岸田総理大臣はドイツで開かれたG7サミット=主要7か国首脳会議に出席したあと、日本時間の29日夜10時ごろから現地で記者会見を行いました。
冒頭、岸田総理大臣は、ウクライナ情勢をめぐり「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜くため、またロシアの暴挙によってもたらされた世界的なエネルギーや食料の価格高騰に対応するため、議論に参加・貢献し、G7として結束した力強いメッセージを発信することができた」と述べました。
そのうえで、ロシアの軍事侵攻を1日も早く終わらせるため、G7として、ロシアに対しさらなる制裁措置を取るとともにウクライナを引き続き強力に支援していくことで一致したと説明しました。
さらに、エネルギーや食料をはじめとする世界的な物価高騰をめぐり、ロシアの軍事侵攻が原因だという認識で一致したとしたうえで「今回の物価高は単なる経済の問題ではなく、世界の平和秩序の枠組みに突きつけられた挑戦だ。各国が経済状況に応じた機動的な対策を取り、連携しながら困難を乗り越えていく決意を共有した」と述べました。
そして、G7としてロシアへの圧力を強めるため、ロシア産の石油価格に上限を設けることを検討するとしたうえで「ロシアの石油販売による収入を減らす一方で、高騰している国際石油市場の下押し圧力となる効果を持つ取り組みだ」と述べました。
一方、インド太平洋地域の情勢をめぐり沖縄県の尖閣諸島周辺で中国海警局の公船などによる領海侵入が続いていることなどに触れ「力による一方的な現状変更の試みは認められないという原則を改めて確認した。G7として台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促すことで一致した」と述べました。
日中国交正常化50周年となることし、習近平国家主席と首脳会談を行うかどうかについて「現時点で決まっていることは何もないが、さまざまなレベルでの対話は重要だ。主張すべきは主張しつつ、具体的な会談についても考えていきたい」と述べました。
さらに、北朝鮮による核・ミサイル開発をめぐり、G7として、すべての大量破壊兵器や弾道ミサイルの完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄の実現を追求していくことの重要性を確認したと説明しました。
そして、今回の成果を踏まえ、広島で開催する来年のG7サミットを、5月19日から21日の日程で行う考えを明らかにしました。
そのうえで「G7の首脳が広島の地から、核兵器の惨禍を二度と起こさない、武力侵略は断固として拒否するという力強いコミットメントを世界に示したい。普遍的価値と国際ルールに基づく新たな時代の秩序づくりをG7が主導していく意思を歴史の重みをもって示すサミットにしたい」と意欲を示しました。
一方、国内の物価高騰対策をめぐり、岸田総理大臣は今年度予算の予備費を機動的に活用するなど、物価や景気の状況に応じて迅速に対応する方針を重ねて示しました。
また、電力需給のひっ迫をめぐり、今後2つの火力発電所の再稼働などによって電力供給力の確保に万全を期すとしたうえで「熱中症も懸念されるこの夏は無理な節電をせず、クーラーを上手に使って乗り越えていただきたい」と呼びかけました。
また、原子力発電所の再稼働について「新規制基準に基づいて安全が確保されることが大前提であり、そのうえで地元の理解を得られた原子力発電所の再稼働を進めていく。供給力の確保に向けて最大限、原子力を活用していくのが基本的な方針だ」と述べました。