“強制きょうせい接種せっしゅ進すすむ”など パンデミック条約じょうやくに関にかんする誤あやま情報じょうほうが拡散かくさん

「パンデミック条約じょうやく」とは

「パンデミック条約じょうやく」は新型しんがたコロナウイルスの感染かんせんが拡大かくだいした際さい、ワクチンや医薬品いやくひんの供給きょうきゅうについて先進せんしん国こくと途上とじょう国こくの間まで格差かくさが生しょうじたことなどの教訓きょうくんを踏ふまえ、途上とじょう国こくへの支援しえん策さくなどを盛り込もりこんだ国際こくさい条約じょうやくで、2022年ねんから交渉こうしょうが行おこなわれ、先月せんげつ下旬げじゅんからはWHO＝世界せかい保健ほけん機関きかんの年次ねんじ総会そうかいでも協議きょうぎが行おこなわれています。

“ワクチン強制きょうせい接種せっしゅ進すすむ”など誤あやま情報じょうほう 150万まん件けん以上いじょう確認かくにん

NHKが分析ぶんせきしたところ、パンデミック条約じょうやくに関にかんする投稿とうこうは去年きょねん10月つきごろから旧きゅうツイッターのXで増ふえ始はじめ、ことし4月つきに東京とうきょう都内とないで抗議こうぎデモが行おこなわれた際さいには投稿とうこう数すうが3日間にちかんで30万まん件けんを超こえるなど先月せんげつ末まつまでに150万まん件けん以上いじょうに上のぼっています。

投稿とうこうには「WHOによって国家こっかの主権しゅけんが奪うばわれる」とか「ワクチンの強制きょうせい接種せっしゅが進すすめられる」などとする誤あやまった情報じょうほうも多おおく、現在げんざい交渉こうしょうが行おこなわれている条約じょうやくの案あんにはこうした文言もんごんは入はいっていません。

また、交渉こうしょうの過程かていで「WHO事務じむ局きょくには、締約ていやく国こくに対にたいして政策せいさくや行動こうどうを指示しじ、命令めいれい、変更へんこうする権限けんげんはない」とする条文じょうぶんも加くわえられていて、SNSで広ひろがっている情報じょうほうは条約じょうやくの正確せいかくな内容ないようを反映はんえいしないものとなっています。

こうした誤あやまった情報じょうほうや偽にせ情報じょうほうなどは1000回かい以上いじょう拡散かくさんされているものだけで少すくなくとも80あり、あわせておよそ3000万まん回かい閲覧えつらんされていました。

さらに「基本きほん的てき人権じんけんを奪うばう内容ないようだ」とする誤あやまった情報じょうほうも広ひろがっていますが、これはパンデミック条約じょうやくと同時どうじに行おこなわれている「国際こくさい保健ほけん規則きそく」の改定かいてい交渉こうしょうでの各国かっこくの提案ていあんをまとめた資料しりょうに、人権じんけんに関にかんする項目こうもくを削除さくじょする提案ていあんを行おこなった国くにがあったことが示しめされているのを誤解ごかいしたものとみられ、実際じっさいには改定かいてい案あんでも「人権じんけんの尊重そんちょう」が盛り込もりこまれています。

また、条約じょうやくの目的もくてきについて「ワクチンを製造せいぞうしている製薬せいやく企業きぎょうの利益りえきを守まもるためだ」とする情報じょうほうも広ひろがっていますが、実際じっさいには途上とじょう国こく側がわはワクチンの公正こうせいな分配ぶんぱいを求もとめていて、広ひろがっている情報じょうほうは十分じゅうぶんな根拠こんきょがありません。

ほかにも「WHOと政府せいふによって計画けいかくされたパンデミックが起おきる」といったまったく根拠こんきょのない偽にせ情報じょうほうも日本にっぽんにとどまらず各国かっこくで広ひろがっています。

保健ほけん分野ぶんやの国際こくさい協力きょうりょくに詳くわしい慶応けいおう大学だいがくの詫摩たくま佳代かよ 教授きょうじゅは「正ただしくない情報じょうほうが広ひろがり続つづけば今後こんごの交渉こうしょうがますます難航なんこうすることにつながる可能かのう性せいもある」と危機きき感かんを示しめしています。

専門せんもん家か“誤あやま情報じょうほうで条約じょうやく交渉こうしょうに影響えいきょうの可能かのう性せいも”

保健ほけん分野ぶんやでの国際こくさい協力きょうりょくに詳くわしい慶応けいおう大学だいがくの詫摩たくま佳代かよ 教授きょうじゅは「WHOが強つよい権限けんげんを持もつとか、誰だれかに対にたいして何なにかを強制きょうせいするということはそもそもあり得えないことで、条文じょうぶんのどこにも書かかれてない。国際こくさい法ほうは基本きほん的てきに、国くにと国くにが合意ごういして初はじめて成立せいりつするものであって、それをどのように運用うんようするのかは国家こっかの裁量さいりょうにかかっている。国際こくさい機関きかんが国家こっかに対にたいして何なにかを命令めいれいしたり強制きょうせいしたりすることは、パンデミック条約じょうやくに限かぎらず、国際こくさい法ほうの基本きほんとしてあり得えないことだ」と指摘してきしました。

パンデミック条約じょうやくは2年ねんにわたって各国かっこくによる交渉こうしょうが続つづけられてきましたが、ワクチンの分配ぶんぱいの公平こうへい性せいなどについて先進せんしん国こくと途上とじょう国こくの間まの溝みぞが埋うまらないことが合意ごういが難むずかしい要因よういんとなってきました。

詫摩たくま教授きょうじゅは「パンデミック条約じょうやくはコロナ禍かで明あきらかになった問題もんだい点てんを踏ふまえ保健ほけん分野ぶんやでの国際こくさい的てきな協力きょうりょくに関にかんする新あらたな法的ほうてきな基盤きばんを作つくろうと提案ていあんされたものだ。正ただしくない情報じょうほうが広ひろがり続つづけば今後こんごの交渉こうしょうがますます難航なんこうすることにつながる可能かのう性せいもある」と危機きき感かんを示しめしました。

公的こうてき機関きかんやWHOのサイトで確認かくにんを

そして、誤あやまった情報じょうほうなどが広ひろがる背景はいけいにはパンデミックの際さいに深ふかまったWHOに対にたいする不信ふしん感かんや、国際こくさい法ほうに関にかんする根本こんぽん的てきな認識にんしき不足ふそくがあると指摘してきされているということで、詫摩たくま教授きょうじゅは厚生こうせい労働ろうどう省しょうや外務がいむ省しょうなどの公的こうてき機関きかんや、英語えいごではあるものの条約じょうやくの草案そうあんなどが公開こうかいされているWHOのウェブサイトを確認かくにんしてほしいと呼よびかけています。