Actualités japonaises: “生乳” 大量廃棄の可能性業界団体が危機感強める

この年末ねんまつ年始ねんし、牛乳ぎゅうにゅうや乳製品にゅうせいひんの原料げんりょうとなる生乳せいにゅうがかつてない規模きぼで余あまり、廃棄はいきされる可能かのう性せいがあることが、業界ぎょうかい団体だんたいが行おこなった試算しさんで分わかりました。コロナ禍かで落ち込おちこんだ業務ぎょうむ用ようのバターなどの需要じゅようが回復かいふくしない中なか、学校がっこう給食きゅうしょくが休やすみになることなどが背景はいけいにあり、廃棄はいきを避さけようと、団体だんたいは牛乳ぎゅうにゅうの消費しょうひ拡大かくだいなどに力ちからを入いれています。

在庫ざいこ量りょうが過去かこ最高さいこう水準すいじゅんまで増加ぞうか

乳業にゅうぎょうメーカーや酪農らくのう家かでつくる業界ぎょうかい団体だんたいの「Jミルク」によりますと、生乳せいにゅうの生産せいさん量りょうは、6年ねんほど前まえのバター不足ふそくなどを受うけて増産ぞうさんに取り組とりくんできた効果こうかがここ数すう年ねんあらわれているほか、ことしは夏場なつばの気温きおんが低ひくく、乳ちちが出でやすかったということで、今年度こんねんどの生産せいさん量りょうは昨年度さくねんどより17万まんトン余あまり多おおくなる見通みとおしです。

一方いっぽう、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだい以降いこう、業務ぎょうむ用ようのバターや脱脂だっし粉乳ふんにゅうの需要じゅようが落ち込おちこんでいて、在庫ざいこの量りょうは過去かこ最高さいこうの水準すいじゅんまで増ふえているということです。

そのうえ年末ねんまつ年始ねんしは、学校がっこう給食きゅうしょくが無なくなるなどして牛乳ぎゅうにゅうの消費しょうひ量りょうが大おおきく落ち込おちこむことから、この年末ねんまつ年始ねんしには、団体だんたいの試算しさんで、5000トンの生乳せいにゅうが廃棄はいきされる可能かのう性せいがあるということです。

15年ねん前まえの2006年ねんに、牛乳ぎゅうにゅうの消費しょうひの低迷ていめいからおよそ900トンの生乳せいにゅうが廃棄はいきされたことがありますが、仮かりに、これだけの量りょうが廃棄はいきされることになれば、過去かこに例れいのない事態じたいということです。

廃棄はいきを避さけようと、団体だんたいでは、酪農らくのう家かに対にたいし年末ねんまつ年始ねんしに出荷しゅっかを抑制よくせいするよう協力きょうりょくを求もとめ、出荷しゅっかを抑おさえた酪農らくのう家かには助成じょせい金きんを出だすことを決きめたほか、牛乳ぎゅうにゅうの消費しょうひ拡大かくだいに向むけてPR活動かつどうなどに力ちからを入いれています。

「Jミルク」の内橋うちはし政敏まさとし専務せんむ理事りじは、「仮かりに廃棄はいきされることになれば、経済けいざい的てきな損失そんしつだけではなく、酪農らくのう家かの間まで将来しょうらいへの不安ふあんが高たかまり減産げんさんにつながる可能かのう性せいもある。1滴てきたりともむだにしないため必死ひっしに取り組とりくんでいます」と話はなしていました。

また全国ぜんこくの生産せいさん者しゃ団体だんたいなどが加盟かめいする「中央ちゅうおう酪農らくのう会議かいぎ」によりますと、生乳せいにゅうの廃棄はいきという事態じたいにならないよう、メーカーに対にたいしては、年末ねんまつ年始ねんしも可能かのうなかぎり工場こうじょうを稼働かどうするよう働はたらきかけているということです。

一般いっぱん的てきな牛乳ぎゅうにゅうより高温こうおんで殺菌さっきん処理しょりすることで常温じょうおんで長ながく保存ほぞんできる「ロングライフ牛乳ぎゅうにゅう」の製造せいぞうを呼よびかけていて、例年れいねん、年末ねんまつ年始ねんしは休業きゅうぎょうするというメーカーの中なかでも、今回こんかいは稼働かどうするところもあるということです。

中央ちゅうおう酪農らくのう会議かいぎの担当たんとう者しゃは、「万が一まんがいち、廃棄はいきとなれば生産せいさん者しゃの意欲いよくの低下ていかにつながり業界ぎょうかい全体ぜんたいで取り組とりくまなければならない危機きき的てきな状況じょうきょうだ。消費しょうひ者しゃにもこの状況じょうきょうを知しってもらい協力きょうりょくをお願おねがいしたい」と話はなしています。

JA全農ぜんのう消費しょうひ拡大かくだいへ新しん商品しょうひん開発かいはつ

牛乳ぎゅうにゅうの消費しょうひ拡大かくだいにつなげようと、JA全農ぜんのうは牛乳ぎゅうにゅうをたっぷり使つかった新しん商品しょうひんを開発かいはつしました。

それが、ひと缶かん275グラムのうち国産こくさんの牛乳ぎゅうにゅうを50％以上いじょう使つかったボトル缶かん入いりのミルクティー。牛乳ぎゅうにゅうの「濃こさ」は一般いっぱん的てきなミルクティーの5倍ばいほどだといいます。

今月こんげつから販売はんばいを始はじめると、SNS上じょうでは、「絶対ぜったいおいしい」「牛乳ぎゅうにゅう好すきにはたまらん」などと反響はんきょうがあり、売れ行うれゆきは好調こうちょうだということです。

すでに12万まん本ほんを販売はんばいしましたが、牛乳ぎゅうにゅうの需要じゅようが落ち込おちこむ年末ねんまつ年始ねんしにはさらに12万まん本ほんを製造せいぞうする予定よていです。

ただ、JA全農ぜんのうによりますと、これだけの量りょうのミルクティーをつくっても使用しようする牛乳ぎゅうにゅうは40トンほどで、根本こんぽん的てきな解決かいけつにはつながりません。

この商品しょうひんの販売はんばいのねらいは、直接ちょくせつ的てきな消費しょうひだけでなく、今いまの窮状きゅうじょうを知しってもらうことで牛乳ぎゅうにゅうの消費しょうひ拡大かくだいにつなげることにもあるといいます。

ボトル缶かんにプリントされたQRコードからアクセスすると、年末ねんまつ年始ねんしは牛乳ぎゅうにゅうの需要じゅようが落おちることや、処理しょりできない生乳せいにゅうが出でれば国産こくさんの牛乳ぎゅうにゅうや乳製品にゅうせいひんが手てに入はいりづらくなる可能かのう性せいがあることが紹介しょうかいされているほか、牛乳ぎゅうにゅうを使つかった料理りょうりのレシピも見みることができます。

このミルクティーを開発かいはつしたJA全農ぜんのう酪農らくのう部ぶの牛うし塚つか耕治こうじ課長かちょうは、「酪農らくのう家かが苦労くろうしてつくった牛乳ぎゅうにゅうを1滴てきたりともむだにしたくないというのが私わたしたちの思おもいです。この状況じょうきょうを多おおくの人ひとに知しってもらい、少すこしでも牛乳ぎゅうにゅうの消費しょうひ拡大かくだいに貢献こうけんできれば」と話はなしていました。

厳きびしい現状げんじょう取材しゅざいのきっかけはある情報じょうほう提供ていきょう

今回こんかい、生乳せいにゅうをめぐる現状げんじょうについて取材しゅざいを始はじめたのは、NHKの情報じょうほう提供ていきょう窓口まどぐち、「ニュースポスト」に寄よせられた投稿とうこうがきっかけでした。

情報じょうほうを寄よせてくれたのは、長野ながの県けん南牧なんもく村むらの高こう見澤みさわ忠明ただあきさん（61）。およそ50頭とうの乳牛にゅうぎゅうを飼育しいくしている酪農らくのう家かです。先月せんげつ下旬げじゅん、地元じもとのJAから年末ねんまつ年始ねんしの10日間にちかん、生乳せいにゅうの出荷しゅっか抑制よくせいに協力きょうりょくしてほしいと説明せつめいを受うけたことから、酪農らくのうの厳きびしい状況じょうきょうを多おおくの人ひとに知しってほしいと考かんがえたといいます。

高こう見澤みさわさんの悩なやみは出荷しゅっか抑制よくせいだけではありません。ことし4月つきには、配合はいごう飼料しりょうの1トンあたりの価格かかくが前まえの月つきと比くらべて上げ幅あげはばとしては過去かこ最高さいこうの6000円えん以上いじょう値上ねあがりし、その後そのごも価格かかくは上昇じょうしょうを続つづけ、これまでにおよそ1万まん円えん値上ねあがりしたといいます。

また、原油げんゆ高だかを背景はいけいに、ボイラーに使つかう灯油とうゆの価格かかくも上あがっていて、牛うしを飼育しいくするためのコストは全体ぜんたいで、去年きょねんと比くらべておよそ2割わり増ふえているということです。

高こう見澤みさわさんは、「小売こうり店てん側がわが『牛乳ぎゅうにゅうが余あまっているなら価格かかくを下さげてほしい』と言いっていると聞きくこともあり、もし、そうなればコストが上あがっているのに価格かかくは下さがり、さらなる打撃だげきになる。出荷しゅっか抑制よくせいについても、年末ねんまつ年始ねんしだけですむのかどうか、不安ふあんはつきない。できるだけ多おおくの人ひとにこの現状げんじょうを知しってもらい牛乳ぎゅうにゅうの消費しょうひが増ふえてほしい」と話はなしています。

北海道ほっかいどう消費しょうひ拡大かくだいへ “牛乳ぎゅうにゅう券けん”の無料むりょう配布はいふも

酪農らくのうが盛さかんな北海道ほっかいどうでは、牛乳ぎゅうにゅうや乳製品にゅうせいひんの消費しょうひ拡大かくだいにつなげようと、さまざまな動うごきが出でています。

人口じんこうおよそ2500人にんの鶴居つるい村むらは、地元じもと産さんの牛乳ぎゅうにゅうなどの消費しょうひ拡大かくだいを図はかろうと、2000円えん分ぶんの牛乳ぎゅうにゅう券けんをすべての村民そんみんに無料むりょうで配布はいふすることになり、10日にち郵送ゆうそうしました。村むら内ないの店みせで使つかうことができ、牛乳ぎゅうにゅうだけでなく、バターやチーズなどの乳製品にゅうせいひんも購入こうにゅうできます。

隣となりにある人口じんこうおよそ7300人にんの標茶しべちゃ町まちも、1世帯せたいあたり1000円えん分ぶんの牛乳ぎゅうにゅうの購入こうにゅう券けんを配くばることになり、来週らいしゅうから町内ちょうないすべてのおよそ3600世帯せたいに郵送ゆうそうするということです。

JAしべちゃ代表だいひょう理事りじ組合くみあい長ちょうの鈴木すずき重しげる充たかしさんは、「牛乳ぎゅうにゅうに余剰よじょうが出でれば廃棄はいきせざるをえない状況じょうきょうだ。ほかの市町村しちょうそんもぜひ同おなじような取り組とりくみをしてもらいたい」と話はなしていました。

また、標茶しべちゃ町まちで酪農らくのうを営いとなむ倉戸くらと秀之ひでゆきさんは「牛乳ぎゅうにゅうが余あまり、生産せいさんが抑制よくせいされる流ながれの中なかで、消費しょうひ者しゃに少すこしでも牛乳ぎゅうにゅうを飲のんでもらうすばらしい取り組とりくみだ」と歓迎かんげいしていました。一方いっぽう、先行さきゆきについては、「まだ生産せいさん抑制よくせいには入はいっていないので経営けいえいが厳きびしいという実感じっかんはないが、この先さきがどうなるのかという不安ふあんはある。牛乳ぎゅうにゅうの消費しょうひも含ふくめて元もとの状況じょうきょうに戻もどってくれるのがいちばんだ」と話はなしていました。