(1)人が認識した事物に, 他の事物と区別するために言葉で言い表した呼称。 名前。 (ア)同じ性質を有する一定範囲の事物をひとまとめにした呼称。
「東から吹く風の~を東風(コチ)という」「いかづちは~のみにもあらず, いみじうおそろし/枕草子 153」(イ)一定範囲の事物に属する個々の物に付けた呼称。 「国の~」「~も知れぬ遠き島」
(2)人の呼び名。 (ア)人ひとりひとりに付けた呼び名。 姓に対して名前。
「生まれた子に~を付ける」「娘の~は花子です」(イ)姓名。 氏名。 「私の~は田中花子です」「~を名乗れ」「~をばさかきの造(ミヤツコ)となむいひける/竹取」
(3)その呼び名とともに世にあらわれた評判。 (ア)よい評判。 名声。
「世に~が高い」「~のある人」(イ)名誉。 「~が傷つく」(ウ)あまりかんばしくない評判。 うわさ。 「~が立つ」
(4)実質を伴わない名称。 (ア)名目。 体裁。
「ホテルとは~ばかりの安宿」(イ)表向きの理由。 口実。 「開発の~のもとに自然を破壊する」
(5)名義。
「会社の~で申し込む」
(6)古く国語の単語分類に用いた語で, 現在の名詞に相当するもの。 室町時代の連歌論書にすでに見え, 江戸時代の国学者富士谷成章もこれを用いた。
→ 装
→ 挿頭
→ 脚結
<i>~有・り</i>
有名である。 名高い。
「僧綱たち, ~・る持者(ジサ)どもなど召して/宇津保(国譲下)」
<i>~有りて実(ジツ)なし</i>
〔漢書(循吏伝)〕
評判ばかりで実質が伴わない。 有名無実。 名あって実無し。
<i>~が売・れる</i>
世間に名が知られるようになる。 有名になる。
<i>~が立・つ</i>
評判になる。 また, 浮き名が立つ。
<i>~が通・る</i>
世間によく知られている。 評判になる。
<i>~が泣・く</i>
その名に値しない。
「国会議員の~・く」
<i>~に負(オ)・う</i>
(1)名高い。 評判である。
「これやこの~・ふ鳴門(ナルト)の渦潮に/万葉 3638」
(2)名としてもっている。
「大伴の氏(ウジ)と~・へるますらをの伴(トモ)/万葉 4465」
<i>~に聞・く</i>
うわさとして聞く。 また, 評判である。 有名である。
「まことや~・きし寂光の都, 喜見城の楽しみもかくやと思ふばかりの景色かな/謡曲・邯鄲」
<i>~にし負(オ)・う</i>
〔「し」は強意の助詞〕
「名に負う」を強めた言い方。
「~・はばいざこと問はむ都鳥/伊勢 9」
<i>~にそむ・く</i>
その名声に反する。 評判と異なる。
「老舗(シニセ)の~・かない味」
<i>~に立・つ</i>
世に聞こえる。 評判になる。
「~・てる吉田の里の杖(ツエ)なればつくとも尽きじ君が万代(ヨロズヨ)/拾遺(神楽)」
<i>~に恥(ハ)じない</i>
名前や評価を傷つけることがない。
「名人の~ない戦いぶり」
<i>~に旧(フ)・る</i>
古くから有名である。 古くからその名が広まっている。
「ここぞ~・る鈴の森/浄瑠璃・八百屋お七」
<i>~は実(ジツ)の賓(ヒン)</i>
〔「荘子(逍遥遊)」より。 賓は主に対する客, そえものの意。 尭から天子の位を譲られるのを, 許由が辞退したときの言葉〕
名誉は実際の徳のそえものである。 実質のない名誉は無意味なものである。
<i>~は体(タイ)を表す</i>
名はそのものの実体を言い表している。 名と実体は相応じる。
<i>~も無・い</i>
名前が知られていない。 無名の。
「~・い花」
<i>~をあ・げる</i>
世に名声をあらわす。 有名になる。
<i>~を売・る</i>
名が広く知れわたるようにする。
「勝負師として~・った男」
<i>~を得る</i>
名声を得る。 名高くなる。
<i>~を惜(オ)し・む</i>
名声が傷つくのを惜しむ。
<i>~を借・りる</i>
(1)他人の名義をかりる。
(2)口実とする。
「アンケートに~・りた思想調査」
<i>~を汚(ケガ)・す</i>
名誉を傷つけ評判を落とす。 名を辱(ハズカシ)める。
「母校の~・す行為」
<i>~を雪(スス)((ソソ))・ぐ</i>
汚名や悪評を功績をあげることによって消す。 名誉を回復する。
「卑怯者の~・ぐ」
<i>~を捨てて実(ジツ)を取る</i>
世間的な名声を得るよりも, 実質的な利のある方を選ぶ。
<i>~を正(タダ)・す</i>
〔論語(子路)〕
(1)名分を正す。
→ 正名
(2)正邪を判断する。
<i>~を立・つ</i>
(1)〔史記(伯夷伝)〕
名声をあげる。 名をあげる。
「ますらをは名をし立つべし/万葉 4165」
(2)評判をたてる。 浮き名が立つ。
「あるまじき~・ち/源氏(夕霧)」
<i>~を竹帛(チクハク)に垂(タ)る</i>
〔「後漢書(鄧禹伝)」による。 「竹帛」は書物の意〕
名を後世に伝え残す。 歴史書に記録されるような功績を立てる。
<i>~を連・ねる</i>
名前を並べて公にする。
「発起人に~・ねる」
<i>~を遂(ト)・げる</i>
名声を得る。
「功成り~・げる」
<i>~を留(トド)・める</i>
名声を後世に残す。
「歴史上に~・める」
<i>~を取・る</i>
評判をとる。 名声を得る。 名を得る。
「ありありて, をこがましき~・るべきかな/源氏(夕顔)」
<i>~を取るより徳(トク)を取れ</i>
実益の伴わない名声を得るよりも実利を得た方がよい。
<i>~を流(ナガ)・す</i>
名を世に広める。 評判をたてられる。
「末の世に聞き伝へてかろびたる名をや流さむ/源氏(帚木)」
<i>~を成(ナ)さしめる</i>
競う相手に負けて, 高名を得させる。
「宿敵に~しめる」
<i>~を成(ナ)・す</i>
その道ですぐれた人物として有名になる。
「作家として~・す」
<i>~を盗・む</i>
実力がないのに評判になる。
<i>~を残・す</i>
名声を後世に伝える。
<i>~を辱(ハズカシ)・める</i>
名声を傷つける。
<i>~を馳(ハ)・せる</i>
広く知られる。
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