昔、あるところに正直者で働き者の磯右ヱ門という若者がいた。
ある日、村の権現さまの宮司から、本宮(ほんぐう)まで使いを頼まれた。山坂をいくつも越えてようやく本宮まで辿り着いたが、本宮の宮司からすぐに権現さまに届けて欲しいと、書状と20両もの大金を渡された。
磯右ヱ門は仕方なく、そのままとんぼ返りで帰路についた。しかしもう日は暮れているし、途中の山道では山賊が出るという噂だったので、おそるおそる森の中を進んだ。
暗い森の中で、たき火をしている二人組の山賊を見つけた。そんな時、村で一番の剛気の作平(さくべい)爺さんを思い出した。作平爺さんは大きなふぐり(金玉)の持ち主で、大ふぐりの男は度胸がすわっているという言い伝えがあった。そこで磯右ヱ門は、股間に大量の苔を詰め込んで山賊の前に進み出た。
山賊たちは、磯右ヱ門の大きく膨らんだ股間を見て、何も手出しせず親切に見送ってくれた。とっさの機転でピンチを乗り越えた磯右ヱ門は、無事に村まで帰りつき、権現さまにお金を届ける事が出来た。