投げては先発の吉田輝星投手が相手打線にヒット9本を打たれましたが、要所を抑えて5試合連続で完投し、金足農業が2対1で競り勝って、秋田県勢として第1回大会の秋田中学以来となる103年ぶりの決勝進出を果たしました。
日大三高は終盤の8回にヒット3本を集めて1点差に迫り、9回も得点圏にランナーを進めましたが、あと1本が出ませんでした。
金足農 中泉監督「自分たちの野球出し切りたい」
秋田県勢として103年ぶりに決勝に進んだ金足農業の中泉一豊監督は、「選手たちの頑張り以外、なにものでもありません。特に吉田投手はピンチでもあと1本を許さず、本当によく踏ん張ってくれました」とたたえました。
そのうえで21日の決勝に向けて、「まだ実感はないが、悔いが残らないよう今までどおり、自分たちの野球を出し切りたい」と興奮した様子で話していました。
吉田投手「あすは全力を出し切って」
準決勝も完投し、秋田県勢として103年ぶりの決勝進出の原動力となった金足農業のエース、吉田輝星投手は「立ち上がりの1回に上位のバッターをおさえられたことが自信につながりました」と振り返りました。
そのうえで9回のピンチについては「一塁と二塁にランナーがいてみんなの焦りを感じました。今まではみんなのバッティングに助けてもらってきたので、今度は自分がチームのために頑張ろうと、いつも以上に集中しました」と話していました。
また21日の決勝については「決勝が楽しみです。秋田の期待を背負って東北勢で初めて優勝旗を持ち帰るためにも、あすは全力を出し切って優勝したいです」と意気込みを語りました。
菊地亮太捕手「テンポよく抑えられた」
菊地亮太選手は、吉田投手のピッチングについて「ストレートに強い相手打線に対し、変化球を徹底して低めに集めることができました。中盤以降は調子が上がり、打たせて取ることでテンポよく抑えられたと思います」とエースの好投をたたえていました。
4番・打川選手「なんとか食らいついた」
1回に先制タイムリーヒットを打った4番・打川和輝選手は「これまでは自分のあとを打つ選手がホームランやスクイズで試合を決めていたので、きょうは絶対に自分が打って勝利に貢献したいという気持ちでした。なんとか食らいついた結果、タイムリーになってうれしいです」と話していました。
追加点・大友選手「知らない人まで応援してくれる」
5回に追加点となるタイムリーヒットを打った金足農業の大友朝陽選手は「甲子園で勝ち上がるにつれ、知らない人たちまで金足農業を応援してくれているのが分かります。甲子園で仲間たちと校歌を何度も歌えて最高の気持ちです」とうれしそうに話していました。
金足農 34年前ベスト4時の主将と監督は
34年前に金足農業がベスト4に進出したときのキャプテンだった長谷川寿さん(51)は、甲子園のアルプススタンドで後輩たちを応援していました。試合が始まる前、「金足農業は34年間ずっと、『最高成績はベスト4』と言われ続けているので、きょう、自分たちの成績を塗り替えほしい」と話していました。
また、34年前の甲子園の準決勝で対戦し、20日の始球式で投手を務めたPL学園のOB、桑田真澄さん(50)については「投げている姿を見て、34年前と変わらないなと思った。桑田さんの投げるとき、バッターボックスに金足農業の選手が立っているのは奇遇だなと感じた」と話していました。
また、34年前、金足農業がベスト4に進出したときの監督だった嶋崎久美さん(70)は、試合が始まる前、「自分たちのつくった最高成績を今の選手たちが塗り替えてくれるのを楽しみにしている。思い返せば、34年前に準決勝で負けたのも8月20日だったので、きょうは何としても勝ってほしい」と話していました。
そして試合終了後は「うれしいし、信じられない。あしたの決勝を楽しみにしている」と話し、笑顔で喜びをあらわにしていました。
吉田投手の父「よくやったと言ってやりたい」
甲子園のアルプススタンドで見守っていた金足農業のエース・吉田輝星投手の父親の吉田正樹さん(42)は試合終了直後、「決勝に進出してくれて最高にうれしい。息子にはよくやったと言ってやりたい。次の戦いでは、優勝を目指してしっかりと投げ切ってほしい」と話していました。
日大三 小倉監督「粘りの野球はできた」
敗れた日大三高の小倉全由監督は「相手の吉田投手はすばらしいピッチングだった。本調子ではなかったかもしれないが、低めの変化球をバッターが振らされてしまい、ピンチになるとギアを上げて力のあるストレートに押されてしまった。相手の打線は、確実にランナーを先の塁に進めてきて、しぶとくバットに当てるしつこい攻撃で点を取られてしまった」と振り返りました。
そのうえで「終盤に得点するなど、日大三高らしい粘りの野球はできた。甲子園でベスト4まで勝ち上がり、選手たちはよくやってくれた」とたたえていました。
日置主将「最後までついてきてくれてありがとう」
敗れた日大三高のキャプテン、日置航選手は「優勝して監督を日本一にするという目標を達成できませんでした。相手の吉田投手は、試合の終盤まで体力が落ちず、自分は8回のチャンスでヒットを打つことができずに悔しいです」と声を詰まらせながら振り返りました。
そして、「甲子園は楽しい場所で、後輩は来年も勝ち上がって優勝してほしいです。仲間には、最後までついてきてくれてありがとうと言いたいです」と話していました。
先発・廣澤投手「自信持って投げ続けられた」
先発した日大三高の廣澤優投手は「勝ったら、目標にしていた決勝の舞台だったので、”打たれても粘って絶対に勝ってやる”と思ってマウンドに立ちました」と心境を振り返りました。
そして1回に先制を許した場面については「厳しいコースにスライダーを投げてフライになったので、打ち取ったと思いましたが、ポテンヒットとなり、気持ちが沈みました。しかし、野手陣が”全然打たれていないからどんどん投げていけ”と声をかけてくれて、自信を持って投げ続けることができました」と話していました。
河村投手「向うの実力が上だった」
2人目として登板した日大三高の河村唯人投手は「2点目を取られた5回はツメの甘さが出てしまい、打たれた自分の責任です。コースに投げ分ける持ち味を出すことができませんでした。向こうの実力が上でした」と振り返りました。
そして、「甲子園のマウンドは、大きな声援が後押ししてくれて、力が出る場所でした。最後は悔しい結果に終わりましたが、自分もチームも成長することができたと思います」と話していました。
4番・大塚選手「最後まで打ち崩せなかった」
敗れた日大三高の4番・大塚晃平選手は、8回のタイムリーヒットについて、「ヒットでつないでくれたみんなのために打とうという気持ちで打席に立ちました。2ストライクと追い込まれましたが、来たボールに食らいついてヒットにすることができた」と振り返りました。
そのうえで金足農業の吉田投手については、「丁寧にコースに投げ分けていて、低めの変化球に手を出してしまいました。いいピッチャーというのはわかっていましたが、最後まで打ち崩すことができませんでした」と悔しそうに話していました。
高木選手「対応しきれなかった」
6番レフトで出場し、2回にツーベースヒットを打った日大三高の高木翔己選手は、金足農業の吉田投手について、「終盤になって疲れが出ているなと思っても、冷静で余裕のあるピッチングをして、すごい投手でした」と振り返りました。
そして「いつもなら連続ヒットであと1点2点、追加点を取れる場面でも、しぶといピッチングで抑えられてしまった。打線が吉田投手のピッチングに対応しきれませんでした」と悔しさをにじませました。
日大三 スタンドからは監督の孫も声援送る
日大三高のアルプススタンドはおよそ1800人の大応援団で埋まりました。
その中で、ひときわ熱心に声援を送っていたのが小学5年生の小倉大宗君、10歳です。
名前からもわかるとおり、チームを率いる小倉全由監督の孫で、みずからもリトルリーグでプレーする野球少年です。
日大三高の合宿の時には選手たちと一緒にお風呂に入ることもあり、憧れの甲子園の舞台で躍動する選手たちは身近なお兄さん的な存在でした。
大宗くんは「選手たちは憧れの存在です。きょう勝てば決勝なので選手たちには思いきりプレーしてほしいです。部員の皆さんと一緒に盛り上がる応援をしたいです」と声援を送っていました。
「あすは絶対優勝できる」
秋田市中心部の広場「エリアなかいち」では、900人を超える人が、大型スクリーンで試合を見守り、金足農業が得点するたびに、大きな拍手と歓声が上がりました。
5回に5番の大友朝陽選手のタイムリーヒットで2点目が入ると、秋田市内から訪れた男性が「2点差ではまだまだ油断できないので、このまま守り抜いてほしい」と話していました。
そして、9回裏、ランナー2人を出しながらも、エースの吉田輝星投手が最後のバッターをうちとると、集まった人たちは肩を組んだり涙を流したりして喜び合っていました。
金足農業出身の女性は、「本当にうれしい。後輩たちに感動をありがとうと言いたいです。あすは絶対優勝できると信じています」と話していました。