TPPは日本やオーストラリア、シンガポール、カナダなどが参加する経済連携協定です。
15日、新たにイギリスが入った議定書が発効し、正式にイギリスがTPPに加わりました。
これによって加盟国は12か国となりました。
2018年のTPP発足後、新たな国が加わるのは初めてで、経済圏はヨーロッパにも拡大します。
12か国の人口は合わせておよそ5億8000万、GDP=国内総生産の合計は14兆7000億ドルと世界全体のおよそ15%を占めることになります。
日本とイギリスの間には2国間のEPA=経済連携協定がすでに発効していますが、TPPによって日本にとってはイギリス向けの精米や米粉などの関税が即時撤廃されるほか、建機用のタイヤの関税が即時撤廃されます。
イギリスからはFTA=自由貿易協定を結んでいないマレーシア向けに輸出されるウイスキーなどの関税が段階的に撤廃されます。
アメリカではすべての国に関税をかけると主張するトランプ氏が1月、次期大統領に就任しますが、日本としてはTPPなどの自由貿易の枠組みを活用して経済成長につなげられるかが課題となります。
日本産コメ輸出促進の団体 “輸出拡大に期待”
日本産のコメなどの輸出促進を手がける団体では、関税の撤廃によるイギリスへの輸出拡大に期待が高まっています。
日本産のコメや加工食品の輸出促進を手がける団体は、11月イギリスの首都ロンドンでPRのためのイベントを開き、日本の卸売業者や現地の輸入業者などが参加しました。
TPPへのイギリスの正式加入で日本からイギリスへの輸出にあたっては、精米や玄米、米粉の関税が即時、撤廃されるほか、パックごはんの関税は段階的に撤廃されます。
イベントの会場では品質をアピールするためおにぎりがふるまわれたほか、商談ブースで日本と現地の事業者たちが今後のビジネスについて話す様子もみられました。
農林水産省によりますと、イギリスへのコメの輸出量は日本食の人気が高まる中で増加傾向で、ことしは10月まででおよそ730トンとすでに去年1年間の輸出量を超えているということです。
全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会の細田浩之専務理事は「これからビジネスをいかにつくっていくかがポイントで、とても期待できる」と話していました。
また、日本の食品を扱うイギリスの事業者は「大きなチャンスだ」とか、「価格面でメリットが出るので輸入に力を入れていく予定だ」などと話していました。
イギリス ウイスキーメーカーもビジネス拡大に期待
イギリス北部で生産が盛んな「スコッチウイスキー」のメーカーはTPPへの加入による輸出拡大を期待しています。
スコットランド北東部にあるウイスキーメーカーではシングルモルトウイスキーの製造や販売を手がけていて、売り上げのおよそ8割が日本を含む海外向けだといいます。
TPPの発効によってイギリスから輸出される飲食料品などの関税も引き下げられることになり、このうちウイスキーについてはマレーシアに輸出する際のおよそ80%の関税が段階的に撤廃されます。
メーカーで営業責任者を務めるリチャード・アーカートさんは「関税が下がるのはよいことだ。マレーシアやまだ参入していない市場でウイスキーを販売しやすくなることを期待している」と話していました。
また、売り上げの2割がアメリカ向けの輸出で、トランプ次期大統領が高い関税を課す政策を掲げていることも踏まえ、「関税をすべて制御することはできないが、保護主義的でない市場と協力していくことは非常に良いことだ」と述べ、TPP加盟国とのビジネス拡大に期待を示していました。
専門家 “イギリスが世界貿易の支援を約束”
イギリスがTPPに正式に加入する意義について、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで貿易政策分野が専門のエリツァ・ガルニゾーバ博士は「イギリスがインド太平洋という高い成長を遂げる地域に目を向け、この地域での存在感を高めるだけでなく、世界貿易を支援することを約束することでもある」と述べ、その意義を強調しました。
また、「貿易は生産性、技術革新、輸入と輸出の両方にとって重要な経済成長の原動力であることをこれまで見てきた。イギリスがよりはやい経済成長への転換を本当に望んでいる今、貿易は重要な要素であり、TPPの同盟はその一環である」と述べ、自由貿易の重要性を指摘しました。
TPPをめぐっては、アジアでは中国と台湾、インドネシア、中米ではコスタリカ、南米ではエクアドルとウルグアイ、そして、ウクライナを含めた7つの国と地域が加入の申請をしていて、このうちコスタリカは先月(11月)加入に向けた交渉の開始が決まりました。
ガルニゾーバ氏は「TPPへの参加には明確なルールがあるが、どこが次に加入するかは政治的に微妙な状況だ」と述べ、中国と台湾がTPPに加入を申請していることについては難航も予想されるという考えを示しました。