※一※ (名)
(1)方向。 方位。
「東の~, 三〇里」「職(シキ)の御曹司を~悪(ア)しとて/枕草子 161」
(2)〔「北の方」のように, 貴人を呼ぶのに居所の方角を用いたところから〕
人を敬っていう語。
「あの~は, よい~です」「男の~」
(3)ところ。 場所。
「道なき~」「黒羽の館代浄坊寺なにがしの~におとづる/奥の細道」
(4)(多く下に打ち消しの語を伴って)手段。 方法。
「憤懣やる~なし」「言はむ~なく, むくつけげなる物来て/竹取」
(5)頃。 時分。
「来(コ)し~行く末」「この世を去らんとする時にこそ, はじめて過ぎぬる~の誤れる事は知らるなれ/徒然 49」
(6)二つに分かれたものの一方。 仲間。 組。
「左・右と~わかたせ給ふ/源氏(絵合)」
(7)味方。 多く「方をす」の形で用いる。
「娘, 夫の~をして/狂言・水引聟(天正本)」
(8)物事の分野。 方面。 あたり。
「宮仕への~にも立ち馴れ/更級」「なつかしうなまめきたる~は/大鏡(昔物語)」
※二※ (接尾)
(1)動詞の連用形に付いて, そのことを行う方法または, そのありさまの意を表す。 様(ヨウ)。
「作り~」「 話し~」「痛み~」
(2)人名に付いて, 寄宿している場所を表す。 ところ。
「山田~」
(3)「お」を冠した数を表す語に付いて, その数の人を尊敬していうのに用いる。
「おふた~」「お三(サン)~」
(4)〔「がた」とも〕
数量や時を表す名詞に付いて, それくらい・そのころであることを表す。
「五割~高い」「暮れ~」「朝~」
(5)〔「がた」とも〕
動詞の連用形や名詞に付く。 (ア)必ず相手があると予想される場合の, 一方の側を表す。 側(ガワ)。
「父~」「母~」「売り~」「買い~」「敵~」(イ)ある組織内でその方面に関係する人を表す。 係。 担当。 「囃子(ハヤシ)~」「衣装~」「道具~」(ウ)それをすることを表す。 「撃ち~やめ」「依頼~お願いします」
→ がた(方)
<i>~明・く</i>
陰陽道で方角のふさがりが除かれる。
「~・きなばこそは参りくべかなれと思ふに/蜻蛉(中)」
<i>~が付・く</i>
〔「片が付く」とも表記〕
物事の処理が終わる。 物事のけりがつく。 決着がつく。
<i>~違(タガ)・う</i>
方違(カタタガ)えをする。
「大殿へは~・へむとて渡り給ひにけるを/源氏(夕霧)」
<i>~塞(フタ)が・る</i>
方塞がりになる。
「~・りけれど/大和 8」
<i>~を付・ける</i>
〔「片を付ける」とも表記〕
物事をきちんと処理する。 けりをつける。 決着をつける。
「長年の争いに~・ける」「金で~・ける」