中国ちゅうごく 半導体はんどうたいの材料ざいりょうなどの希少きしょう金属きんぞく きょうから輸出ゆしゅつ規制きせいを実施じっし

希少きしょう金属きんぞくのガリウムとゲルマニウムは半導体はんどうたいやLED、太陽たいよう電池でんちなど、さまざまな電子でんし部品ぶひんの製造せいぞうに使つかわれる材料ざいりょうで、ガリウムは中国ちゅうごくの生産せいさんが世界せかいの9割わり以上いじょう、ゲルマニウムは埋蔵まいぞう量りょうが世界せかいのおよそ4割わりを占しめています。

中国ちゅうごく政府せいふはきょうから「輸出ゆしゅつ管理かんり法ほう」などに基もとづいて、ガリウムとゲルマニウムの関連かんれん品目ひんもくについて輸出ゆしゅつ規制きせいを実施じっしします。

関連かんれん品目ひんもくを輸出ゆしゅつする企業きぎょうに対にたいし、最終さいしゅう的てきな利用りよう者しゃや用途ようとを示しめすなどしたうえで、政府せいふの審査しんさを受うけて許可きょかを得えることを義務ぎむづけるとしていて、違反いはんした場合ばあいには処罰しょばつするとしています。

今回こんかいの措置そちについて中国ちゅうごく政府せいふは、国家こっかの安全あんぜんと利益りえきを守まもるためだとしていて、中国ちゅうごくに対にたいして、先端せんたん半導体はんどうたいや製造せいぞう装置そうちの輸出ゆしゅつ規制きせいを行おこなっているアメリカや、先端せんたん半導体はんどうたいの製造せいぞう装置そうちの輸出ゆしゅつ管理かんりを7月つき23日にちから厳きびしくした日本にっぽんなどをけん制けんせいするねらいがあるとみられます。

これらの希少きしょう金属きんぞくは、日本にっぽん企業きぎょうも中国ちゅうごくから多おおく輸入ゆにゅうしています。

中国ちゅうごく政府せいふの審査しんさが厳きびしいものになれば、輸入ゆにゅうが滞とどこおることも予想よそうされ、さまざまな製品せいひんのサプライチェーン＝供給きょうきゅう網もうに影響えいきょうが及およぶ可能かのう性せいがあり、懸念けねんが出でています。

「ガリウム」とは

ガリウムは、アルミニウムなどの採掘さいくつの副ふく産物さんぶつとして抽出ちゅうしゅつされ、LEDや半導体はんどうたいの材料ざいりょうなどとして使つかわれています。

中なかでも、関連かんれん品目ひんもくとして輸出ゆしゅつ管理かんりの対象たいしょうとなっている窒化かガリウムは、電気でんき自動車じどうしゃ用ようのパワー半導体はんどうたいなど、高性能こうせいのう半導体はんどうたい向むけとして、需要じゅようの拡大かくだいが期待きたいされています。

アメリカ地質ちしつ調査ちょうさ所しょによりますと、去年きょねん、世界せかいで生産せいさんされたガリウムは550トンで、そのうちの98％余あまりにあたる540トンを中国ちゅうごくが生産せいさんしています。

「ゲルマニウム」とは

ゲルマニウムは、光ファイバーひかりふぁいば-や太陽たいよう電池でんち、それに半導体はんどうたいの材料ざいりょうなどとして使つかわれていて、アメリカ地質ちしつ調査ちょうさ所しょによりますと、2016年ねん時点じてんの埋蔵まいぞう量りょうでみると、中国ちゅうごくは世界せかいの41％を占しめ、アメリカに次ついで2位いとなっています。

今回こんかいの措置そちについて中国ちゅうごく政府せいふは、輸出ゆしゅつの禁止きんしではなく、規定きていに適合てきごうすれば輸出ゆしゅつを許可きょかするものだとしていて、企業きぎょうの間まで、サプライチェーンへの影響えいきょうが懸念けねんされる中なか、中国ちゅうごく政府せいふの対応たいおうがどこまで厳きびしいものになるかが注目ちゅうもくされています。

経済けいざい産業さんぎょう省しょう 国内こくないメーカーへの影響えいきょう注視ちゅうし

中国ちゅうごく政府せいふが新あらたに輸出ゆしゅつ規制きせいの対象たいしょうとする希少きしょう金属きんぞくのガリウムとゲルマニウムは、日本にっぽんで半導体はんどうたいの素材そざいなどに幅広はばひろく使つかわれていて、経済けいざい産業さんぎょう省しょうは、調達ちょうたつしている国内こくないメーカーに聞き取ききとり調査ちょうさを行おこなうなど影響えいきょうを注視ちゅうししています。

【ガリウム】

このうちガリウムは、半導体はんどうたいの素材そざいとして使つかわれ、携帯けいたい電話でんわやLED、液晶えきしょうテレビなど幅広はばひろい用途ようとで活用かつようされています。

JOGMEC＝エネルギー・金属きんぞく鉱物こうぶつ資源しげん機構きこうによりますと、2017年ねんのデータでは、日本にっぽん国内こくないで供給きょうきゅうされた165トンのうち、半数はんすう以上いじょうの94トンを輸入ゆにゅうに頼たよっています。

輸入ゆにゅう先さきのシェアは、

▽中国ちゅうごくが69％と最もっとも高たかく、

次ついで、

▽ロシアの6％

▽アメリカや台湾たいわん、それにドイツが5％となっています。

【ゲルマニウム】

一方いっぽう、ゲルマニウムは、半導体はんどうたいの基板きばんとなるウエハーや光ファイバーひかりふぁいば-などの素材そざいとして使つかわれ、供給きょうきゅう量りょうのほぼすべてを輸入ゆにゅうに依存いぞんしています。

このうち、ウエハーなどに使つかわれるものは、2020年ねんのデータでは、日本にっぽんに4.6トンが輸入ゆにゅうされています。

輸入ゆにゅう先さきのシェアは、

▽中国ちゅうごくが71％と最もっとも高たかく、

次ついで、

▽アメリカが22％となっています。

いずれも、中国ちゅうごくへの依存いぞん度どが高たかいことから、経済けいざい産業さんぎょう省しょうは、新あらたな輸出ゆしゅつ規制きせいが国内こくないメーカーの調達ちょうたつに及およぼす影響えいきょうを懸念けねんしています。

これまでの各社かくしゃへの聞き取ききとり調査ちょうさでは、ガリウム、ゲルマニウムのいずれも、数すうか月かげつ分ぶんの在庫ざいこを確保かくほできているということです。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうは今後こんご、中国ちゅうごくの輸出ゆしゅつ規制きせいの運用うんようを見極みきわめながら、国内こくないでのリサイクルの促進そくしんや、中国ちゅうごく以外いがいの輸入ゆにゅう先さきの確保かくほを支援しえんすることなどを検討けんとうしていくとしています。

ガリウム使用しようの日本にっぽん企業きぎょう各社かくしゃは

ガリウムは、中国ちゅうごくが世界せかい最大さいだいの産出さんしゅつ国こくで、特とくに日本にっぽんメーカーの間までは世界せかいで開発かいはつ競争きょうそうが激はげしさを増ます、次世代じせだいのパワー半導体はんどうたいの材料ざいりょうとしても使つかわれます。

▽大手おおて化学かがくメーカーの三菱みつびしケミカルは、半導体はんどうたいの基板きばんの生産せいさんなどでガリウムを使つかっています。

国内こくないで一定いってい程度ていどの在庫ざいこを確保かくほしていることから、短期たんき的てきには影響えいきょうは出でないとみています。しかし、中ちゅう長期ちょうき的てきな見通みとおしが立たたないことから、輸出ゆしゅつ規制きせいの具体ぐたい的てきな内容ないようについて情報じょうほう収集しゅうしゅうを進すすめています。

▽DOWAホールディングスは、子会社こがいしゃが高こう純度じゅんどのガリウムを手てがけていて、材料ざいりょうのおよそ半分はんぶんは主おもに中国ちゅうごくから輸入ゆにゅうし、残のこり半分はんぶんはリサイクル由来ゆらいの材料ざいりょうを使つかっています。供給きょうきゅう先さきは国内こくないの半導体はんどうたいメーカーなどで、今回こんかいの影響えいきょうについては確認かくにん中ちゅうだとしています。

▽半導体はんどうたいメーカーのロームは、ガリウムを材料ざいりょうに使つかう高性能こうせいのうのパワー半導体はんどうたいを開発かいはつし、試作しさく品ひんの供給きょうきゅうを始はじめています。

今いまの時点じてんで影響えいきょうはないものの、将来しょうらいの見通みとおしを分析ぶんせきしています。

中国ちゅうごくからガリウム輸入ゆにゅう 都内とないの商社しょうしゃは

中国ちゅうごくからガリウムを輸入ゆにゅうし、日本にっぽんの取引とりひき先さきに卸おろしている都内とないの商社しょうしゃは、中国ちゅうごく政府せいふによる輸出ゆしゅつ規制きせいの詳細しょうさいがどうなるのか情報じょうほうを得えられていません。

この商社しょうしゃは、ガリウムの地金じがねや化合かごう物ぶつ、それにガリウムを含ふくむ半導体はんどうたい材料ざいりょうなどを取り扱とりあつかっています。

現地げんちの担当たんとう者しゃが中国ちゅうごくの当局とうきょくに直接ちょくせつ、確認かくにんしたところ、今回こんかいの輸出ゆしゅつ規制きせいが始はじまると、

▽これまでの手続てつづきにはなかった申請しんせい項目こうもくが設もうけられたり、

▽提出ていしゅつする書類しょるいの数かずが増ふえたりするなど、

輸出ゆしゅつ手続てつづきが複雑ふくざつになるという説明せつめいを受うけたということです。

中国ちゅうごく政府せいふの発表はっぴょうから1週間しゅうかんほどたった7月つき中旬ちゅうじゅん、輸入ゆにゅうの担当たんとう者しゃは、半導体はんどうたい材料ざいりょうメーカーなどとの打ち合うちあわせを終おえて事務所じむしょに戻もどり、社長しゃちょうへの報告ほうこくや取引とりひき先さきからのメールの対応たいおうに追おわれていました。

日本にっぽんの取引とりひき先さきから届とどいたメールには、ふだんの発注はっちゅうの5倍ばいから6倍ばいにあたる200キロの原料げんりょうを1度どに送おくってほしいという依頼いらいが書かかれていました。

中国ちゅうごく政府せいふが輸出ゆしゅつ規制きせいを明あきらかにした直後ちょくごから、日本にっぽんの多おおくの取引とりひき先さきから調達ちょうたつを増ふやしたいという連絡れんらくが相次あいついでいます。

しかし、輸出ゆしゅつ規制きせいが始はじまるまでの1か月かげつ間かんで、確保かくほできる量りょうは限かぎられているといいます。

この商社しょうしゃでは、年間ねんかんの売り上うりあげのおよそ10億おく円えんのうち、6割わりから7割わりをガリウム関連かんれんが占しめていることから、今後こんごの中国ちゅうごく政府せいふの出方でかたしだいで、大おおきな影響えいきょうが出でることを懸念けねんしています。

輸入ゆにゅう商社しょうしゃ「ウイング」の尉じょう遅おそ若わか旭あさひさんは「ガリウムが生命せいめい線せんなので非常ひじょうに心配しんぱいしています。政府せいふがどれだけ厳きびしく管理かんりするのか、どのぐらいの期間きかんで許可きょかが取とれるかというのは、全まったく見みえない。こういう主しゅ原料げんりょうは、厳きびしく管理かんりすると当然とうぜん、世界せかいのサプライチェーンの大だい混乱こんらんにつながる。8月つきから、いろいろな業界ぎょうかいで混乱こんらんが起おきると思おもいますが、規制きせいが緩ゆるくなることを期待きたいするしかないです」と話はなしていました。

中国ちゅうごくのねらいは

中国ちゅうごくでは、習近平ちから国家こっか主席しゅせきが「国際こくさい的てきなサプライチェーンの中国ちゅうごくへの依存いぞん度どを高たかめることで、外国がいこくによる供給きょうきゅう網もうの遮断しゃだんに対にたいし、強力きょうりょくな反撃はんげきと抑止よくし力りょくを形成けいせいする」という方針ほうしんを示しめしています。

アメリカなどを念頭ねんとうに、外国がいこくが中国ちゅうごくに依存いぞんする資源しげんなどを、いわば「武器ぶき」として用もちいるねらいとみられ、3年ねん前まえには、安全あんぜん保障ほしょうに関かかわる製品せいひんなどの輸出ゆしゅつ規制きせいを強化きょうかする「輸出ゆしゅつ管理かんり法ほう」を施行しこうしました。

今回こんかいの措置そちも、この法律ほうりつなどに基もとづくものです。

中国ちゅうごく商務省しょうむしょうの束たば※カク※テイ報道ほうどう官かんは、7月つきの記者きしゃ会見かいけんで輸出ゆしゅつ管理かんりについて、「目的もくてきは、国家こっか安全あんぜんを守まもることで、国際こくさい義務ぎむをよりよく履行りこうするためだ。輸出ゆしゅつの禁止きんしではなく関連かんれんの規定きていに適合てきごうすれば輸出ゆしゅつを許可きょかするもので、特定とくていの国くにを対象たいしょうにしてはいない」と述のべています。

一方いっぽうで、アメリカが半導体はんどうたいの輸出ゆしゅつ規制きせいの強化きょうかを検討けんとうしていると報ほうじられていることについては、「中国ちゅうごくの半導体はんどうたいに対にたいする圧力あつりょくと制限せいげんを継続けいぞく的てきに強つよめていて、世界せかいの半導体はんどうたい市場しじょうを人為じんい的てきに分裂ぶんれつするものだ。アメリカの手法しゅほうは中国ちゅうごく企業きぎょうの正当せいとうな権益けんえきを損そこなうばかりだけではなく、多おおくの国くにと地域ちいきの利益りえきにも損害そんがいを与あたえている」と強つよく反発はんぱつしました。

また、中国ちゅうごくの政府せいふ系けいの英字えいじ紙しは元もと商務しょうむ次官じかんがインタビューの中なかで、希少きしょう金属きんぞくの輸出ゆしゅつ規制きせいについて「反撃はんげきの始はじまりにすぎない。中国ちゅうごくに対にたいするハイテク分野ぶんやの規制きせいが強化きょうかされるなら、中国ちゅうごくの対抗たいこう措置そちもさらに強化きょうかされる」と述のべたと伝つたえていて、中国ちゅうごく側がわには、アメリカのほか、半導体はんどうたい関連かんれん製品せいひんの輸出ゆしゅつ管理かんりを厳きびしくする日本にっぽんやオランダなどをけん制けんせいするねらいがあるという見方みかたが強つよまっています。

※「カク」は「王おう」に「玉たま」、※「テイ」は「女おんな」に「亭ちん」。

米べいの“中国ちゅうごく向むけの半導体はんどうたい輸出ゆしゅつに新あらたな規制きせい”で

中国ちゅうごく向むけの半導体はんどうたい輸出ゆしゅつをめぐって、アメリカのバイデン政権せいけんは去年きょねん10月つき、新あらたな規制きせいを行おこなうことを明あきらかにしました。

対象たいしょうは、AI＝人工じんこう知能ちのうやスーパーコンピューターなどに使つかわれ、大量たいりょう破壊はかい兵器へいきの開発かいはつや、最新さいしんの軍事ぐんじシステムなどに転用てんようが可能かのうな先端せんたん半導体はんどうたいや製造せいぞう装置そうちです。

アメリカ政府せいふは、半導体はんどうたいの材料ざいりょうに回路かいろを焼き付やきつける「露光ろこう装置そうち」などの製造せいぞう装置そうちで高たかいシェアを持もつ日本にっぽんやオランダに対にたいしても協力きょうりょくを求もとめました。

これをうけて、

▽日本にっぽん政府せいふは、「露光ろこう装置そうち」など23品目ひんもくの輸出ゆしゅつ管理かんりを厳きびしくする措置そちを7月つきから開始かいし。

▽オランダ政府せいふも、先端せんたん半導体はんどうたいの製造せいぞう装置そうちについて、輸出ゆしゅつ規制きせいの強化きょうかを9月つきから始はじめるとしています。

規制きせい強化きょうかの背景はいけいにあるのが、ハイテク分野ぶんやでの米べい中ちゅうの覇権はけん争あらそいです。

アメリカは、去年きょねん10月つきに発表はっぴょうした国家こっか安全あんぜん保障ほしょう戦略せんりゃくで、中国ちゅうごくを「国際こくさい秩序ちつじょを変かえる意思いしと能力のうりょくを兼ね備かねそなえた唯一ゆいいつの競合きょうごう国こく」と位置いちづけ、軍事ぐんじ、経済けいざい、科学かがく技術ぎじゅつなどの分野ぶんやで総合そうごう的てきな抑止よくし力りょくを構築こうちくする方針ほうしんを示しめしています。

このうち半導体はんどうたいについては、去年きょねん8月つき、520億おくドル以上いじょう、日本にっぽん円えんで7兆ちょう円えん余あまりを投とうじて、アメリカ国内こくないにおける半導体はんどうたいの生産せいさんや開発かいはつを補助ほじょ金きんなどで後押あとおしする法律ほうりつを成立せいりつさせました。

中国ちゅうごくが国家こっか主導しゅどうで、ばく大ばくだいな予算よさんを使つかい半導体はんどうたいの技術ぎじゅつ開発かいはつを進すすめていることに対抗たいこうするねらいで、ことし2月つきには補助ほじょ金きんの申請しんせい受け付うけつけを始はじめました。

補助ほじょ金きんを受うける企業きぎょうは、今後こんご10年間ねんかん、中国ちゅうごくで新あらたな関連かんれんの投資とうしを行おこなわないことを条件じょうけんとするなど、半導体はんどうたいをめぐって中国ちゅうごくの製造せいぞう能力のうりょくを抑おさえこむ姿勢しせいを鮮明せんめいにしています。