当時6歳の女の子が連れ去られ殺害された「島田事件」で再審が開かれ、これら4件の事件は、裁判をやり直した結果、いずれも無罪判決が言い渡されました。 死刑が確定した事件で再審が決まったのは今回が5件目で、島田事件の再審が決まった36年前の1987年以来となります。
弁護団の中には涙を浮かべている人も
今後 有罪判決を最初に言い渡した静岡地裁で再審へ
最高裁判所への特別抗告“断念”は過去に足利事件などでも
死刑確定の事件での裁判やりなおしは過去4件 いずれも無罪に