シーサイドラインは3日も終日運休し、運転再開のめどは立っていません。
運行会社によりますと、シーサイドラインは各車両に積んだモーターから動力が伝わり走行する仕組みですが、事故当時もそれぞれのモーターが作動して5両編成が一斉に逆走したため、かなりの衝撃で車止めに衝突したとみられるということです。
会社側は逆走のスピードが時速10キロ以上に達したとみていて、衝突後も5両分の動力が重なったことで連結部分が大きく変形した車両もあるということです。
国の運輸安全委員会が引き続き詳しい状況を調べ、事故原因の特定を進めることにしています。
専門家「予想外が起きても事故防ぐ対策を」
交通システムの安全対策に詳しい工学院大学の高木亮教授は「自動運転システムで逆走が起こるのかと驚いた。車両の中のシステムに何らかの不具合があったのではないか。原因を突き止めることが重要で、そのうえで『予想外』のことが起きたとしても、事故が起こらないようなできるかぎりの対策をすべきだ」と指摘しました。
そのうえで「今回の事故は列車を走らせるという根幹部分で問題が起きた。自動運転の導入が検討されているJR山手線をはじめ国内のすべての自動運転システムに影響があると思う。非常に重要な反省ポイントなので、検証することが大事だ」と述べました。
「ゆりかもめ」は係員を配置
シーサイドラインの車両が逆走した事故を受け、東京の臨海部を無人で自動運転している「ゆりかもめ」では、万が一逆走した場合に手動で停車させるため、ホームの非常ボタンの前に係員を配置する対策を取りました。
東京の新橋と豊洲を結ぶ「ゆりかもめ」は、シーサイドラインと同じようにATO=自動列車運転装置によって無人で自動運転しています。
事故の原因が明らかになっていない中、ゆりかもめでは3日から始発駅のホームに係員を新たに配置し、出発時に車両が本来の進行方向と逆に動き出した場合は、ホームにある非常ボタンを押して手動で停車させる対策を取りました。
係員は発車ベルが鳴ると非常停止ボタンに指をかけてすぐに押せるよう備え、車両が安全に出発するのを確認していました。
ゆりかもめ運輸部の眞野清理運輸区長は「事故の原因がまだはっきりしていない中で、同じシステムで運行しているのでできるかぎりの対策を講じていきたい」と話していました。
愛知の「リニモ」では緊急点検
愛知県内で同じ自動運転の装置を使って運行されている「リニモ」では、装置の緊急点検が行われました。
事故を受けて3日、愛知県の名古屋市と豊田市を結ぶ「リニモ」で緊急の点検が行われました。
シーサイドラインは駅と車両の双方に「ATO」と呼ばれる自動運転を担う装置があり、信号を送受信しながら運行されていて、今回は、送受信のシステムに何らかの不具合が生じたとみられています。
「リニモ」も同じ装置を使って運行されていることから、点検では装置が進行方向の切り替えなどの信号を適切に送受信できているかなどを入念に確認していました。
また、事故を受けて、車止めのある始発駅の藤が丘駅では運転台に職員が乗り込み、万が一列車が逆走した際には手動で停止させられる態勢もとっています。
「リニモ」を運行する愛知高速交通の矢崎智之総務部長は「今回の事故はひと事ではなく、大きなショックを受けている。点検をしっかり行い、事故原因を見極めたうえで必要があれば新たな対策を講じていきたい」と話していました。