(接助)
古語では, 未然形に接続する場合と已然形に接続する場合があるが, 現代語では, 一部, 未然形に接続することがあるほかは, 大部分が仮定形接続に統一された。
(1)順接の仮定条件を表す。 未成立の事柄を仮定し, それを条件として表す。 …ならば。 古語では未然形に接続。
「雨が降れ~, 試合を中止する」「君さえよけれ~, 一緒に行こう」「かの国の人来(コ)~, みな開きなむとす/竹取」
(2)(「…といえば」「…ならば」などの形で)事柄の内容や, よってきたる根拠を示す。
「大学といえ~, 近ごろ問題が多いね」「消息筋によれ~, 内乱が起こったらしい」
(3)順接の既定条件を表す。 理由・根拠となる動作・作用を条件として示す。 古語では已然形に接続。 (ア)ある条件が満たされれば, いつでもある事柄が起きるという場合の, 条件を表す。
「立て~芍薬(シヤクヤク), 座れ~牡丹(ボタン)」「日が沈め~夜になる」「命長けれ~辱(ハジ)多し/徒然 7」(イ)引き続いて起こる事柄についての, きっかけを表す。 …すると。 …したところが。 「大勢の中で見れ~, それほど目立った存在ではない」「一〇年前を思え~, ずいぶんぜいたくになったね」「浜を見れ~, 播磨の明石の浜なりけり/竹取」(ウ)原因・理由を表す。 ので。 から。 「塵を煙の如く吹き立てたれ~, すべて目も見えず/方丈記」
(4)(多く「…も…ば」の形をとって)同類の事柄や共存する事柄を並列する。 古語では已然形に接続(ただし, 古語にはあまり見られない用法である)。
「金もなけれ~地位もない」「ふるき都は荒れゆけ~, いまの都は繁昌す/平家 5」
(5)「ねばならぬ」「なければならない」など, 慣用的な言い方として用いる。
「仕事にはできるだけ精を出さね~ならぬ」「人は誠実に生きなけれ~ならない」
(6)「いわば」「たとえば」などの形で, 副詞的に用いる。
「いわ~, ひょうたんから駒が出たようなものだ」
(7)「しからば」「なぜならば」などの形で, 接続詞的に用いる。
「海運の振興を図るべきだ。 なぜなら~, 日本は島国だからである」
(8)已然形に接続して, 逆接の既定条件を表す。 のに。
「あまの河浅せしら浪たどりつつわたりはてね~あけぞしにける/古今(秋上)」
〔(1)については, 江戸時代後期の擬古文や明治期の普通文などでは形容詞語尾「く」「しく」に接続することもみられる(「恋ひしくば…」「…無くば」など)。 これは形容詞連用形「く」「しく」に係助詞「は」の付いたものに条件意識が強く意識されてできたもの。 → は(係助詞){(6)}〕
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