値上ねあげラッシュも物価ぶっか上昇じょうしょう一いち時じ的てき？ノルムって？【経済けいざいコラム】

物価ぶっかが上あがらないのは過去かこの経験けいけんによってデフレ期待きたいが深ふかく定着ていちゃくしてしまっているためだというのが日銀にちぎんの総括そうかつです。

過去かこの経験けいけんで培つちかわれた規範きはん、社会しゃかいに根ねづいた考え方かんがえかたのことを「ノルム」と言いいますが、人々ひとびとの物価ぶっか観かんをあらわす際さいに最近さいきん、日銀にちぎん内ないでよく飛び交とびかっていることばです。

例たとえば黒田くろだ総裁そうさいは7月つきの記者きしゃ会見かいけんでこう発言はつげんしています。

「企業きぎょうに価格かかく転嫁てんかの動うごきが進すすんでいるが、あくまで輸入ゆにゅう物価ぶっかの転嫁てんかだ。従来じゅうらいからのノルムが完全かんぜんに変かわったとは見みていない。まだ不十分ふじゅうぶんだ」

10月つき3日にちに発表はっぴょうされた日銀にちぎんの短観たんかんでは企業きぎょうの5年ねん後ごの物価ぶっかの見通みとおしが初はじめて2％に達たっしましたが、日銀にちぎんのある幹部かんぶは「変化へんかの兆きざしはあるが、ノルムが変かわったとみるのは時期じき尚早しょうそうだ」と慎重しんちょうな見方みかたを示しめします。

特とくにエネルギー関連かんれんの品目ひんもくが目立めだちます。

一方いっぽう、グラフの中央ちゅうおう。

上昇じょうしょう率りつがゼロのところに大おおきな山やまがあります。

これは価格かかくが全まったく動うごいていない品目ひんもくです。

今年ことし4月つき以降いこう、物価ぶっか上昇じょうしょう率りつは2％を上回うわまわっていますが、全体ぜんたいの3割わりから4割わり程度ていどの品目ひんもくは依然いぜんとして価格かかくが変化へんかしていません。

欧米おうべいとは大おおきく異ことなるといいます。

渡辺わたなべ教授きょうじゅ

「欧米おうべいは幅広はばひろい商品しょうひんやサービスが値上ねあがりする急性きゅうせいインフレが深刻しんこくで中央ちゅうおう銀行ぎんこうが利上りあげで対応たいおうしている。一方いっぽうで日本にっぽんは海外かいがいからもたらされた急性きゅうせいインフレと、従来じゅうらいからの慢性まんせいデフレが同居どうきょしている。日本にっぽんでは原材料げんざいりょう費ひの上昇じょうしょうを転嫁てんかする動うごきはあるが、欧米おうべいのように賃金ちんぎん上昇じょうしょうを転嫁てんかする動うごきは見みられず、人件じんけん費ひの割合わりあいが高たかいサービス関連かんれんを中心ちゅうしんに価格かかくは据え置すえおかれたままだ」

その一方いっぽうで日本にっぽんの消費しょうひ者しゃの意識いしきには変化へんかの兆きざしがあるといいます。

渡辺わたなべ教授きょうじゅのアンケート調査ちょうさによると、欧米おうべいに比くらべて日本にっぽんの消費しょうひ者しゃは値上ねあげに対にたいしてシビアだといいます。

馴染なじみのスーパーで10％の値上ねあげが行おこなわれた場合ばあいどうするかという質問しつもんに対にたいして、日本にっぽんでは去年きょねん8月つきの調査ちょうさで57％の人ひとがほかの店みせに移うつると回答かいとうしました。

アメリカやカナダ、イギリス、ドイツでは馴染なじみの店みせで買い物かいものを続つづけるという回答かいとうが多おおく他ほかの店みせに移うつるのは3割わりから4割わりでしたが、日本にっぽんだけが半数はんすうを超こえました。

ただ今年ことし5月つきの調査ちょうさでは、日本にっぽんでも他たの店みせに移うつるという人ひとは44％に減へり、欧米おうべい各国かっこくと同おなじ水準すいじゅんとなりました。

身の回みのまわりで値上ねあげが相次あいつぐ中なかで諦あきらめにも似にた気持きもちで、値上ねあげを受け入うけいれざるを得えない状況じょうきょうにあるのではないかといいます。

渡辺わたなべ教授きょうじゅは今後こんごの物価ぶっか動向どうこうを見みる上うえでカギはやはり賃金ちんぎんだといいます。

渡辺わたなべ教授きょうじゅ

「急性きゅうせいインフレをきっかけに慢性まんせいデフレが是正ぜせいされる可能かのう性せいはあり、原材料げんざいりょう高だかだけでなく人件じんけん費ひも価格かかく転嫁てんかする動うごきが起おこり、賃上ちんあげにつながるかがポイントだ。これまでの原材料げんざいりょう高だかや円えん安やす局面きょくめんでは人件じんけん費ひはコストカットの対象たいしょうになりがちだったが、それでは商品しょうひん開発かいはつやサービスの創意そうい工夫くふうは生うまれにくく競争きょうそう力りょくは高たかまらない。賃金ちんぎんについて幅広はばひろい議論ぎろんが必要ひつようだ」

相次あいつぐ値上ねあげで家計かけいの負担ふたんは増ましています。

急性きゅうせいインフレをきっかけに賃上ちんあげの流ながれにつながり、長年ながねん日本にっぽん経済けいざいを苦くるしめてきた慢性まんせいデフレから脱だっすることはできるのか。

そして日銀にちぎんの言いう“ノルム”に変化へんかがあらわれるのか。

物価ぶっか上昇じょうしょうが経済けいざいの好こう循環じゅんかんを生み出うみだす形かたちになるのか注目ちゅうもくしていきたいと思おもいます。

この会合かいごうでFRBは3回かい連続れんぞくで0.75％という異例いれいの利上りあげに踏み切ふみきりましたが、どのようなやりとりがあったのか。

また日本にっぽん時間じかんの13日にち夜よるには、今後こんごのアメリカの利上りあげを見通みとおす上うえで重要じゅうような消費しょうひ者しゃ物価ぶっか指数しすうの公表こうひょうもあります。