(社会部記者・山田沙耶花 鳥取局記者・長山尚史 大分局記者・佐々木森里)
過去最大規模の運休・減便
調べたのは3月31日から10月26日までの「夏ダイヤ」の定期便。
日本と韓国の路線に限った情報をまとめているところがなかったので、全国にある国土交通省の運輸支局などに取材をし、取りまとめました。
その結果、「夏ダイヤ」で当初、運航が予定されていた日本と韓国の各地を結ぶ定期便は1週間当たりおよそ2500便ありました。
それが10月末の時点では週におよそ1560便にまで減っていました。
3分の1以上にあたるおよそ940便が運休や減便していたのです。
国土交通省は、「これほどの規模の運休や減便は過去に例がないのではないか」としています。
韓国便や国際線がなくなる空港も
このうち、影響が最も大きかったのは▽関西空港で242便、次いで▽福岡空港で138便、▽新千歳空港で136便、▽成田空港で132便などとなっていて、各地で大規模な運休や減便が相次いでいました。
さらに大分や米子、佐賀、小松、富山、茨城の6空港では、韓国へのすべての定期便が運休となり、韓国便がなくなるところもでています。
このうち大分空港では韓国便が運休となったことで、国際線のすべての定期便がなくなる事態になっています。
今月27日から始まった「冬ダイヤ」でも、運航再開の見通しがたっていないところが相次いでいて、利用者減少による影響が深刻化しています。
約16億円余りかけて空港施設改修も…
韓国との定期便がすべて運休となった鳥取県の米子空港では、およそ16億5000万円を投じて、空港施設の改修工事を進めてきました。
港内の施設の拡張工事では国際線の待合室や出発ロビーを広げるほか、乗客が航空機に乗り込むための「ボーディングブリッジ」も2本から3本に増やされ、すでにこれらの工事もほぼ終わっています。
11月には空港施設のリニューアルを迎える予定ですが、韓国便の再開の見通しはたたないままで、関係者は落胆の色を隠せずにいます。
鳥取県国際観光誘客課の瀬良知紀課長補佐は次のように話しています。
「国と国との問題ではあるものの鳥取県は、観光面で韓国の旅行者に頼る部分が多く地域経済に影響が出ていてショックは大きい。早期の運航再開を働きかけていきたい」。
国際線消えた大分では…
韓国との定期便すべてがなくなった大分では特に、韓国人など外国人観光客向けの旅館やホテルなどで深刻な影響が出ています。
先月、大分県を訪れた韓国からの観光客は6000人余りと前の年の同じ月に比べ5分の1以下に落ち込んでいます。
このため大分県別府市にある温泉旅館でもことし7月以降、宿泊客の多くを占めていた韓国人観光客が激減し、経営面に深刻な影響がでています。
この旅館では去年3月には新館を増築するなど新たな投資を行ったばかりでしたが、日韓関係が悪化したことし7月中旬以降、韓国からの新たな予約はほとんど入らなくなり、最近では、予約が1件も入らず、旅館を閉める日まであるといいます。
このため13人いる従業員のうち、およそ半数の従業員に休みを取らせていて、このまま影響が続けば、旅館の経営自体にも深刻な影響がでかねないと危機感を強めています。
温泉旅館「はなみずき」を経営するシン・ヒョンウク(申鉉旭)さんは次のように話しています。
「韓国の人は温泉が好きなので、1月、2月は本来なら稼ぎどき。そのときに来てもらえないととても困ります。早く元に戻ってほしい」。
韓国LCCも深刻な影響
韓国のLCC=格安航空会社でも影響が深刻化しています。
多くの日本人に利用してもらおうとあの手この手の対策を打ち出しています。
今月27日に大阪で開かれた国際的な観光イベントには、韓国のLCC各社も参加し、ブースを設けていました。
韓国のLCCの中には、期間限定で、片道1000円からの韓国便のチケットを売り出しているところもあり、会場では客室常務委員などが訪れた人たちにアピールしていました。
また、別の韓国のLCCでは、じゃんけん大会での勝者に、ソウルまでの片道チケットをプレゼントするなどして利用を呼びかけていました。
日本の観光庁にあたる韓国観光公社のソル・ギョンヒ大阪支社長は次のように話しています。
「韓国にある6つのLCCなどエアラインはすごく運営に困っている。韓国人の利用者が減っている分を日本からの観光客を増やすことで補い、両国間の政治の問題を柔らげていきたい」。
また、韓国からの旅行客が減っていることについて、日本の観光庁の担当者は次のように話しています。
「九州などでは観光への影響がより鮮明になっている。状況を見ながら韓国の旅行会社とのプロモーションも再開し、訪日観光客の増加に向けて働きかけてたい」。