商船三井が
運航する
貨物船が、
インド洋の
島国、モーリシャスの
沖合で
座礁した
事故で、
船内に
残っていた
燃料は
ほぼ回収されましたが、すでに
流出した
大量の
重油が
海岸に
漂着し、
地元の
貴重な
生態系への
被害を
懸念する
声が
上がっています。
日本時間の
先月26
日(
現地時間25
日)、
商船三井が
運航する
貨物船がモーリシャスの
沖合で
座礁し、
その後、
約1000
トンの
重油が
流出したとみられています。
商船三井は、船内に残っていた燃料についてはほぼ回収されたとする一方、流れ出た重油のうち、回収できたのは半分程度にとどまっているということで、すでに大量の重油が現場近くの海岸に漂着しています。
海岸では、地元のボランティアが重油を手ですくってバケツに入れるなどして回収作業に当たっているほか、日本やフランス、それに国連の機関なども人材や物資を現地に派遣し、国際的な支援が本格化しています。
一方、現場周辺のマングローブ林にも重油が漂着するなど、被害は広範囲に及んでいて、生態系の保全に詳しいJICA=国際協力機構の阪口法明国際協力専門員は「油が付着すると酸素呼吸ができなくなり、死んでしまう可能性もある」と話していて、生態系への影響を早急に調査し、回復に向けた計画を作る必要があると訴えています。
原因究明へ乗組員聞き取り
モーリシャスのジャグナット首相は13日、貨物船が座礁した現場近くの海岸を訪れ、AFP通信のインタビューに答えました。
この中でジャグナット首相は、流出した重油の回収作業を全力で進めるとしたうえで「貨物船がなぜこれほど岸に接近し、座礁したかについて原因を調査しなければならない」と述べ、警察当局などが貨物船の航行データを記録した「ブラックボックス」を回収し、船長を含めた乗組員合わせて20人から事情を聞いていることを明らかにしました。
また、地元の環境や漁業などへの影響については、「今後、多くの被害の申し立てがあるだろう」と述べ、他国の専門家の協力も得ながら全容を明らかにしていく考えを示しました。
流出から1週間がたっても…
現地の環境保護団体「モーリシャス野生生物基金」が13日に船の上から撮影した映像には、濃い青色に見える海に白い紙を浸すと、重油で真っ黒に染まる様子が写っています。
また、船が通ったあとの波間にも重油が浮いていて、流出から1週間がたっても島周辺の広い海域に重油が漂っている様子が分かります。
モーリシャスで通訳兼フリーライターとして働く永井葉子さんは、「観光業が盛んなこの国では、新型コロナウイルスの感染拡大によって失業した人や給料が半分に減った人もいて、すでに甚大な影響が出ていた。さらにこの事故で観光業や漁業など、幅広い分野の人たちが影響を受けるのは間違いない。1968年の建国以来、最大の環境被害だと言われている」と話しています。
そのうえで、「モーリシャスは日本から離れたインド洋の小国だが、日本政府や運航会社は自分の国、自分の庭で起きたらどうするだろうという気持ちで真摯に対応してほしい」と、環境の保護や再生に全力をあげてほしいと呼びかけました。