警視庁によりますと去年4月からことし1月ごろにかけて、複数回にわたり、日本を訪れた中国人観光客らを自家用車に有料で乗せるいわゆる「白タク」営業をあっせんしていた疑いが持たれています。
ドライバーの中国人男女3人もともに逮捕されました。世界中の都市で現地在住の中国人ドライバーを紹介するスマートフォンの配車アプリ「皇包車」を利用して乗客を募り、およそ50人のドライバーに指示して羽田空港などで送迎していたということです。
警視庁は押収したノートの記録から1か月当たりおよそ960件、1000万円余りの売り上げを得ていたとみています。
調べに対し、孫容疑者は「一切関わっていない」と供述し、容疑を否認しているということです。
中国人観光客向けの白タクは各地の空港や観光地などで横行しているということで、警視庁は取締りを強化することにしています。
アプリで手配 把握が困難
こうした白タクはアプリやインターネットを通じてあらかじめ中国国内で予約や決済が行われています。
利用者が多いとされる代表的なアプリ「皇包車」では、世界中の都市で現地在住の中国人ドライバーを予約でき、空港や観光地への送迎などを依頼できます。日本でもサービスが提供されていて、多くの中国人ドライバーが登録しています。
アプリを開くとドライバーの顔写真や名前などが並び、案内できる観光地などが紹介されていました。
日本国内では許可を受けずに有料で客を乗せると違法な白タクに当たります。
インターネットを通じて決済が行われているため、乗客とドライバーの間でその場で現金をやり取りすることはありません。
捜査関係者によりますと、不審なドライバーに声をかけても「日本に遊びに来た知人を乗せただけでお金は受け取っていない」と説明され、白タクの実態を正確に把握することは難しいということです。
羽田空港の現場では…
羽田空港の国際線ターミナルでは、白いナンバープレートをつけた「白タク」とみられる車が大勢の外国人観光客を送迎しています。
空港関係者によりますと、こうした様子は特に中国便の発着時間帯に合わせて、よく見られるということです。
私たちが取材した日も空港のタクシー乗り場では、緑色のナンバープレートをつけた正規のタクシーが並ぶ中、すぐ横の身体障害者用の乗り降りスペースに白いナンバーの自家用ワンボックスカーが相次いで止まり、観光客とみられる人たちを乗り降りさせていました。
このスペースでは、取材に当たった午前11時から午後2時までの間、私たちが目撃しただけでこうした車が5台確認されました。
中国人とみられるドライバーに声をかけると、「友達を送っただけだ」と答え、すぐに走り去っていきました。
空港で営業する正規のタクシー運転手の男性は「空港の至るところで白タクとみられる車は多い。自分たちの客をもっていかれるが、どうしようもない」と話していました。
「白タク」何が問題?
国の営業許可を受けずに個人が自家用車を使って有料で客を乗せることは法律で禁止されていて、ナンバープレートの色から、白タクと呼ばれています。
「全国ハイヤー・タクシー連合会」によりますと、訪日外国人が増えるなか、国際便が発着する空港や大型クルーズ船が停泊する港、代表的な観光地などでは中国人観光客を乗せる白タクが横行しているとみられるということです。
営業許可を受けているタクシー会社にとっては、訪日外国人による経済効果が得られなくなっているのです。
また国土交通省によりますと、タクシーの営業許可を受けるには自家用車以上の高い運転技術などが求められますが、これを満たしていない白タクが横行することは安全面でも問題があるということです。
国土交通省は「中国政府などにも日本のルールの周知を要請している。白タクの実態把握に努め、関係機関とともに対策を進めたい」としています。