「朝の小1の壁」は、保育所よりも小学校の登校時間が遅いため、親の働き方に影響が出たり、親の出勤後に小さな子どもが家や校門の前で学校が開くのを待っていたりすることが課題となっているものです。
こども家庭庁が去年9月から10月にかけて、民間の調査会社を通じて全国1700余りのすべての自治体を対象に、子どもたちに朝の居場所を提供する取り組みを進めているかを聞いたところ、回答した1017の自治体のうち、取り組みをすでに行っている、または実施を検討中としたのは、合わせて3%程度、30余りの自治体にとどまりました。
また、小学1年から6年生までの子どもがいる共働きや1人親家庭の保護者にも、インターネットでアンケート調査への協力を呼びかけ、各学年ごとにおよそ600人、合計で3700人余りから回答を得ました。
それによりますと、朝に自宅以外で子どもが過ごせる場所があれば「利用したい」と回答した人はおよそ30%で、回答者の居住地を分析したところ、都市部でニーズが高い傾向があったということです。
こども家庭庁は適切な支援につなげる必要があるとして、全国の自治体に対し、地域のニーズを把握し、実情に応じて対策を進めるよう近く通知する方針です。
全国に先駆けて対策進める自治体では
全国に先駆けて「朝の小1の壁」の対策を進める大阪豊中市です。
去年4月から市内の39の公立小学校で、登校時間の午前8時よりも1時間早く午前7時に校門を開けています。
登校時間の8時まで決められた部屋で友達と遊んだり自習したりして、過ごします。
学校ごとに民間の見守り員が2人配置され、利用する子どもは市全体で1日当たり平均80人ほどで1年生や2年生の低学年が中心です。
市は去年6月に利用の登録をした保護者へのニーズ調査を行ったところ、251人が回答しました。
それによりますと、利用したことがある118人のうち、
▽9割以上が仕事のために利用したと回答し
▽1週間に3日以上利用するとした人が半数を占めました。
保護者からは「門の前で待たせていた今までより子どもの安全を確保でき、安心して仕事に向かえる」とか「心のゆとりになっている」といった声のほか、「1年生になった際勤務先に相談したが、何の対応もしてもらえなかった」などの声が寄せられたということです。
朝子どもを学校に送り、その後職場に向かった1年生の保護者は「登校時間前に出ないと仕事に間に合わないので利用しているが、ここがあって安心できている」と話していました。
また、2年生の保護者は「昨年度、1年生の時は10分ほど学校の校門前で子どもを待たせていた。保育園は朝7時に始まるので学校も同じ対応をしてくれてありがたい」と話していました。
豊中市は保護者の要望が多く寄せられていることから、新年度から春休みや夏休みなどの長期休み期間中も学童保育を利用している児童を対象に、午前7時から校内での見守りを実施することにしています。
豊中市教育委員会学校施設管理課の桑田篤志課長は「将来的に働き方などが変わり、この制度がなくても安心して働いたり学校に行ったりできるようになるまでは、子どもと保護者に寄り添いながら、市としてできることをやっていきたい」と話していました。
豊中市のほかにも、東京の三鷹市や八王子市で昨年度から登校時間前に校庭を開放しているほか、東京 豊島区や横浜市などでは早朝に校内で子どもを見守る取り組みを始めるなど、都市部を中心に対策を進める自治体が出ています。
専門家「どう対応していくのか考える時期」
「朝の小1の壁」について、労働経済学が専門で日本女子大学の大沢真知子名誉教授は「仕事も子育ても両立する時代になってきた時に壁となってきた社会の課題であり、今後問題に直面する人たちの増加が見込まれることから、どう対応していくのか考える時期に来ている」と指摘しています。
そして、朝の小1の壁の問題に対する企業や自治体の役割について「特に都市部では親戚や親が近くにおらず、夫婦だけで子育てをしている人が多いなかで、自治体や社会、会社が両立できるような環境を整えていくことが必要だ。企業も従業員が抱えるいろんな事情に対して、新しい働き方を提供していくことが企業の成長にもつながるし、従業員の生産性をあげることにもつながる。自治体の動きや企業が働き方を変えることが重要だというメッセージを徹底して伝えていくことで、小1の壁の問題を解決していってほしい」と話していました。