トランプ大統領を巡っては、ことし7月のウクライナの大統領との電話会談で、民主党のバイデン前副大統領に不利な情報を求めて調査を要求し、ウクライナへの支援をちらつかせて圧力をかけた疑惑が持ち上がっています。
これを受けて民主党が弾劾にあたるかどうかの調査に踏み切るなか、26日、議会下院で情報機関を統括するマグワイア国家情報長官代行に対する公聴会が行われました。
今回の疑惑の発覚は政府職員による内部告発が発端になっていて、民主党側はマグワイア長官代行がこれを把握しながら議会に通報しなかったと指摘し「違法であり、隠蔽行為ではないか」と追及しました。
これに対しマグワイア長官代行は「告発文を見て直ちに深刻な事態だと思った」と述べる一方、首脳会談の内容は大統領特権に関わり、みずからの権限の範囲を超えていたと釈明しました。
また民主党側が「トランプ大統領の行為は違法ではないか」と違法性への認識を問いただしたのに対し、マグワイア長官代行は「法を超える国民はいない」と述べるにとどめ、明確な答弁を避けました。
議会下院ではこの日、政府職員の内部告発文も公表され、ホワイトハウス幹部による隠蔽の疑いも明らかになっています。
一方、トランプ大統領は圧力はなかったと疑惑を否定し、収拾を急ぎたい考えです。
しかし民主党側は今後、弾劾に向けて議会へのさらなる証人の召喚や書類の提出を求めて追及を強める構えで、疑惑をめぐる攻防は早くも激しさを増しています。
トランプ大統領 あらゆる手段で対抗の構え
公聴会の後、トランプ大統領は記者団に対し、「アメリカにとって非常に不名誉なことだ。民主党は、選挙に負けると分かっているから、大統領を攻撃している。ウクライナの大統領との電話会談は全く問題がないのに、民主党は、それにばかり注目し、バイデン氏の疑惑を追及しない」と述べ、不満を表明しました。さらに「民主党が進めようとしている追及は、裁判でも起こして止めなければならない」と述べ、あらゆる手段で対抗する構えを示しました。
民主党 下院議長「大統領が隠蔽に関わっていた」
野党 民主党のペロシ下院議長は、記者会見で、公表された告発文で「ホワイトハウス幹部は、電話会談の内容を封印すべく介入した」と指摘されていることに言及し、「これは隠蔽であり、大統領が隠蔽に関わっていたことを示している」と述べました。一方、調査の後、実際に弾劾の手続きに入るかどうかについては、「さらなる事実を立証するための調査が必要で、判断を急いではいない」と述べ、まずは、主導権を握る議会下院の6つの委員会で、調査を徹底する方針を示しました。
民主党 下院情報委員長「疑惑が一層深まった」
民主党の議会下院のシフ情報委員長は、記者団に対し、「告発文が公表されたことで、大統領の行動をめぐるいくつもの疑惑が一層深まった」と述べました。そのうえで、シフ委員長は、告発文を受けていた情報機関の監察官に、公聴会での証言を求めたことを明らかにし、隠蔽行為がなかったかどうか、追及を強める考えを示しました。
共和党 下院議員「『よくないこと』と言いたい」
与党 共和党のマイケル・ターナー下院議員は、「告発文も、トランプ大統領とウクライナの大統領の電話会談の記録も読んだが、『これはよくないことだ』と、トランプ大統領に言いたい。この内容を読んだアメリカ国民は、落胆しているはずだ」と述べ、多くの問題があるという認識を示しました。
議会前 約300人が抗議の声
公聴会が行われた連邦議会の前には、トランプ大統領の弾劾を求める人たち、およそ300人が集まり、抗議の声を上げました。集会には、野党 民主党の議員が次々と姿を見せ、このうち、トランプ大統領を強く批判してきたオマル議員が、「腐敗したトランプ大統領を弾劾しなければならない」と演説すると、大きな歓声が上がりました。集会に参加した男性は、「この国の状況は悪くなる一方だ。手遅れになる前に、何とかしなければならない」と話していました。