「ファスト映画」公開の2人に総額5億円の賠償命じる東京地裁 - Easy News

映画えいがを10分ふん程度ていどに編集へんしゅうした違法いほうな動画どうが「ファスト映画えいが」をネット上じょうに公開こうかいしたとして、著作ちょさく権けん法ほう違反いはんの罪つみで有罪ゆうざいが確定かくていした2人にんに大手おおて映画えいが会社かいしゃなど13社しゃが損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめた裁判さいばんで、東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょは請求せいきゅうどおり総額そうがく5億おく円えんの賠償ばいしょうを命めいじる判決はんけつを言い渡いいわたしました。

20代だいの男女だんじょ2人にんは、映画えいがの映像えいぞうを無断むだんで使つかい字幕じまくやナレーションをつけて10分ふん程度ていどに編集へんしゅうしてストーリーを明あかす違法いほうな動画どうが「ファスト映画えいが」をネット上じょうに公開こうかいして広告こうこく収入しゅうにゅうを得えていたとして、去年きょねん、全国ぜんこくで初はじめて摘発てきはつされ、著作ちょさく権けん法ほう違反いはんの罪つみで有罪ゆうざいが確定かくていしました。

「シン・ゴジラ」など国内こくないの54作品さくひんを無断むだんで編集へんしゅうし動画どうが投稿とうこうサイトの「YouTube」で公開こうかいしていて、大手おおて映画えいが会社かいしゃの東宝とうほうや日活にっかつなど合あわせて13社しゃは総額そうがく5億おく円えんの賠償ばいしょうを求もとめていました。

17日にちの判決はんけつで、東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょの杉浦すぎうら正樹まさき裁判さいばん長ちょうは「YouTubeでの映画えいが作品さくひんのレンタル価格かかくは400円えんをくだらない。投稿とうこうされた動画どうがは2時間じかんの映画えいがを10分ふん程度ていどにしたものだが作品さくひん全体ぜんたいの内容ないようを把握はあくできるよう編集へんしゅうされていることなどを考慮こうりょすると、損害そんがい額がくは1再生さいせい当あたり200円えんとするのが相当そうとうだ」という考え方かんがえかたを示しめしました。

そのうえで、作品さくひんごとに再生さいせい数すうをかけあわせると、損害そんがい額がくは総額そうがくで20億おく円えん以上いじょうにのぼると指摘してきし、請求せいきゅうどおり総額そうがく5億おく円えんの賠償ばいしょうを命めいじました。

「ファスト映画えいが」による損害そんがい額がくについて司法しほう判断はんだんが示しめされたのは初はじめてです。

「ファスト映画えいが」は、おととしの春はるごろから投稿とうこうが急増きゅうぞうし、コロナ禍かでの巣すごもり需要じゅようや短たん時間じかんに作品さくひんの内容ないようを知しりたいというニーズを背景はいけいに被害ひがいが拡大かくだいしました。

業界ぎょうかい団体だんたいの代表だいひょう理事りじ「著作ちょさく権けん侵害しんがいに対にたいする大おおきな抑止よくし力りょくに」

原告げんこくの大手おおて映画えいが会社かいしゃなどが加盟かめいする業界ぎょうかい団体だんたい「CODA＝コンテンツ海外かいがい流通りゅうつう促進そくしん機構きこう」の後藤ごとう健郎たけお代表だいひょう理事りじは記者きしゃ会見かいけんし、「著作ちょさく権けん侵害しんがいに対にたいする大おおきな抑止よくし力りょくになる判決はんけつで、損害そんがい額がくが1回かいの再生さいせいにつき200円えんと認みとめられたことは、今後こんごの対策たいさくに大おおきく資しする。『やり得とくは許ゆるさない』という映画えいが関係かんけい者しゃのきぜんとした態度たいどの結果けっかだと思おもう」と話はなしました。

また、「動画どうがを見みた人ひとは軽かるい気持きもちだったと思おもうが、動画どうがを見みることで著作ちょさく権けんを侵害しんがいする側がわの広告こうこく収入しゅうにゅうを手助てだすけすることになる。『ファスト映画えいが』は見みないという認識にんしきを持もってもらうことが必要ひつようだ」と訴うったえました。

原告げんこく側がわの弁護士べんごしによりますと、17日にちに判決はんけつが出だされた2人にんとともに動画どうがを投稿とうこうし、有罪ゆうざい判決はんけつが確定かくていしている40代だいの1人にんに対にたいしても訴うったえを起おこしていて、引き続ひきつづき賠償ばいしょうを求もとめていくということです。

背景はいけいに若わかい世代せだい中心ちゅうしんとした視聴しちょうスタイルの変化へんかが

おととし春はるごろから投稿とうこうが目立めだつようになった「ファスト映画えいが」。

「CODA＝コンテンツ海外かいがい流通りゅうつう促進そくしん機構きこう」によりますと、去年きょねん6月つき時点じてんで、少すくなくとも55のアカウントから2100本ほん余あまりの動画どうがが投稿とうこうされ、累計るいけいの再生さいせい回数かいすうをもとにした被害ひがい総額そうがくは956億おく円えんに上のぼると推計すいけいされました。

背景はいけいにあるのが若わかい世代せだいを中心ちゅうしんにした今いまの視聴しちょうスタイルです。

マーケティングリサーチ会社かいしゃの「クロス・マーケティング」が去年きょねん3月つき、20代だいから60代だいの男女だんじょ1100人にんを対象たいしょうに調査ちょうさしたところ、20代だいでは半数はんすう近ちかい49.1％が、全体ぜんたいでも3分ぶんの1を超こえる34.4％が、映画えいがなどを早送はやおくりで見みる、いわゆる「倍速ばいそく視聴しちょう」の経験けいけんがありました。

また、「倍速ばいそく視聴しちょう」への意識いしきを複数ふくすう回答かいとうで聞きいたところ、

▽「テンポが速はやすぎて内容ないようがよく理解りかいできないと思おもう」が27.7％と最もっとも多おおくなりましたが、

▽「自分じぶんの好すきな速度そくどで見みられるので自由じゆう度どが上あがる」が26.5％、

▽「隙間すきま時間じかんを活用かつようし効率こうりつよくたくさんの動画どうがを視聴しちょうできる」が22.7％と続つづきました。

違法いほうなファスト映画えいがが横行おうこうした背景はいけいについて、コンテンツビジネスに詳くわしいライターの稲田いなだ豊ゆたか史しさんは「ここ10年ねんくらいで定額ていがくの動画どうが配信はいしんサービスが普及ふきゅうしたのに加くわえ、作品さくひん本数ほんすうも多おおくなり話題わだいに上のぼる作品さくひんが増ふえてきた。仕事しごとでも学校がっこう生活せいかつでも現代げんだい人じんは多忙たぼうになっていて、より短みじか時間じかんに多おおくの作品さくひんを見みようと、タイムパフォーマンスを重視じゅうしする風潮ふうちょうが強つよまっている」と指摘してきしています。

そのうえで「ファスト映画えいがは議論ぎろんの余地よちなく違法いほうであり、あるべきものではないと思おもう。ただ、カジュアルに『ファスト映画えいがを見みている』と言いう大人おとなや著名ちょめい人じんがいるのも事実じじつで、罪つみの意識いしきを持もっていない人ひとがまだまだ多おおいと感かんじている」と話はなしています。

日本にっぽん作品さくひんの投稿とうこう減げんも海外かいがい作品さくひんで依然いぜんとして続つづく

「ファスト映画えいが」をめぐっては、去年きょねんの警察けいさつ当局とうきょくによる摘発てきはつをきっかけに、動画どうがを削除さくじょしたりアカウントを閉鎖へいさしたりする動うごきが相次あいつぎました。

CODAによりますと、「ファスト映画えいが」を投稿とうこうするアカウントの数かずは、一時いちじ、最盛さいせい期きの55から6まで減へったことが確認かくにんされたということです。

しかし、今月こんげつの時点じてんで21に増加ぞうかしていて、700本ほんを超こえる動画どうがが投稿とうこうされているということです。ほとんどが海外かいがいの映画えいがやドラマを編集へんしゅうしたもので、日本にっぽんの作品さくひんは減へったものの、海外かいがい作品さくひんについては依然いぜん、投稿とうこうが続つづいているとしています。

CODAは、海外かいがい作品さくひんであっても投稿とうこうがなくならない現状げんじょうに危機きき感かんを強つよめていて、「ファスト映画えいが」の視聴しちょうを控ひかえるよう注意ちゅうい喚起かんきするとともに、国外こくがいの権利けんり者しゃとも情報じょうほうを共有きょうゆうし対策たいさくを講こうじるよう呼よびかけていくことにしています。