この中でゼレンスキー大統領は「日本とウクライナがお互いの自由を望む気持ちに違いはありません。日本がすぐにウクライナへの援助の手を差し伸べてくれたことに心から感謝しています」と述べました。
そのうえでロシアがウクライナの原発を攻撃したことについて「ロシアはチェルノブイリ原発を戦場にしました。被害を調査するにはロシア軍が撤退してから何年もかかるでしょう」と述べました。
そして「ウクライナではすでに数千人が犠牲になり、そのうち121人は子どもです」と述べ、多くの市民が命を落としているウクライナの惨状を理解してほしいと訴えました。
また「ロシアがサリンなどの化学兵器を使った攻撃をする可能性があると警告を受けています。もしロシアが核兵器が使用した場合、どのような対応をすべきか世界の政治家たちが議論すべき大きな課題です」と述べ、ロシアが大量破壊兵器を使用することに強い危機感を示しました。
そのうえでゼレンスキー大統領は「日本はアジアで初めて平和を取り戻すためロシアに圧力をかけてくれた」と述べ、日本の対応を評価したうえで、ロシアに対する制裁の継続を呼びかけました。
会場には岸田総理大臣や衆参両院の議長、ウクライナのコルスンスキー駐日大使のほか、各党の衆参の国会議員およそ500人が出席しました。 会場に設置された2台の大型スクリーンにゼレンスキー大統領の姿が映し出されると、出席者からは拍手が起こりました。 演説に先立って細田衆議院議長があいさつし、軍事侵攻で亡くなった人たちに哀悼の意を表したうえで「わが国の議会はウクライナと共にあり、平和を取り戻すために今後とも国際社会と一致結束して協力していく決意だ。生命の危険がある中、国際社会に支援を訴え、国民を鼓舞し続けているゼレンスキー大統領の勇敢な姿勢に改めて敬意を表する」と述べました。 そしてゼレンスキー大統領の演説が始まると、出席者は真剣な表情で聞き入っていました。 演説が終わると出席者は立ち上がって拍手を送り、ウクライナの国旗と同じ色の服装を身につけた山東参議院議長が「日本でもロシアの暴挙は絶対に許せないと、ウクライナへの支援の輪が着実に広がっている。1日も早く平和と安定を取り戻すため、私たち国会議員も全力を尽くしていく」と述べました。 衆参両院によりますと、海外の要人の国会演説は、通常、国賓などで招かれた際の歓迎行事として行われていて、オンライン形式での実施は初めてだということです。
大統領の役で出演したドラマが大ヒットしたことを受けて3年前、政治経験がないまま大統領選挙に立候補すると若者を中心に幅広い支持を集め、決選投票では70%を超える得票率で現職をやぶりました。 選挙の際、公約として掲げたのが、親ロシア派の武装勢力との戦闘が続くウクライナ東部の安定化と、ヨーロッパとの統合路線、さらに汚職の撲滅などです。さらにロシアとの対話も重視する姿勢を示していました。 しかしロシアは、ウクライナ東部で政府軍と戦闘を続ける親ロシア派の武装勢力を支援し、ロシア系住民にパスポートを発給するなどゼレンスキー政権に強い圧力をかけ続け、ウクライナ国内ではゼレンスキー大統領に対し「弱腰だ」と批判する声も上がりました。 この結果、ウクライナの世論調査機関によりますと、ゼレンスキー氏の支持率は去年、30%台から40%台と低迷していました。 しかし軍事侵攻後、ゼレンスキー大統領が首都キエフの大統領府に残ってロシアに屈しない姿勢をSNSなどで積極的に発信したところ国民の大きな共感を呼び、2月下旬の世論調査で支持率は90%台に急回復しました。 ゼレンスキー大統領はアメリカやイギリス、それに欧米各国の議会などに向けてオンライン形式で演説を重ね、プーチン政権に軍事侵攻の継続を断念させる追加の強力な経済制裁を科すよう訴えるとともに、ウクライナに対する軍事的、人道的な支援を求めています。
【イギリス】 今月8日のイギリス議会でのオンライン演説では、まずイギリスの劇作家、シェークスピアの「ハムレット」の有名な一節を引用する形で、ウクライナの状況について「生きるべきか、死ぬべきか。返事は明らかに生きるべきだ」と強調しました。そのうえで第2次世界大戦中の1940年に当時のチャーチル首相が議会で行った演説になぞらえて「われわれは決して降伏せず、決して敗北しない。どんな犠牲を払おうとも海で戦い、空で戦い、国のために戦い続ける」と訴えました。 【アメリカ】 さらにアメリカ連邦議会で16日にオンライン演説を行った際には、人種差別の撤廃を訴えたキング牧師の「私には夢がある」という歴史的な演説の一節に触れ「私には必要がある、それは、私たちの空を守ってくれること。あなた方の決意、あなた方の支援です」と述べ、ロシア軍機による攻撃から国土を防衛するため、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定することなどを求めました。 【イスラエル】 また20日のイスラエル議会の演説では、ロシアの軍事侵攻を第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺、ホロコーストになぞらえ「ロシアはいまナチスと同じことをしようとしている」と非難しました。 【ドイツ】 17日のドイツの連邦議会では「ヨーロッパには、ベルリンの壁ではない、自由と不自由を分かつ壁があり、われわれは隔てられている。私たちを助けるはずの平和のための決断がなされないたびに、この壁は大きくなっている」と訴えました。
大統領演説 衆参の国会議員約500人が出席
ゼレンスキー大統領とは
ゼレンスキー大統領 各国での演説は