具体ぐたい的てきには、医療いりょう品ひんなどを囲かこい込こむために輸出ゆしゅつ規制きせいをしないようにすることや先進せんしん国こくの製薬せいやく会社かいしゃが保有ほゆうするワクチンの特許とっきょを新興しんこう国こくにも使つかえるよう開放かいほうすることなどです。

おととし11月つきから議論ぎろんが始はじまりましたが、製薬せいやく会社かいしゃの意向いこうや各国かっこく政府せいふの思惑おもわくなど複雑ふくざつな利害りがい関係かんけいを背景はいけいに交渉こうしょうは難航なんこうしていて、合意ごういに向むけた調整ちょうせいが続つづいています。

ルールに基もとづく貿易ぼうえき紛争ふんそう解決かいけつを通をつうじて長年ながねん、自由じゆう貿易ぼうえきの安定あんてい性せいを維持いじすることに貢献こうけんしてきました。

第だい1審しんに当にあたる「パネル」と、最終さいしゅう審しんに当にあたる「上級じょうきゅう委員いいん会かい」がありますが、この「上級じょうきゅう委員いいん会かい」が事実じじつ上じょう機能きのう停止ていしに陥おちいっています。

アメリカの前まえのトランプ政権せいけんが加盟かめい国こくの中国ちゅうごくが不当ふとうに優遇ゆうぐうされているなどとして不満ふまんを示しめしたことを背景はいけいに「上級じょうきゅう委員いいん会かい」の新あたらしい委員いいんの選任せんにんに反対はんたいし、2019年ねん末まつから最終さいしゅう審しんでの貿易ぼうえき紛争ふんそうの解決かいけつができない状況じょうきょうに陥おちいっているのです。

アメリカの理解りかいを得えて、いかにWTOの重要じゅうような役割やくわりの回復かいふくに向むけた道筋みちすじをつけられるかが注目ちゅうもくされています。

そして、ロシアやウクライナからの食料しょくりょうに依存いぞんする中東ちゅうとうやアフリカの一部いちぶの国くにでは食料しょくりょう不足ふそくが起おきています。

WTOのオコンジョイウェアラ事務じむ局長きょくちょうは、ことし4月つきに開ひらいた記者きしゃ会見かいけんで「食料しょくりょうや肥料ひりょうなどの価格かかくの急騰きゅうとうで潜在せんざい的てきな食料しょくりょう危機ききが迫せまっている」として、特とくに発展はってん途上とじょう国こくに大おおきな打撃だげきを与あたえかねないと警告けいこくしています。

食料しょくりょう危機ききが深刻しんこく化かしやすい国々くにぐにへの影響えいきょうを最小さいしょう限げんに抑おさえるため、WTOは今回こんかいの会議かいぎで「不ふ必要ひつような輸出ゆしゅつ規制きせいをしない」といったメッセージを打ち出うちだせるかどうかが注目ちゅうもくされています。

2001年ねんから交渉こうしょうが始はじまり、2015年ねんに国連こくれんで採択さいたくされた「持続じぞく可能かのうな開発かいはつ目標もくひょう」SDGsで過剰かじょう漁獲ぎょかくにつながる漁業ぎょぎょう補助ほじょ金きんの禁止きんしが掲かかげられたことでWTOでも交渉こうしょうが活発かっぱつ化かしました。しかし交渉こうしょう開始かいしから20年ねん余あまりたった今たったいまも合意ごういに達たっしていません。

日本にっぽんやEU＝ヨーロッパ連合れんごうなどは水産すいさん資源しげんの乱獲らんかくにつながる漁業ぎょぎょう補助ほじょ金きんは禁止きんしすべきだとする一方いっぽう、適切てきせつな資源しげん管理かんりを行おこなっている場合ばあいの補助ほじょ金きんについては、禁止きんしする必要ひつようはないと主張しゅちょうしています。

これに対にたいして、発展はってん途上とじょう国こくなどからは資源しげんを管理かんりする能力のうりょくには国くにによって差さがあり、必要ひつような補助ほじょ金きんまで禁止きんしされるのではないかという懸念けねんから、優遇ゆうぐう措置そちを求もとめる声こえも多おおく出でています。意見いけんの隔へだたりを埋うめることができるのかが焦点しょうてんです。

その前身ぜんしんはGATT＝「関税かんぜいおよび貿易ぼうえきに関にかんする一般いっぱん協定きょうてい」。1930年代ねんだいの不況ふきょうのあと、世界せかい経済けいざいのブロック化かが進すすみ、各国かっこくが保護ほご主義しゅぎ的てきな政策せいさくを設もうけて第だい2次じ世界せかい大戦たいせんの一因いちいんとなったことの反省はんせいにたち、貿易ぼうえきを開ひらかれたものにすることを目的もくてきに1948年ねんに発足ほっそくしました。

アメリカのケネディ大統領だいとうりょうが提唱ていしょうして始はじまったケネディ・ラウンド。冷戦れいせんまっただ中まっただなか、アメリカが強力きょうりょくな指導しどう力りょくを発揮はっきすることで工業こうぎょう品ひんの関税かんぜいを大幅おおはばに削減さくげんすることで合意ごうい。

農産物のうさんぶつの例外れいがいなき関税かんぜい化かが焦点しょうてんとなったウルグアイ・ラウンドでは日本にっぽんでは農家のうかの激はげしい反発はんぱつを招まねきました。

結局けっきょく、1994年ねんに日本にっぽんはコメを例外れいがいとすることで農産物のうさんぶつの関税かんぜい化かを受け入うけいれました。

そのGATTの流ながれを引き継ひきつぎ、WTOは1995年ねんに設立せつりつされました。

WTOには主おもに3つの役割やくわりがあります。

国際こくさい的てきな貿易ぼうえきのルール作づくり、そのルールが守まもられているかどうかの監視かんし、そして加盟かめいする国くにや地域ちいきの間まで貿易ぼうえき紛争ふんそうが起おきた場合ばあいの解決かいけつです。

こうした役割やくわりを果はたすため、WTOには、最高さいこうの意思いし決定けってい機関きかんとして通常つうじょう、2年ねんに1度ど開ひらかれる閣僚かくりょう会議かいぎが設もうけられ、全会ぜんかい一致いっちでの合意ごういを原則げんそくに、経済けいざいの国際こくさい秩序ちつじょの形成けいせいに貢献こうけんしてきました。

WTOが設立せつりつされ、2001年ねんにカタールの首都しゅとドーハで開ひらかれたのが「ドーハ・ラウンド」です。

しかし、経済けいざい格差かくさの広ひろがりなどがあいまって先進せんしん国こくと新興しんこう国こくのあいだで利害りがい対立たいりつが次第しだいに激化げきかしていきます。

ものごとを決きめる仕組しくみは全会ぜんかい一致いっちが原則げんそくであるため「何なにも決きまらない」会議かいぎが続つづき「機能きのう不全ふぜんに陥おちいっているのではないか」という指摘してきも出でています。

2017年ねんに開ひらかれた閣僚かくりょう会議かいぎでは、先進せんしん国こくと新興しんこう国こくなどで意見いけんの相違そういが大おおきく、成果せいか文書ぶんしょである閣僚かくりょう宣言せんげんを出だすことはできず、議長ぎちょう声明せいめいにとどまりました。

最近さいきんは価値かち観かんを共有きょうゆうする国くにどうしで「有志ゆうし国こく会合かいごう」を作つくり、議論ぎろんを進すすめていく動うごきも出でています。