裁判さいばん員いん制度せいど開始かいし15年ねん 裁判さいばん員いん候補こうほ者しゃの3人にんに1人にんが無断むだん欠席けっせき 最高裁さいこうさい

裁判さいばん員いんの候補こうほ者しゃは選挙せんきょ権けんを持もつ人ひとの中なかから毎年まいとし抽ちゅうせんで選えらばれ、さまざまな事情じじょうで辞退じたいが認みとめられた人ひとを除のぞいたうえで、裁判所さいばんしょで行おこなわれる「選任せんにん手続てつづき」でさらに抽ちゅうせんなどを行おこなって決きまります。

最高さいこう裁判所さいばんしょのまとめによりますと、この手続てつづきへの候補こうほ者しゃの出席しゅっせき率りつは2009年ねんのスタート当初とうしょは80％を超こえていましたが徐々じょじょに低下ていかし、去年きょねんは68.6％でした。

対象たいしょうとなった候補こうほ者しゃのおそよ3人にんに1人にんが無断むだんで欠席けっせきしたことになります。

最高裁さいこうさいは、審理しんり期間きかんの長期ちょうき化かや制度せいどへの関心かんしんの低ひくさなどが出席しゅっせき率りつの低下ていかに影響えいきょうしているとみていて「裁判さいばんが開あけない事態じたいは確認かくにんされていないが、出席しゅっせき率りつの低下ていかは制度せいどの安定あんてい性せいの根幹こんかんに関かかわる課題かだいだ」として、広報こうほう活動かつどうなど対策たいさくを進すすめています。

“真剣しんけんに議論ぎろんし改あらためる必要ひつよう”

裁判さいばん員いん制度せいどの設計せっけいにも携たずさわった國くに學まなぶ院いん大学だいがくの四宮しのみや啓あきら名誉めいよ教授きょうじゅは裁判さいばん員いんを選えらぶ手続てつづきへの出席しゅっせき率りつの低下ていかについて「裁判さいばん員いん制度せいどを担になう国民こくみんが少すくなくなっているということで、制度せいどの本質ほんしつに関かかわる深刻しんこくな問題もんだいだ。裁判さいばん員いん制度せいどのニュースも減へり、生活せいかつの一部いちぶになったのならよいが、国民こくみんから忘わすれられようとしているなら問題もんだいだ。真剣しんけんに議論ぎろんして改あらためる必要ひつようがある」と指摘してきしています。

四宮しのみや名誉めいよ教授きょうじゅによりますと、陪審ばいしん員いんとして市民しみんが裁判さいばんに参加さんかするアメリカの州しゅうでは制度せいどへの理解りかいを広ひろめるため、裁判所さいばんしょが記念きねん日びを設もうけて毎年まいとしイベントを開ひらいたり、陪審ばいしん員いんを務つとめた有名ゆうめい俳優はいゆうが経験けいけんを語かたる場ばを設もうけたりしているということです。

四宮しのみや名誉めいよ教授きょうじゅは「日本にっぽんでも裁判所さいばんしょが進すすんで裁判さいばん員いん裁判さいばんへの参加さんかの必要ひつよう性せいを国民こくみんに訴うったえることが重要じゅうようだ。裁判さいばん員いんを経験けいけんした人ひとは、裁判所さいばんしょのアンケートに『よい経験けいけんだった』と語かたる人ひとが多おおい。一番いちばん大事だいじなのは、こうした経験けいけんが社会しゃかいで共有きょうゆうされることだ」と述のべ、裁判所さいばんしょが先頭せんとうに立たって対策たいさくを進すすめるべきだと訴うったえていました。

参加さんかした裁判さいばん員いんの意見いけんは

出席しゅっせき率りつの低下ていかについて、今月こんげつ、東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょでの裁判さいばん員いん裁判さいばんに参加さんかした、裁判さいばん員いんや補充ほじゅう裁判さいばん員いんに意見いけんを聞ききました。

裁判さいばん員いんを務つとめた20代だいの男性だんせいは「貴重きちょうな体験たいけんができると思おもったので参加さんかに迷まよいやためらいはなかったです。周まわりに裁判さいばん員いんの経験けいけん者しゃもおらず制度せいどや審理しんりの流ながれについてわかりやすいものが見当みあたらなかったので、経験けいけん者しゃの声こえなどが広ひろがればやりたいという人ひとがもっと出でてくるのではないかと思おもいます」と話はなしていました。

80代だいの男性だんせいは「裁判さいばん員いん制度せいど自体じたいがよくわからず『別べつに関係かんけいない』というスタンスの人ひとが多おおいと思おもう。制度せいどの詳細しょうさいは経験けいけんしないと話はなすことができないので、事前じぜんに経験けいけん者しゃの話はなしを聞きくことができる機会きかいは大事だいじだと思おもう」と述のべ、今後こんごは自分じぶん自身じしんも経験けいけんを伝つたえていきたいと話はなしていました。

補充ほじゅう裁判さいばん員いんとして参加さんかした20代だいの男性だんせいは「昔むかしながらの方法ほうほうではなく、動画どうがやSNSなど今いまの時代じだいに合あわせたツールを使つかって広報こうほうに努つとめていくといいと思おもいます」と話はなしていました。

再ふたたび候補こうほ者しゃに選えらばれた裁判さいばん員いん “経験けいけん者しゃの話はなし聞きき参加さんか決きめた”

福岡ふくおか県けん志免しめ町まちの中島なかじま真由美まゆみさん（57）は、去年きょねん10月つき、福岡ふくおか地方ちほう裁判所さいばんしょで行おこなわれた刑事けいじ事件じけんで裁判さいばん員いんを務つとめました。

おととし11月つき、最高さいこう裁判所さいばんしょから裁判さいばん員いん候補こうほ者しゃの名簿めいぼに記載きさいされたことを知しらせる封筒ふうとうが届とどきました。

中島なかじまさんはおよそ10年ねん前まえにも裁判さいばん員いんの候補こうほ者しゃに選えらばれましたが、当時とうじは子育こそだてで忙いそがしかったうえ、制度せいどについてよく知しらず放置ほうちしてしまった経験けいけんがあります。

去年きょねん、再ふたたび候補こうほ者しゃに選えらばれた際さいは子育こそだてが落ち着おちついていたことに加くわえ、参加さんかする前まえ、裁判さいばん員いん経験けいけん者しゃなどでつくる団体だんたいを通をとおしてやりがいなどを聞きいていたため参加さんかを決きめました。

裁判さいばん員いんを務つとめたのは強盗ごうとう傷害しょうがい事件じけんの裁判さいばんだったということで、中島なかじまさんは「全すべてが初はじめてで、1人にんが罪つみを犯おかすことでこんなに多おおくの人ひとが関かかわっているのだと感かんじました。法律ほうりつだけで裁さばかれていると思おもっていましたが、そうではなく心情しんじょう面めんも含ふくめみんなの意見いけんで進すすんでいくと思おもいました」と話はなしていました。

そのうえで「経験けいけん者しゃの方ほうの話はなしを聞きけると安心あんしんして裁判さいばん員いんとして参加さんかできると思おもいます。私わたしも経験けいけんしたことを周まわりに伝つたえていきたい」と話はなしていました。