パーキンソン病は手足が震えたり、筋肉がこわばったりして体が動かしにくくなる難病で、脳内で体を動かす指令を送る役割を担う神経伝達物質の「ドーパミン」を作り出す神経細胞が減少することで発症します。
パーキンソン病の治療では、不足するドーパミンを補うための薬やドーパミンの作用を強める薬が使われていますが、症状を緩和したり、悪化を遅らせたりする効果はあるものの、根本的な治療法は開発されていません。
今回、治験が始まったパーキンソン病の遺伝子治療は症状を改善させる効果を継続させることを目指していて、病気の進行で薬の効果が弱くなった患者の前頭部に小さな穴を開け、大脳の「被殻」と呼ばれる部分に直接、遺伝子を注入します。
遺伝子を「アデノ随伴ウイルス」という人体に無害なウイルスを使って、被殻の中にあるドーパミンを受け取る神経細胞に届けることで、この細胞でドーパミンが継続的に作られるようにするということです。
パーキンソン病の治療については今回の治験以外にも根本的な治療を目指す研究が国内外で進められていて、京都大学のグループはヒトのiPS細胞から神経細胞の元となる細胞を作り出し、患者の脳に移植する臨床試験を4年前から実施し、安全性や有効性の検証を進めています。
また、患者の脳内の神経細胞に蓄積する「αシヌクレイン」と呼ばれる異常なたんぱく質が神経細胞の減少に関係があると考えられていることから、欧米や日本の製薬会社はこのたんぱく質を取り除く抗体医薬などの開発を進めています。