逮捕された
元交際相手は、
女性へのつきまとい
などを
禁じる「
禁止命令」を
受けていましたが、
警察が
事件の10
日前に
女性に
連絡を
取ったところ「
禁止命令」に
反するようなストーカー
行為などは
確認されなかったことが
捜査関係者への
取材で
分かりました。
捜査関係者によりますと、去年10月ごろ、川野さんから警察に対し「別れた元交際相手に携帯電話を取られた」とか「職場に電話がかかってくる」といった相談が寄せられたということです。
これを受けて、警察は、寺内容疑者に対し、口頭や文書による警告を複数回行ったということです。
そのうえで、翌11月には、川野さんの意向を確認したうえで、ストーカー規制法に基づき、つきまといなどを禁じる「禁止命令」を出しました。
命令書を受け取った際、寺内容疑者は素直に従う様子だったということです。
また、事件の10日前となる今月6日に警察官が川野さんに連絡を取ったところ「禁止命令」に反するようなストーカー行為などは確認されなかったということです。
この間、警察は、川野さんの自宅の周辺でパトロールを強化するなどの対応を取っていましたが、事件を防ぐことはできませんでした。
元交際相手の関係先を捜索
捜査関係者によりますと、
この事件で
警察は17
日、
福岡市博多区内に
ある元交際相手の
関係先を
捜索したということです。
NHKが17日撮影した映像では、鑑識作業を行う警察官が機材などを持って関係先の建物の中に入っていく様子が確認できます。
相談の経緯と警察の対応は
警察によりますと、
亡くなった
福岡県那珂川市の
会社員、
川野美樹さん(
当時38)は
以前、31
歳の
元交際相手からのつきまとい
などの
被害を
県内の
警察署に
相談していました。
捜査関係者によりますと、川野さんと元交際相手は仕事上のつながりで知り合ったとみられ、警察は相談の内容から緊急性がある事案と判断し、去年秋ごろには那珂川市を管轄する警察署から元交際相手に対し、ストーカー規制法に基づきつきまといなどを禁じる「禁止命令」を出していたということです。
警察は、川野さんの自宅周辺のパトロールを行ったり、定期的に連絡を取ったりしていたということです。
現場には誕生日のメッセージも
事件があったJR
博多駅近くの
路上には、
花や
お菓子、
飲み物などが
供えられていて、なかには18
日に39
歳の
誕生日を
迎えるはずだった
川野さんをしのんで「こわかったね がんばったね おたんじょう
日おめでとう」と
書かれたメッセージ
カードが
添えられたものもありました。
誕生日のメッセージカードを手向けた女性は「被害者の女性と知り合いではありませんが、私がこの現場の地下にある地下街で長年、働いていたので、『こんなところでこんな事件が起きるなんて夢にも思ってなかったでしょ』という思いで置きました」と話していました。
女性は容疑者の身柄が警察に確保されたと聞いて18日に2度、現場を訪れ手を合わせたということです。
花を手向けに訪れた近くに住む女性は「ニュースを知ってショックでした。同じ女性として、どんなに怖い思いをしたんだろうと思うと何とも言えない気持ちになりました。哀悼の気持ちを形で示したいと思って来ました」と話していました。
また、70代の男性は「私にも同じくらいの娘がいましたが、病気で急に亡くなりました。それと同じくらい家族にとっては突然の出来事で大変つらいことだと思います。事件当日、1時間前に現場を通っていたこともあってぜひ手を合わせたいと思って来ました」と話していました。
亡くなった女性と同じ会社の同僚「早く真相解明を」
容疑者が
逮捕されたことを
受けて
亡くなった
川野美樹さん(
当時38)と
同じ
会社で
働いていた
同僚は「
元交際相手につきまとわれているという
話でしたが、
社内で
相談できる環境だったり、
誰かと
一緒に
駅まで
帰れたりできていれば
何か
違ったかもしれないと
思うととても
悲しいです。
早く
真相を
解明してほしいです」と
話していました。
容疑者と同じアパートに住む男性「殺すぞという声も」
寺内進容疑者と
同じアパートに
住んでいる
男性は
寺内容疑者について「
騒音トラブルとか、モラル
的にどうなんだという
内容の
発言が
聞こえてきたりとかしていました。シンプルに
殺すぞという
声が
午前4
時ごろに
聞こえてきたりしていた。あいさつは
返してもらえないような
面はありました」と
話していました。
ストーカー対策強化の経緯
「ストーカー
規制法」は、
埼玉県桶川市で
女子大学生が
交際を
断った
男から
執ような
嫌がらせを
受け
殺害された
事件の
翌年の、2000
年に
施行されましたが、
その後も
凶悪事件が
相次いできました。
▽2011年に長崎県西海市で男が元交際相手の家族2人を殺害した事件や
▽2013年に東京・三鷹市で女子高校生が元交際相手の男に殺害された事件、
▽2016年に東京・小金井市のライブ会場で音楽活動をしていた女子大学生がファンの男にナイフで刺され大けがをした事件などでは、被害者や家族が事前に警察へ相談しながら襲撃を防ぐことができず、警察の対応が問われました。
この間、ストーカー規制法の一部が改正され▽相手に拒まれたにもかかわらず電子メールを繰り返し送る行為を「つきまとい」などの違反行為に追加したほか、▽被害者の自宅周辺を「うろつく」行為も取締りの対象にするなど、対策が強化されてきました。
しかし、ストーカーによる被害は歯止めがかかっておらず、警察庁によりますと、警察に寄せられた被害の相談や通報は、2021年は全国で1万9728件で、2017年のおよそ2万3000件をピークに減少傾向にあるものの、この10年ほどは2万件前後で推移しています。
また、ストーカー規制法違反などで警察が検挙した事件は2021年は2518件で、前の年に比べ15件増えています。
今回の事件のように、規制法に基づく「禁止命令」を出しながら、被害を防げなかったケースも起きています。
警察庁によりますと、ストーカー
規制法に
基づく「
禁止命令」では、
文書などにより
被害者に
近づかないよう
命じ、
命令に
従わない
場合は
刑事罰が
科されますが、▽1
年間の
期限付きのほか、▽
命令後も、
対象と
なる人物への
警戒や
被害者に対する警備などは
行わず、
被害者への
助言や
自宅周辺のパトロールなどを
行っているということです。
一定の抑止効果はあるものの、被害を防ぐには限界があるのが現状で、課題が浮き彫りになっています。
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