南海なんかいトラフ地震じしん臨時りんじ情報じょうほう まもなく1か月かげつ 課題かだい踏ふまえどう対応たいおう？

「警戒けいかい心しんを高たかめられた」

先月せんげつ8日にち、初はじめて発表はっぴょうされた「南海なんかいトラフ地震じしん臨時りんじ情報じょうほう」。

発表はっぴょうからまもなく1か月かげつとなり、さまざまな声こえが聞きかれています。

一方いっぽう、発表はっぴょう後ごには、各地かくちでは対応たいおうがわかれる場面ばめんもありました。

浮かび上うかびあがった課題かだいとは？

「具体ぐたい的てきな情報じょうほうがほしかった」

「南海なんかいトラフ地震じしん臨時りんじ情報じょうほう」の初はじめての発表はっぴょうからまもなく1か月かげつとなり、JR新宿しんじゅく駅前えきまえでは、具体ぐたい的てきな情報じょうほうがほしかったとか、地震じしんへの備そなえを見直みなおすきっかけになったなどの声こえが聞きかれました。

東京とうきょう 練馬ねりま区く 30代だい女性じょせい

「非常ひじょう持ち出もちだし袋ぶくろの中身なかみを見直みなおしたほか避難ひなん通路つうろになる廊下ろうかを整理せいりしました。子こどもが3人にんいるので、避難ひなんについては不安ふあんでしたが、警戒けいかい心しんを高たかめられました。具体ぐたい的てきな災害さいがいへの備そなえ方かたの情報じょうほうも出でるとよいかと思おもいました」

都内とない 20代だい大学生だいがくせい

「テレビなどだけでなく地震じしん直後ちょくごからSNS上じょうでも多おおくの情報じょうほうが発信はっしんされて、すぐに地震じしんや発表はっぴょう、対策たいさくについて知しることができたのでよかった。いろいろな情報じょうほうが出でていたが、そのなかでも公式こうしきな情報じょうほうで正確せいかくなものをなるべく確認かくにんするようにしていました」

大阪おおさか府ふ 20代だい大学生だいがくせい

「お盆おぼんに新潟にいがたの実家じっかに帰かえり、和歌山わかやまの白浜しらはまに友達ともだちと旅行りょこうに行いく予定よていだったのですが、キャンセルしました。怖こわいなとは思おもったのですが、具体ぐたい的てきにどうすればよいかはわからなかったので、もっと具体ぐたい的てきな情報じょうほうがほしかったです」

埼玉さいたま 50代だい男性だんせい

「備そなえを忘わすれていたので、水みずを買かいました。ただ、仕事しごとや予定よていを変更へんこうすることはなく、今いまひとつ実感じっかんがなかったです」

【経緯けいい】初はつの臨時りんじ情報じょうほう 707市町村しちょうそんに備そなえ呼よびかけ

先月せんげつ8日にち、日向ひなた灘なだを震源しんげんとするマグニチュード7.1の地震じしんが発生はっせいし、「南海なんかいトラフ地震じしん臨時りんじ情報じょうほう（巨大きょだい地震じしん注意ちゅうい）」が発表はっぴょうされました。

臨時りんじ情報じょうほうが出でたのは初はじめてで、国くには防災ぼうさい対策たいさくの推進すいしん地域ちいきに指定していされている29都府県とふけんの707市町村しちょうそんに対にたいして、1週間しゅうかん、ふだんの生活せいかつを続つづけながら地震じしんへの備そなえを改あらためて確認かくにんするよう呼よびかけました。

しかし、初はじめての発表はっぴょうに、各地かくちでは各地かくちでは対応たいおうがわかれる場面ばめんがあったほか、課題かだいも浮き彫うきぼりにもなりました。

海水浴かいすいよく場じょうでは対応たいおう分わかれる

各地かくちの海水浴かいすいよく場じょうでは、閉鎖へいさしたところがあった一方いっぽう、避難ひなん経路けいろを確認かくにんするなどしたうえで通常つうじょうどおり開設かいせつしたところもあり対応たいおうが分わかれました。

＜神奈川かながわ 平塚ひらつかの海水浴かいすいよく場じょう 1週間しゅうかん閉鎖へいさ＞

南海なんかいトラフ巨大きょだい地震じしんの防災ぼうさい対策たいさくの推進すいしん地域ちいきに指定していされている神奈川かながわ県けん平塚ひらつか市しの海水浴かいすいよく場じょうは、「臨時りんじ情報じょうほう」の発表はっぴょうを受うけて先月せんげつ9日にちから15日にちまでの1週間しゅうかん閉鎖へいさしました。

市しによりますと、巨大きょだい地震じしんの際さいに津波つなみの浸水しんすい想定そうてい区域くいきに含ふくまれるため、安心あんしんと安全あんぜんを最さい優先ゆうせんに考かんがえたということです。

閉鎖へいさを知しらずに訪おとずれた人ひとからは「日向ひなた灘なだで起おきた地震じしんでなぜ平塚ひらつか市しの海水浴かいすいよく場じょうに影響えいきょうが出でるのか」とか「ほかの自治体じちたいの海水浴かいすいよく場じょうは入いれるのになぜここだけ入いれないのか」といった声こえが寄よせられ、「臨時りんじ情報じょうほう」がその後そのごの巨大きょだい地震じしんについて注意ちゅういを呼よびかける内容ないようであることなどを説明せつめいして理解りかいを求もとめたということです。

＜和歌山わかやま 白浜しらはま すべての海水浴かいすいよく場じょうを閉鎖へいさ＞

白浜しらはま町まちも町内ちょうない4か所かしょすべての海水浴かいすいよく場じょうを閉鎖へいさし、大江おおえ康弘やすひろ町長ちょうちょうは「苦渋くじゅうの決断けつだんだったが、観光かんこう客きゃくや町民ちょうみんの安全あんぜんを第だい一いちに考かんがえた判断はんだんで、ご理解りかいいただきたい」と述のべました。

和歌山わかやま県内けんないでは、海水浴かいすいよく場じょうの閉鎖へいさやイベントの実施じっしなどをめぐる各地かくちの対応たいおうが分わかれ、岸本きしもと周平しゅうへい知事ちじは定例ていれいの記者きしゃ会見かいけんで「ある程度あるていど統一とういつ的てきな物差ものさしを作つくってもらえればありがたい」と述のべ、国くにで基準きじゅんを作つくるよう求もとめていく考かんがえを示しめしました。

＜神奈川かながわ 鎌倉かまくらの海水浴かいすいよく場じょう 通常つうじょうどおり開設かいせつ＞

一方いっぽう、同おなじく推進すいしん地域ちいきに指定していされている鎌倉かまくら市しは市内しない3か所かしょの海水浴かいすいよく場じょうを通常つうじょうどおり開設かいせつしました。

市しによりますと「臨時りんじ情報じょうほう」の内容ないようを精査せいさし、海岸かいがん部ぶの地形ちけいが似にた近隣きんりんの自治体じちたいの状況じょうきょうを確認かくにんするなどしたうえで判断はんだんしたということで、地震じしんの翌日よくじつには、海うみの家いえの運営うんえい者しゃで作つくる組合くみあいやライフセーバーの協会きょうかい、警備けいび会社かいしゃに連絡れんらくして津波つなみの避難ひなん経路けいろや避難ひなん場所ばしょを確認かくにんし、海水浴かいすいよく場じょう内ないでの放送ほうそうで注意ちゅういを呼よびかけてほしいなどと要請ようせいしたということです。

「危機きき対応たいおうと通常つうじょう業務ぎょうむ 同時どうじに…」職員しょくいん78人にんの徳島とくしま 牟岐むぎ町まち

職員しょくいん78人にんの徳島とくしま県けん牟岐むぎ町まちは最大さいだい13.4メートルの津波つなみが想定そうていされていて、事前じぜんに臨時りんじ情報じょうほうが出だされた際さいの対応たいおうを計画けいかくやマニュアルで定さだめ、ことし6月つきには勉強べんきょう会かいも開ひらいて職員しょくいんに共有きょうゆうしていました。

先月せんげつ8日にち、臨時りんじ情報じょうほうの発表はっぴょうと同時どうじに災害さいがい対策たいさく警戒けいかい本部ほんぶを立たち上あげ、防災ぼうさい用ようの備品びひんを災害さいがい時じの拠点きょてんになる小学校しょうがっこうに移うつしたり、公用こうよう車しゃを浸水しんすい域いきの町まち役場やくばから高台たかだいに移動いどうさせたりする対応たいおうをとりました。

また、ふだん夜間やかんの当直とうちょくは2人にんですが、町長ちょうちょうを含ふくむ6人にんに増員ぞういんしたほか、職員しょくいんの一部いちぶを自宅じたく待機たいきにして人員じんいんを分散ぶんさんさせたということです。

一方いっぽう、頭あたまを悩なやませたのは通常つうじょう業務ぎょうむとの両立りょうりつです。今回こんかいの臨時りんじ情報じょうほうでは日常にちじょう生活せいかつを行おこないつつ、巨大きょだい地震じしんに備そなえるよう呼よびかけられたため、ふだんの役場やくばの業務ぎょうむを行おこないながら警戒けいかいを続つづけることが必要ひつようで、町まちでは1週間しゅうかんのうちに態勢たいせいを途中とちゅうで見直みなおしました。

当直とうちょくを6人にんから危機きき管理かんりの担当たんとう1人にんを含ふくむ3人にんに縮小しゅくしょう、業務ぎょうむに必要ひつような公用こうよう車しゃは日にち中ちゅうのみ高台たかだいから役場やくばに戻もどし、使用しよう後ごはすぐガソリンを補充ほじゅうして4分ぶんの3の残ざん量りょうを確保かくほし、休日きゅうじつ前まえは満まんタンにするなど新あたらしいルールを決きめたということです。

今回こんかいの対応たいおうについて、町まちは職員しょくいんから聞き取ききとりするなど検証けんしょうを始はじめています。聞きき取とりを受うけた女性じょせい職員しょくいんは「役場やくばの少すくない人数にんずうで住民じゅうみんの事前じぜん避難ひなんを伴ともなう臨時りんじ情報じょうほうが出でた場合ばあい、対応たいおうできるか不安ふあんがある。備蓄びちくの再さい点検てんけんなどできるところから始はじめたい」と話はなしていました。

防災ぼうさい担当たんとうの白木しらき健治けんじ危機きき管理かんり監は「危機きき対応たいおうと通常つうじょう業務ぎょうむを同時どうじに行おこなうことが今回こんかい、もっとも難むずかしかった。職員しょくいんから上あがった意見いけんを聞きき、定期ていき的てきに研修けんしゅうや訓練くんれんを続つづけたい」と話はなしていました。

愛媛えひめ 西にし予 特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホーム入所にゅうしょ者しゃの避難ひなん計画けいかくを見直みなおし

津波つなみの浸水しんすい想定そうてい区域くいきにある愛媛えひめ県けん西にし予市しの特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホームでは、入所にゅうしょ者しゃの安全あんぜんな避難ひなんに向むけた計画けいかくの見直みなおしを始はじめています。

特別とくべつ養護ようご老人ろうじんホーム「皆みな楽園らくえん」は介護かいごが必要ひつようなお年寄としより60人にんが入所にゅうしょしていて、津波つなみが予想よそうされる際さいは車くるまで5分ふんほどの高台たかだいにある農道のうどうまで避難ひなんすることにしています。

入所にゅうしょ者しゃのほとんどが車くるまいすを利用りようしているため、避難ひなんには多おおくの人手ひとでと車両しゃりょうが必要ひつようですが、車くるまいすを載のせられる車くるまが3台だいしかないほか、職員しょくいんのほぼ半数はんすうが町まち外がいから通勤つうきんしているため、災害さいがい時じに入所にゅうしょ者しゃをどう安全あんぜんに避難ひなんさせるのかが課題かだいとなっています。

先月せんげつの臨時りんじ情報じょうほうの発表はっぴょうを受うけて、施設しせつでは家具かぐの固定こていや備蓄びちくの確認かくにんを進すすめているほか、新あらたに災害さいがい時じの計画けいかくを見直みなおすことになり、4日にちに職員しょくいんによる打ち合うちあわせが行おこなわれました。

この中なかでは、災害さいがい時じにすぐに駆かけつけられる職員しょくいんを把握はあくするため、連絡れんらく体制たいせいを整備せいびすることが決きまったほか、再ふたたび臨時りんじ情報じょうほうが出だされ事前じぜん避難ひなんを呼よびかけられた場合ばあいの対応たいおうも話し合はなしあわれました。

職員しょくいんからは「避難ひなんには相当そうとうな時間じかんがかかるため、ほかの高齢こうれい者しゃ施設しせつへの事前じぜん避難ひなんを考かんがえる必要ひつようがある」という意見いけんが出だされた一方いっぽう、「避難ひなん先さきも入所にゅうしょ者しゃがいて受け入うけいれられないおそれがあるほか、避難ひなんで環境かんきょうが変かわることで入所にゅうしょ者しゃの体調たいちょう悪化あっかにつながりかねない」などという意見いけんも出だされていました。

施設しせつでは今後こんごも議論ぎろんを重かさね、年内ねんないには計画けいかくを見直みなおすことにしています。

入所にゅうしょ者しゃで車くるまいすを使用しようしている横山よこやま雅枝まさえさん（86）は「足あしが動うごかずに係かかりの人ひとの指示しじに従にしたがうしかないので臨時りんじ情報じょうほうが出でてからとても心配しんぱいで怖こわかったです」と今回こんかいの臨時りんじ情報じょうほうの発表はっぴょうを振り返ふりかえりました。

そのうえで、巨大きょだい地震じしんの発生はっせいに備そなえた事前じぜんの避難ひなんについては「知しっている人ひとがそばにいる環境かんきょうで、スタッフの方ほうを信頼しんらいしているので、事前じぜん避難ひなんをして近ちかくの人ひとと離はなれてしまうのは不安ふあんです」と話はなしていました。

岡本おかもと修一しゅういち施設しせつ長ちょうは「何なにが現実げんじつ的てきな対策たいさくとしてできるのか、課題かだいを洗い出あらいださないといけない。利用りよう者しゃの安心あんしん安全あんぜんを守まもる体制たいせい作づくりを進すすめたい」と話はなしていました。

専門せんもん家か「スタートラインに立たてた」

臨時りんじ情報じょうほうについて、南海なんかいトラフ地震じしん対策たいさくの国くにの作業さぎょう部会ぶかいでとりまとめ役やくを務つとめる名古屋なごや大学だいがくの福ふく和かず伸夫のぶお名誉めいよ教授きょうじゅが都内とないの日本にっぽん記者きしゃクラブで会見かいけんし「周知しゅうちが進すすんでいなかった中なかで、国民こくみんの行動こうどうもメディアの伝つたえ方かたも適切てきせつだったと思おもう」と述のべました。

海水浴かいすいよく場じょうを閉鎖へいさする動うごきも見みられるなど、各地かくちで対応たいおうが分わかれたことについては「今回こんかい多おおくの人ひとが臨時りんじ情報じょうほうの意味いみを理解りかいしスタートラインに立たてた」と指摘してきしました。

そのうえで「あいまいな情報じょうほうをもとにどう被害ひがいを減へらすか、正解せいかいの無ない答こたえを探さがしている。国民こくみん全体ぜんたいが当事者とうじしゃとなって一緒いっしょに解決かいけつ策さくを考かんがえるのが望のぞましい」と述のべました。

今回こんかい初はじめて出だされた「臨時りんじ情報じょうほう」をめぐっては、自治体じちたいも手探てさぐりの中なかで判断はんだんを迫せまられ対応たいおうが大おおきく分わかれました。

地域ちいきの実情じつじょうに合あわせたそれぞれの課題かだいを検証けんしょうし、不断ふだんの見直みなおしを進すすめていく姿勢しせいが求もとめられます。