日本新聞: ノーベル平和賞の報道関係者受賞の喜びと共に今後の決意語る

ことしのノーベル平和へいわ賞しょうには、政権せいけんの強権きょうけん的てきな姿勢しせいを批判ひはんしてきたフィリピンのインターネットメディアのマリア・レッサ代表だいひょうと、ロシアの新聞しんぶんのドミトリー・ムラートフ編集へんしゅう長ちょうが選えらばれました。

2人にんは受賞じゅしょうの喜よろこびと共とともに、今後こんごも政権せいけんの圧力あつりょくに屈くっせず報道ほうどうの自由じゆうを守まもる決意けついを語かたりました。

ことしのノーベル平和へいわ賞しょうには、

▽フィリピンのインターネットメディア「ラップラー」の代表だいひょうでドゥテルテ政権せいけんを批判ひはんしてきたマリア・レッサ氏しと、

▽ロシアの新聞しんぶん「ノーバヤ・ガゼータ」の編集へんしゅう長ちょうを務つとめプーチン政権せいけんに批判ひはん的てきな報道ほうどう姿勢しせいを貫つらぬいてきたドミトリー・ムラートフ氏しが、選えらばれました。

授賞じゅしょう理由りゆうについて選考せんこう委員いいん会かいは、「民主みんしゅ主義しゅぎと報道ほうどうの自由じゆうが逆境ぎゃっきょうにあるなか、理想りそう的てきな世界せかいの実現じつげんのために立ち上たちあがったすべてのジャーナリストの代表だいひょうだ」としています。

このあと、オンラインで会見かいけんしたレッサ氏しは「この受賞じゅしょうは私わたしではなく『ラップラー』が受うけたものだと思おもいます」と喜よろこびを語かたるとともに、「どうすればジャーナリストは使命しめいを果はたせるのか。なぜ地域ちいきや世界せかいに事実じじつを伝つたえ続つづけることがこれほど難むずかしいのかを考かんがえながら闘たたかいを続つづけています」と述のべ、ドゥテルテ政権せいけんによる抑圧よくあつに屈くっすることなく、真実しんじつを追求ついきゅうしていく決意けついを示しめしました。

一方いっぽう、モスクワで報道ほうどう陣じんの取材しゅざいに応おうじたムラートフ氏しは、15年ねん前まえに何者なにものかに殺害さつがいされた同僚どうりょうの女性じょせい記者きしゃに触ふれ「ノーベル賞しょうの選考せんこう委員いいん会かいは、第三者だいさんしゃを介かいして彼女かのじょが受賞じゅしょうできるよう工夫くふうしたのだろう」と述のべ、平和へいわ賞しょうを亡なくなった多おおくの同僚どうりょうたちにささげたいという姿勢しせいを示しめしました。

そして、「ロシアでは、議会ぎかいが多おおくの国民こくみんの声こえを代表だいひょうしているわけではなく、メディアが少数しょうすう派はの意見いけんを伝つたえてきた」と述のべ、プーチン政権せいけんの与党よとうが多おおくの国民こくみんから支持しじされているわけではないとして、抑圧よくあつされた人ひとたちの声こえをメディアが伝つたえていく意義いぎを強調きょうちょうしました。

同様どうようの受賞じゅしょうはナチス時代じだいにも

ことしのノーベル平和へいわ賞しょうには、報道ほうどうの自由じゆうを掲かかげ政権せいけんの強権きょうけん的てきな姿勢しせいを批判ひはんしてきたフィリピンとロシアの報道ほうどう関係かんけい者しゃが選えらばれましたが、同様どうようの賞しょうは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんが始はじまる前まえ、ナチス政権せいけんを批判ひはんしたドイツ人じんのジャーナリストにも贈おくられています。

ノーベル平和へいわ賞しょうの選考せんこう委員いいん会かいは1935年ねん、ドイツ人じんジャーナリストのカール・フォンオシエツキー氏しにノーベル平和へいわ賞しょうを贈おくりました。

フォンオシエツキー氏しは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんが始はじまる前まえにナチス・ドイツが国際こくさい条約じょうやくに反はんして再さい軍備ぐんびを進すすめている動うごきを伝つたえ、ナチスによって投獄とうごくされました。

受賞じゅしょうの知しらせを聞きいたヒトラーは激怒げきどし、すべてのドイツ人じんにノーベル賞しょうの受賞じゅしょうを禁きんじ、締しめつけを強化きょうかしました。

今回こんかいのノーベル平和へいわ賞しょうの授賞じゅしょう理由りゆうについて、選考せんこう委員いいん会かいは「民主みんしゅ主義しゅぎと報道ほうどうの自由じゆうが脅おびやかされている世界せかいにおいて、理想りそうのために立ち上たちあがったジャーナリストたちだ」と説明せつめいしていて、世界せかいで再ふたたび報道ほうどうの自由じゆうが危機きき的てきな状況じょうきょうにあるという認識にんしきを示しめしています。

ゴルバチョフ氏しも祝福しゅくふく

ロシアのプーチン政権せいけんに批判ひはん的てきな報道ほうどうを続つづけてきた新聞しんぶん「ノーバヤ・ガゼータ」のムラートフ編集へんしゅう長ちょうが、ことしのノーベル平和へいわ賞しょうに選えらばれたことについて、みずからも1990年ねんにノーベル平和へいわ賞しょうを受賞じゅしょうした旧きゅうソビエトのゴルバチョフ元もと大統領だいとうりょうは8日にち、声明せいめいを発表はっぴょうし「今日きょうの世界せかいにおける報道ほうどう機関きかんの重要じゅうよう性せいを大おおいに高たかめるものだ」と評価ひょうかしました。

ゴルバチョフ氏しはこれまで「ノーバヤ・ガゼータ」への支援しえんを行おこなうなどその活動かつどうに深ふかく関かかわっていて、ムラートフ氏しについて「勇敢ゆうかんで誠実せいじつなジャーナリストだ」とたたえたうえで、今いまの報道ほうどう姿勢しせいを貫つらぬくよう促うながしました。

フィリピンのネットメディア「賞しょうが報道ほうどうに光ひかりを」

ことしのノーベル平和へいわ賞しょうに、フィリピンのインターネットメディア、「ラップラー」の代表だいひょうのマリア・レッサ氏しが選えらばれたことを受うけて、フィリピンのジャーナリスト団体だんたいは相次あいついで声明せいめいを出だしました。

このうち、フィリピン・ジャーナリスト全国ぜんこく連合れんごうは、ドゥテルテ政権せいけんによって報道ほうどうが抑圧よくあつされ、レッサ氏しも名誉めいよ毀損きそんの罪つみで有罪ゆうざい判決はんけつが言い渡いいわたされていることなどを踏ふまえ、「困難こんなんな状況じょうきょうの中なかでも報道ほうどうの自由じゆうを守り抜まもりぬいていることを称賛しょうさんしたい」とする声明せいめいを出だしました。

そのうえで「基本きほん的てきな自由じゆうと民主みんしゅ主義しゅぎへの攻撃こうげきが続つづけられている中なかでも、真実しんじつの追求ついきゅうをやめないフィリピンのすべてのジャーナリストに対にたいし、この賞しょうが光ひかりをもたらすことを願ねがう」としています。

またフィリピン外国がいこく特派とくは員いん協会きょうかいは「フィリピンの記者きしゃはオンライン上じょうでの嫌いやがらせだけではなく、拘束こうそくや殺害さつがいなどの暴力ぼうりょくにさらされている。レッサ氏しの受賞じゅしょうによりこうした窮状きゅうじょうに国際こくさい的てきな注目ちゅうもくが集あつまることを期待きたいしている」とする声明せいめいを出だしました。

国連こくれん「報道ほうどうの自由じゆうは不可欠ふかけつ」

ことしのノーベル平和へいわ賞しょうに、報道ほうどう関係かんけい者しゃ2人にんが選えらばれたことについて、国連こくれんのグテーレス事務じむ総長そうちょうは8日にち、声明せいめいを発表はっぴょうし「報道ほうどうの自由じゆうは、平和へいわや正義まさよし、人権じんけんのために不可欠ふかけつだ。不正ふせい行為こういを調査ちょうさし、市民しみんに情報じょうほうを提供ていきょうし、指導しどう者しゃの責任せきにんを明あきらかにするジャーナリストがいなければ、自由じゆうで公正こうせいな社会しゃかいは実現じつげんできない」と述のべ、祝意しゅくいを示しめしました。

そのうえで世論せろんを誤解ごかいさせたり暴力ぼうりょくをあおったりする情報じょうほうが増ふえていると指摘してきし「自由じゆうで独立どくりつしたジャーナリズムは、誤あやまった情報じょうほうと闘たたかううえでの最大さいだいの味方みかただ。ジャーナリストの役割やくわりを認識にんしきし　多様たようなメディアを支援しえんする取り組とりくみを強化きょうかしなければならない」と国際こくさい社会しゃかいに呼よびかけました。

ムラートフ氏し「亡なき同僚どうりょうのため」

ことしのノーベル平和へいわ賞しょうに選えらばれたロシアの新聞しんぶん「ノーバヤ・ガゼータ」の編集へんしゅう長ちょうを務つとめるドミトリー・ムラートフ氏しは、8日にち午後ごご、モスクワにある本社ほんしゃの前まえで国内外こくないがいの記者きしゃ団だんの取材しゅざいに応おうじました。

この中なかでムラートフ氏しは、プーチン政権せいけんに批判ひはん的てきな報道ほうどうを続つづけ、15年ねん前まえ、何者なにものかに殺害さつがいされた同僚どうりょうのポリトコフスカヤ記者きしゃに触ふれて「ノーベル賞しょうの選考せんこう委員いいん会かいは、第三者だいさんしゃを介かいして彼女かのじょが受賞じゅしょうできるよう工夫くふうしたのだろう」と述のべ、今回こんかいの平和へいわ賞しょうは亡なくなった多おおくの同僚どうりょうたちに授さづけられるべきものだという認識にんしきを示しめしました。

そして「ロシアでは、議会ぎかいが多おおくの国民こくみんの声こえを代表だいひょうしているわけではなく、メディアが少数しょうすう派はの意見いけんを伝つたえてきた」と述のべ、先月せんげつ行おこなわれたロシアの議会ぎかい選挙せんきょで圧勝あっしょうしたプーチン政権せいけんの与党よとうが多おおくの国民こくみんから支持しじされているわけではないとして、抑圧よくあつされた人ひとたちの意見いけんをメディアが伝つたえる意義いぎを訴うったえました。

一方いっぽう、「ノーバヤ・ガゼータ」がロシア政府せいふから外国がいこくのスパイを意味いみする「外国がいこくの代理人だいりにん」に指定していされ、活動かつどうが制限せいげんされる可能かのう性せいについて聞きかれると「そうなれば記事きじの署名しょめい欄らんに『外国がいこくの代理人だいりにん＝ノーベル賞しょう受賞じゅしょう者しゃ』と書かいてみせる」と述のべ、権力けんりょくに屈くっしない姿勢しせいを強調きょうちょうしました。

受賞じゅしょう日びもロシア法務省ほうむしょうは「外国がいこくスパイ」を指定してい

ロシアのプーチン政権せいけんに批判ひはん的てきな報道ほうどうを続つづけてきた新聞しんぶん「ノーバヤ・ガゼータ」のムラートフ編集へんしゅう長ちょうがノーベル平和へいわ賞しょうに選えらばれた8日にち、ロシア法務省ほうむしょうは、3つの報道ほうどう機関きかんと9人にんの記者きしゃを外国がいこくのスパイを意味いみする「外国がいこくの代理人だいりにん」に指定していしたと発表はっぴょうしました。

今回こんかい、新あらたに「外国がいこくの代理人だいりにん」に指定していされたのは、反はん体制たいせい派はの指導しどう者しゃナワリヌイ氏しの毒殺どくさつ未遂みすいとされる事件じけんにロシアの治安ちあん機関きかんが関与かんよしたと伝つたえた、国際こくさい的てきな調査ちょうさ報道ほうどうグループ、ベリングキャットや、イギリスの公共こうきょう放送ほうそうBBCの記者きしゃなどです。

「外国がいこくの代理人だいりにん」に指定していされると、資金しきんの収支しゅうしについて詳細しょうさいに報告ほうこくすることが求もとめられるなど当局とうきょくの監視かんしが強つよまり、ロシアのメディアは、スポンサーが資金しきんの提供ていきょうを停止ていしして経営けいえい難なんに陥おちいり、事実じじつ上じょう、取材しゅざい活動かつどうが制限せいげんされることになります。

ロシア法務省ほうむしょうによりますと、2017年ねん以降いこう、今回こんかいの分ぶんもあわせて85の報道ほうどう機関きかんと記者きしゃが「外国がいこくの代理人だいりにん」に指定していされているということです。

プーチン政権せいけんは、批判ひはん的てきなメディアに対にたいして「外国がいこくの代理人だいりにん」に指定していするなど圧力あつりょくを強つよめていて、これに対にたいし、「ノーバヤ・ガゼータ」などの独立どくりつ系けいのメディアは、ことし8月つき、プーチン政権せいけんに対にたいして、公開こうかい書簡しょかんを送おくり、報道ほうどうの自由じゆうを保障ほしょうするよう求もとめています。