24時間経過 攻撃が激しくなるといった変化は確認できず
イスラム組織ハマスとイスラエル軍の衝突は、14日で1週間となり、これまでにガザ地区で1799人、イスラエル側では少なくとも1300人が死亡し、双方の死者は3000人を超えています。
日本時間の14日午前6時(現地14日午前0時)にはイスラエル軍が24時間以内にガザ地区北部の住民が南部に退避するよう国連に通告した期限を迎えました。
ガザ地区からの映像では午前6時を過ぎたあとも10分おき程度に空爆によると見られる爆発音が聞こえますが、攻撃が激しくなるといった変化は確認できていません。
ネタニヤフ首相は13日夜の演説で「敵は代償を払い始めたばかりだ。これは始まりにすぎない。われわれはハマスを破壊し勝利する。時間はかかるが、かつてなく強くなってこの戦争を終わらせる」と述べ長期戦も辞さない姿勢を示しました。
またイスラエルのガラント国防相は13日「命を守りたい人は南へ行ってほしい。私たちはハマスのインフラ施設や本部、軍事施設を破壊するつもりだ」と述べていて、イスラエル軍が近く、地上侵攻を含めた大規模な軍事作戦を実行に移すとの見方が強まっています。
しかし、退避の対象となる住民は110万人にのぼる上、イスラエル軍が通告後もガザ地区の北部への空爆を続けていて散乱したがれきなどで通行できない道路もあるということです。
こうした状況について、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は13日、SNSに「南部への集団での退避が悲惨なものになることは明らかだ」と書き込み、けが人や病人などが避難できずに取り残される可能性が高いとして通告の撤回を求めています。
また、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表も「24時間で100万人が移動することはまったくもって現実的ではない」と批判しています。
パレスナのヨルダン川西岸地区や周辺のアラブ諸国でもイスラエルに対する抗議デモが広がっていて、イスラエル側の出方に国際社会の目が注がれています。
イスラエル軍の砲撃で “ロイター通信カメラマン 1人死亡”
中東のメディア、アルジャジーラやAP通信などは所属する記者の話として記者たちがレバノン南部の国境付近でイスラエル軍による砲撃を受け、1人が死亡、6人がけがをしたと伝えました。
これについてロイター通信は死亡したのは、取材中の自社のカメラマンだったと発表しました。
レバノン南部では、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが散発的に衝突していて、AP通信によりますと、当時、現場では双方の間で戦闘が起きていたということです。
イスラム組織ハマスとイスラエル軍が衝突して以降、ガザ地区でも地元の記者などが戦闘に巻き込まれて死亡するケースが相次いでいます。
国連事務総長 急きょ会見「戦争にもルールがある」
国連のグテーレス事務総長は、日本時間の14日午前4時前にニューヨークの国連本部で急きょ会見し、「全体が包囲された状態で、紛争地帯を横切って100万人以上の人たちを食料も水もない場所に移動させることは、極めて危険であり場合によっては不可能だ」と訴えました。
そのうえで「戦争にもルールがある」と述べ、国際人道法のもと市民は保護されなければならないと改めて強調しました。
また、グテーレス事務総長は「われわれの国連スタッフはガザの人たちを支援するために24時間働いている」と述べました。
国連のデュジャリック報道官はこれに先立つ会見で、イスラエル軍から退避の通知を受けたあとも国連のスタッフの多くが現地にとどまり、人道支援活動を続けていると明らかにしました。
ヨルダン川西岸 パレスチナ暫定自治区でもデモ
イスラム組織ハマスが集団礼拝を行う金曜日にあわせて抗議行動を呼びかけるなか、13日、ヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区でもデモが行われました。
ヨルダン川西岸にあり、イエス・キリストの生誕地とされるベツレヘムでは、市内の中心部に数百人のデモ隊が集まって行進しました。
参加した若者らは、パレスチナやハマスの旗を掲げ、イスラエルによる空爆が続いているガザ地区への連帯やハマスへの支持を表明しながら街を練り歩いていました。
イスラエルの治安当局との大規模な衝突はありませんでしたが、一部のデモ隊がタイヤを燃やして抗議したほか、治安当局もデモ隊に対して催涙ガスで応戦する一幕もあり、周囲は白い煙で包まれました。
デモに参加した50代の男性は「パレスチナ人はこの地に残り、決して離れない。パレスチナ人が土地を追われ難民となる悲劇が繰り返されてはいけない」と話していました。
国連パレスチナ難民救済事業機関「ガザは崩壊の瀬戸際にある」
パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のフィリップ・ラザリーニ事務局長は13日、声明を発表し「ガザ地区の北部に住む100万人以上の市民を24時間以内に移動させるというイスラエル軍の通告は恐ろしい。前例のないレベルの悲惨さをもたらし、ガザの人たちをさらなる奈落の底に突き落とすだけだ」と強く非難しました。
その上で「ガザは急速に地獄に向かっていて、崩壊の瀬戸際にある。すべての当事者は例外なく戦争における法律を守らなければならない」として危機感を示しました。
双方の死者 3000人超に
パレスチナの保健当局は13日夕方、ガザ地区でこれまでに1799人が死亡したと発表しました。一方、イスラエル軍はイスラエル側でこれまでに少なくとも1300人が死亡したと発表しています。
イスラエル側とパレスチナ側をあわせた双方の死者は3000人を超えました。
《各国での反応》
英仏独 ユダヤ系住民が襲撃される事件などで政府が対策強化
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中、イスラエルへの全面的な支援を表明しているヨーロッパ各国では、ユダヤ系の住民が襲撃される事件が起きるなどしていることから、政府が対策を強化しています。
【イギリス】
イギリスでは、反ユダヤ主義的な事件が去年の同じ時期の4倍以上報告されたということで、首都ロンドンにある多くのユダヤ人学校は生徒たちの安全を守るために臨時休校を決めました。
スナク首相は「ユダヤ人社会の安全を守る」としてこうした学校やユダヤ教の礼拝所・シナゴーグの警備を強化するため300万ポンド、日本円にして5億5000万円近くを拠出すると明らかにしました。
【フランス】
フランスのパリでは12日、警察がパレスチナへの支持を訴える市民集会を強制的に解散させました。
フランス政府は、パレスチナ支持を訴える全てのデモや集会を禁止する方針を打ち出し、主催者については当局が拘束するとしています。
マクロン大統領は12日、国民に向けた演説で、イスラエルとハマスの衝突を国内に持ち込まずに結束を維持しようと呼びかけました。
【ドイツ】
一方、ドイツのショルツ首相は12日、連邦議会で演説し、国内でハマスの攻撃を賛美する動きや、SNSなどでユダヤ人への憎しみをあおる情報が拡散しているとして、そうした動きは訴追の対象になると警告しました。
ドイツ政府は、今回の衝突が反ユダヤ主義の高まりにつながるおそれがあると神経をとがらせていて、首都ベルリンなどで計画されるパレスチナ寄りの集会が、反ユダヤ主義の扇動や暴力の賛美につながるなどという理由で警察に禁止されるケースが相次いでいます。
米 国務長官「人道状況が切迫している」外交努力継続を強調
アメリカのブリンケン国務長官は13日、カタールでタミム首長などと会談したあと、記者会見し、ガザ地区について「人道状況が切迫していることはわかっている。必要とする人たちに支援を届けられるよう、カタールなどとともに取り組んでいる」と述べ、パレスチナの市民が必要な支援を受けられるよう外交努力を続ける考えを強調しました。
また、ブリンケン長官は「カタールが人質の解放に向けて支援してくれていることに感謝する」と述べ、ハマスによって捕らえられた人質の解放に向け、カタールに影響力を行使するよう引き続き協力を求めていく考えを示しました。
米 ホワイトハウス「市民がこれ以上命を落とすの見たくない」
アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は13日、記者団に対し「われわれは一般市民がこれ以上、命を落とすのを見たくない」と述べ懸念を示しました。
また、イスラエル軍が退避の時間を24時間以内としたことについてカービー調整官はMSNBCテレビのインタビューに対し「人口が密集していることや戦闘が続いていることを考えると難しい要求だ」と述べる一方で「退避の通告は、イスラエル軍がこれ以上の市民の犠牲を望まないからこそ行っていることだ」として一定の理解も示しました。
そして、ハマスが市民に通告を無視するよう呼びかけていることについて「ハマスこそ、市民に対し事実上、『人間の盾』となるよう求めている」として強く非難しました。
中国 中東問題の担当特使を関係国に派遣の考え示す
中国の王毅外相は停戦を働きかけるため、中東問題の担当特使を関係国に派遣する考えを示しました。
これは、中国の王毅外相が13日、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表と北京で共同記者会見を行った際に明らかにしました。
この中で王外相は、イスラエル・パレスチナ情勢について「多くの民間人が犠牲になり、人道状況が急激に悪化している。中国は民間人を傷つけるすべての行為を非難し、国際法に違反するいかなる行為にも反対する」と強調しました。
そのうえで「中国政府の中東問題担当特使が近く関係国を訪問し、停戦を働きかけるとともに、情勢を鎮静化させるため積極的に努力する」と述べ特使を関係国に派遣する考えを示しました。
そして「中国は国連の主導のもと、権威や影響力があり、より範囲の広い国際的な和平会議をできるだけ早く開催するよう呼びかける」と述べました。
中国としては、中東地域でアメリカの影響力が弱まるなか、この地域への関与を強めることで、存在感を高めるねらいがあるとみられます。
中国 北京 イスラエル外交官の家族が襲われけが 外国人の男拘束
中国の北京で13日、イスラエルの外交官の家族が何者かにナイフのようなもので襲われてけがをしました。現地の警察は、外国人の男を拘束して事件の背景などを調べています。
北京の警察当局によりますと、13日午後、北京中心部の朝陽区の路上で、イスラエルの外交官の家族の男性が何者かにナイフのようなもので刺されました。
現地のイスラエル大使館によりますと、襲われた男性は病院で手当てを受け、容体は安定しているということです。
現場はスーパーや飲食店が建ち並び、アメリカ大使館など各国の大使館も近接する地域です。
北京の警察当局は13日夜、北京市内で日用雑貨を扱う仕事をしている53歳の外国人の男を拘束したと発表し、当時の状況や事件の背景について調べています。
イスラエル外務省は、ハマスとの大規模な衝突を受けて、海外にいるイスラエル人とユダヤ人に対して暴力などへの警戒を呼びかけていましたが、今回の事件との関係はわかっていません。
世界各地でパレスチナへの連帯示すデモ
イスラエル軍が近くガザ地区に対して、地上侵攻を含む大規模な軍事作戦を実行に移すとみられる中、13日、イスラム教の金曜礼拝にあわせて世界各地でパレスチナへの連帯を示す集会やデモが開かれました。
このうち、レバノンの首都ベイルートではイスラエルと敵対するイスラム教シーア派組織ヒズボラの呼びかけに応じて数百人が広場に集まり、パレスチナやヒズボラの旗を掲げるとともに「ガザを守れ」とか「イスラエルを倒す」などと声を上げていました。
集会に参加した50代の女性は「私たちはガザのために集まりました。世界は見て見ぬふりをしています。私たちは勝つまでパレスチナとともに戦います」と話していました。
またイラクの首都バグダッドでは、広場を埋め尽くすほどの大勢の人が集まりパレスチナの旗を振ったり、イスラエルを非難する声を上げたりして、パレスチナへの連帯を示していました。
さらに、マレーシアの首都クアラルンプールでは、金曜礼拝のあと数百人が通りを行進し、パレスチナの旗を振るなどして「パレスチナに自由を」と叫んでいました。
このほか、ヨルダンやパキスタン、それにインドネシアなどでもイスラム教の金曜礼拝にあわせてパレスチナへの連帯を示していました。