※一※ (名)
(1)地上をとりまく, 広がりある空間。 (ア)地上はるか上方の弧状の広がり。 天。
「~に輝く星」「青い~と白い雲」(イ)空中。 宙。 「~高く舞い上がる」「~飛ぶ鳥」
(2)天候。 空模様。
「変わりやすい秋の~」
(3)根拠地・立脚点を離れた不安定な状態をいう。 (ア)場所。 境遇。
「遠い異国の~」「旅の~」(イ)心境。 気持ち。 「生きた~がない」
(4)(「そらで」の形で)記憶していて, 書いたものを見ないこと。
「~でいう」「~で覚えている」
(5)うそ。 いつわり。
→ 空を使う
(6)物の上部。 てっぺん。
「あの高い木の~から飛んだれば/狂言・柿山伏(鷺流)」
※二※ (形動ナリ)
(1)心がぼんやりして, しっかりした意識がもてないさま。 魂が抜けたようなさま。
「此頃は心も~に泣暮し/金色夜叉(紅葉)」「たもとほり行箕(ユキミ)の里に妹を置きて心~なり土は踏めども/万葉2541」
(2)明確な理由・根拠のないこと。 多く, 助詞「に」を伴って副詞的に用いる。 (ア)はっきりした原因のないこと。 偶然。
「二人の人, 同じ夜~に相ひ会へり/今昔 9」(イ)はっきりした動機・目的のないこと。 あてどないこと。 「~に出でていづくともなく尋ぬれば雲とは花の見ゆるなりけり/山家(春)」(ウ)はっきりした根拠のないこと。 それとなく感知すること。 「富士の山を見れば, 都にて~に聞きししるしに, 半天にかかりて群山に越えたり/海道記」
※三※ (接頭)
名詞・動詞・形容詞などに付いて, 根拠がない, 実体のないことであるなどの意を表す。
(1)外見上だけの。 見せかけだけの。
「~うそぶく」「~とぼける」「~寝」「~涙」「~泣き」「他人の~似」
(2)実体がない。 事実でない。
「~耳」「絵~事」
(3)当てにならない。 信頼できない。
「~頼み」「~覚え」
(4)はっきりした理由がない。 わけがわからない。
「~恐ろしい」「~恥ずかしい」「~解け」
〔古く, 「そら」は天と地との間の虚空をさし, 神々の住む天上界を「あめ(天)」といった〕
<i>~がな・い</i>
気持ちが落ち着かない。 その気になれない。
「仲々以て観菊(キクミ)などといふ空はない/浮雲(四迷)」
<i>~聞かず</i>
聞こえないふりをすること。
「~して鎧につけたるあかじるしかなぐりすて/平家 9」
<i>~知らず</i>
そしらぬふりをすること。 そらとぼけること。
「少々は知りたれども~して/平家 1」
<i>~知らぬ雨</i>
〔空の知らない雨の意〕
涙。
「~にもぬるるわが身哉/後撰(恋三)」
<i>~飛ぶ鳥も落と・す</i>
「飛ぶ鳥も落とす勢い」に同じ。
<i>~に標(シメ)結(ユ)・う</i>
不可能なこと, 思っても甲斐(カイ)のないことのたとえ。
「夢にだにまだ見ぬ人の恋しきは~・ふ心地こそすれ/新勅撰(恋一)」
<i>~に知られぬ雪</i>
〔空の知らない雪の意〕
舞い散る桜などの花びら。
「桜ちる木のした風はさむからで~ぞふりける/貫之集」
<i>~に巣掻(スガ)・く</i>
空に巣を作る。 はかないことのたとえ。
「ささがに(=クモ)の~・ける糸よりも心ぼそしや絶えぬと思へば/後撰(雑四)」
<i>~に三つ廊下</i>
〔「照ろうか・降ろうか・曇ろうか」の三つの「ろうか」を廊下に掛けた洒落〕
天候の定まらないことをいう語。
<i>~吹く風と聞き流・す</i>
いいかげんに聞き流す。 そしらぬ顔をする。
<i>~を歩・む</i>
心が落ち着かず, 足が地につかないさまにいう。
「~・む心地して/源氏(御法)」
<i>~を使・う</i>
知らないふりをする。 そらとぼける。 また, うそをつく。
「手前も剣道を心得てをりますから, と~・つて/真景累ヶ淵(円朝)」
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