新型しんがたコロナとインフルエンザ 同時どうじ流行りゅうこうの可能かのう性せい どんな事態じたいが？

今月こんげつ5日にち、新型しんがたコロナの対策たいさくに当あたってきた専門せんもん家かが連名れんめいで、この先さきの見通みとおしを示しめす文書ぶんしょを、厚生こうせい労働ろうどう省しょうの専門せんもん家か会合かいごうに提出ていしゅつしました。

提出ていしゅつしたのは、東北とうほく大学だいがくの押谷おすだに仁じん教授きょうじゅ、京都大きょうとだい学がくの西浦にしうら博ひろし教授きょうじゅ、国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょの鈴木すずき基はじめ感染かんせん症しょう疫学えきがくセンター長ちょう、専門せんもん家か会合かいごうの座長ざちょうも務つとめる脇田わきた隆たかし字じ所長しょちょうの4人にんです。

これを受うける形かたちで、専門せんもん家か会合かいごうは「秋あき以降いこう、インフルエンザが例年れいねんよりも早はやく流行りゅうこうし、新型しんがたコロナとの同時どうじ流行りゅうこうになることが懸念けねんされ、こうした事態じたいを想定そうていした対応たいおうが必要ひつようだ」と指摘してきしました。

1つのシーズンで1000万まん人にんが感染かんせんし、多おおい年としには2000万まん人にんが感染かんせんしたと推計すいけいされています。

新型しんがたコロナの出現しゅつげん以降いこう、インフルエンザの患者かんじゃは激減げきげん。

全国ぜんこくおよそ5000の医療いりょう機関きかんからの情報じょうほうをもとに国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょが推計すいけいしたところ、2020年ねんから21年ねんはおよそ1万まん4000人にん、2021年ねんから22年ねんはおよそ3000人にんでした。

インフルエンザは、東南アジアとうなんあじあやアフリカなどの熱帯ねったいから亜熱帯あねったいの人口じんこうの多おおい地域ちいきでは1年ねんを通をとおして感染かんせんが広ひろがっています。

それが国際こくさい的てきな人ひとの移動いどうで各国かっこくに流ながれ、ウイルスが広ひろがる環境かんきょうができやすい冬ふゆの時期じきに大だい規模きぼな流行りゅうこうを起おこすと考かんがえられてきました。

それが、コロナ対策たいさくで国際こくさい的てきな人ひとの行き来いききが制限せいげんされたり、人ひとと人ひととの接触せっしょくが少すくなくなったりした影響えいきょうで、インフルエンザの流行りゅうこうも起おきなかったとみられています。

欧米おうべいをはじめ、世界せかいの多おおくの国くにではことしの春はるから夏なつ以降いこう、水際みずぎわ対策たいさくなど行動こうどう制限せいげんを緩和かんわする動うごきが続つづき、国際こくさい的てきな人ひとの移動いどうが大おおきく増ふえてきています。

日本にっぽんでも今月こんげつ11日にちからは、水際みずぎわ対策たいさくが大幅おおはばに緩和かんわ。

入国にゅうこく者しゃ数すうの上限じょうげんが撤廃てっぱいされ、海外かいがいからの自由じゆうな個人こじん旅行りょこうが認みとめられました。

新型しんがたコロナだけでなく、インフルエンザの流行りゅうこうも起おきやすい条件じょうけんが整ととのいやすくなると考かんがえられています。

インフルエンザはこの2年ねんは日本にっぽん国内こくないで流行りゅうこうしなかったので、感染かんせんしてインフルエンザの免疫めんえきを獲得かくとくしている人ひとの割合わりあいが少すくなくなっていると考かんがえられています。

毎年まいとしインフルエンザの流行りゅうこう期きに入はいる前まえには、予防よぼう接種せっしゅ法ほうに基もとづいて、全国ぜんこく各地かくちでインフルエンザの抗体こうたいを持もつ人ひとの割合わりあいを調しらべる「インフルエンザ感受かんじゅ性せい調査ちょうさ」が行おこなわれています。

それによりますと、A型がたのインフルエンザウイルスの一部いちぶに対にたいする抗体こうたいを保有ほゆうしていた人ひとの割合わりあいは、去年きょねんの夏なつでも、その前まえの年とし、2020年ねんの夏なつより低ひくかったということです。

ことしの結果けっかはまだ分わかりませんが、専門せんもん家かが出だした文書ぶんしょでは、抗体こうたいの保有ほゆう状況じょうきょうが低ひくいことでインフルエンザの流行りゅうこうが例年れいねんより大おおきくなる方向ほうこうに働はたらく可能かのう性せいがあるとしています。

日本にっぽんとは季節きせつが逆ぎゃくで、インフルエンザの流行りゅうこうの時期じきが半年はんとしずれる南半球みなみはんきゅう・オーストラリアではことし、コロナが拡大かくだいする前まえと同おなじ程度ていどのインフルエンザの流行りゅうこうが2年ねんぶりに起おきました。

オーストラリアでは、例年れいねんは8月つきが流行りゅうこうのピークでしたが、ことしは6月つきにピークを迎むかえ、流行りゅうこうが早はやく起おきたということです。

こうした点てんを踏ふまえ、専門せんもん家かはこの冬ふゆにかけてインフルエンザの流行りゅうこうが起おき、コロナの「第だい8波は」と重かさなる可能かのう性せいがあると見みているのです。

一方いっぽうで、日本にっぽん国内こくないでの人ひとと人ひととの接触せっしょくの機会きかいは、コロナの拡大かくだい以前いぜんほどには戻もどっておらず、インフルエンザの流行りゅうこう規模きぼがかつてほどにはならない可能かのう性せいもあるとみられています。

致死ちし率りつは、0.11％となります。

ピークだった8月つき下旬げじゅんには、1週間しゅうかんでおよそ159万まん人にんの感染かんせんが報告ほうこくされました。

ピーク時じの1月つき下旬げじゅんには、1週間しゅうかんの患者かんじゃ数すうがおよそ223万まん人にんに上のぼったと推計すいけいされています。

2022年ねん3月つきに厚生こうせい労働ろうどう省しょうの専門せんもん家か会合かいごうで示しめされた、専門せんもん家かによるおおまかな推計すいけいでは、インフルエンザの致死ちし率りつは0.01％から0.05％ほどだとされています。

また、確保かくほした病床びょうしょうの使用しよう率りつが上あがり、多おおくの地域ちいきで入院にゅういんが難むずかしくなったほか、重症じゅうしょう化かリスクのある人ひとでも救急きゅうきゅう搬送はんそうが難むずかしい状況じょうきょうになりました。

専門せんもん家かは、新型しんがたコロナとインフルエンザの同時どうじ流行りゅうこうで、同おなじような状況じょうきょう、さらに悪化あっかした状況じょうきょうが起おきないか、懸念けねんしているのです。

新型しんがたコロナもインフルエンザも発熱はつねつやせきなどの症状しょうじょうは似にています。

のどの痛いたみや関節かんせつ痛つうなどの症状しょうじょうも似にており、検査けんさをせず症状しょうじょうだけで両者りょうしゃを判別はんべつすることはかなり難むずかしいとみられています。

発熱はつねつを訴うったえる患者かんじゃが、診断しんだんを求もとめて医療いりょう機関きかんの外来がいらいに殺到さっとうし、ひっ迫ひっぱくする事態じたいが想定そうていされています。

新型しんがたコロナの「第だい8波は」の感染かんせん拡大かくだいが大だい規模きぼになると、インフルエンザへの対応たいおうも重かさなって救急きゅうきゅうなど医療いりょう機関きかんのひっ迫ひっぱくも避さけられなくなります。

さらに、毎年まいとし冬ふゆは、気温きおんの低下ていかによって心筋しんきん梗塞こうそくといった循環じゅんかん器きなどの病気びょうきが多おおくなって医療いりょう機関きかんの負荷ふかが増ます時期じきで、新型しんがたコロナとインフルエンザの同時どうじ流行りゅうこうが加くわわれば、医療いりょう機関きかんの負担ふたんはこれまでよりもさらに大おおきなものになるという懸念けねんもあります。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうの専門せんもん家か会合かいごうのメンバーで東北とうほく大学だいがくの小坂こさか健けん教授きょうじゅに聞ききました。

（小坂こさか教授きょうじゅ）

「もし同時どうじ流行りゅうこう下かで発熱はつねつを自覚じかくしたとき、症状しょうじょうだけでは区別くべつがつかない。今こんコロナについてはインターネットなどでも抗原こうげん検査けんさキットが購入こうにゅうできるので、自分じぶんで判断はんだんすることができる場合ばあいもあるがインフルエンザは難むずかしい。地域ちいきの多おおくの医療いりょう機関きかんが率先そっせんして発熱はつねつ患者かんじゃを診療しんりょうする体制たいせいが必要ひつようになるのではないか」

「政府せいふで、こうした医療いりょう体制たいせいの整備せいびについては検討けんとうが進すすんでいるようだが、国民こくみん目線めせんで“発熱はつねつした場合ばあいにどの医療いりょう機関きかんにいけばよいのか”“どう行動こうどうすればいいのか”という目安めやすをわかりやすく示しめしてもらう必要ひつようがある」

「重症じゅうしょう化かリスクの低ひくい若わかい世代せだいの人ひとにとっては、インフルでもコロナでも、解熱剤げねつざいを飲のんだり水分すいぶん補給ほきゅうしてしっかり休養きゅうようしたりすれば、基本きほん的てきには症状しょうじょうはよくなっていく。まずは休養きゅうようということも大切たいせつなことだ」

小坂こさか教授きょうじゅは、どの感染かんせん症しょうにかかったのか考かんがえる際さいには、地域ちいきでインフルエンザがどれくらい流行りゅうこうしているかみることも重要じゅうようになってくると言いいます。

（小坂こさか教授きょうじゅ）

「地域ちいきのインフルエンザの流行りゅうこう状況じょうきょうは、大おおきな目安めやすになる。ただ、今いまの仕組しくみでは、定点ていてん把握はあくなどを通をつうじて知しらせるようになっているため、情報じょうほうが少すこし遅おそく、新型しんがたコロナのように毎日まいにち情報じょうほうが更新こうしんされるリアルタイムな把握はあくになっていない」

「治療ちりょう薬やくの出荷しゅっか状況じょうきょうなど、少すこしでも最新さいしんの状況じょうきょうがわかるような把握はあく方法ほうほうを活用かつようしたうえで、その情報じょうほうをしっかりと医療いりょう機関きかんや市民しみんが共有きょうゆうできる体制たいせいが非常ひじょうに重要じゅうようになってくる」

新型しんがたコロナのワクチンも、インフルエンザのワクチンも、感染かんせんをある程度あるていど防ふせぐほか、重症じゅうしょう化かを防ふせぐ効果こうかは高たかいとされています。

小坂こさか教授きょうじゅは、新型しんがたコロナの3回かい目め、4回かい目めのワクチン接種せっしゅとともに、インフルエンザの接種せっしゅを受うけるよう呼よびかけています。

（小坂こさか教授きょうじゅ）

「コロナもインフルも、同時どうじにワクチンを打うっても問題もんだいはない。医療いりょう機関きかんによっては同時どうじに接種せっしゅできるところもあり、しっかりとタイミングを逃のがさず両方りょうほうのワクチンを接種せっしゅしておくことが、冬ふゆに向むけて重要じゅうようだ」。

また、東邦とうほう大学だいがくの舘田たてだ教授きょうじゅは、オンライン診療しんりょうなども活用かつようして、重症じゅうしょう化かのリスクがある人ひとを確実かくじつに診みられるための医療いりょう体制たいせいを整ととのえることが大事だいじだと指摘してきしています。

（舘田たてだ教授きょうじゅ）

「重症じゅうしょう化かリスクが高たかい人ひとたちを優先ゆうせんして診療しんりょうできる体制たいせいを維持いじするため、リスクがなく軽症けいしょうで済すみそうな人ひとは、自宅じたく療養りょうようしてもらって、オンライン診療しんりょうやフォローアップセンターをうまく使つかいながら対応たいおうしていくことも重要じゅうようだ。コロナは簡易かんいの検査けんさキットで自宅じたくで検査けんさできるが、インフルエンザも同様どうように自宅じたくで検査けんさできるようになれば、医療いりょう機関きかんを受診じゅしんするか自宅じたくで療養りょうようすればよいか、よりスムーズに判断はんだんできるようになると考かんがえられる」

▽発熱はつねつなどの症状しょうじょうがある場合ばあいは学校がっこうや仕事しごとには行いかず、ほかの人ひととの接触せっしょくを極力きょくりょく避さける。休養きゅうようが重要じゅうよう。

▽手て指ゆびの消毒しょうどく、屋内おくないで人ひとと近ちかい距離きょりで会話かいわする場面ばめんなどではマスクを着用ちゃくようする。飲食いんしょく店てんなどでは換気かんきを徹底てっていする。

専門せんもん家かは、新型しんがたコロナとインフルエンザが同時どうじ流行りゅうこうした場合ばあいの感染かんせんの規模きぼを小ちいさくする意味いみでも、こうした基本きほん的てきな対策たいさくを続つづけることが大事だいじだと呼よびかけています。