藤井八冠は去年10月に、「王座」を獲得して八大タイトルを独占し、そのあとの「竜王戦」七番勝負でも防衛を果たして八冠を守りました。
そして7日、栃木県で開幕する「王将戦」七番勝負で、ことし最初の防衛戦に臨みます。
これに先立って藤井八冠は、新年にあわせた報道各社の取材に応じました。
この中で、藤井八冠は「2023年の対局を振り返ると、序盤からさまざまな展開になる将棋が、これまでよりも増えたと感じています。苦しい局面であっても粘り強く指すことができ、その点は成長できたと感じています」と振り返りました。
また、すべてのタイトルを独占したことで予選などがなくなり、対局数が減ることについては「練習対局の機会を確保することで、取り組み方に差が出ないようにしていきたい」としたうえで「盤を挟めば、立場の違いは関係なく対等な勝負になるので、それほど意識せずに対局に臨むと思っています」と意気込みを語りました。
藤井八冠が、この1年に行われる8つの防衛戦すべてを制し、八冠を維持できるのか注目されます。
藤井聡太八冠【一問一答】
藤井聡太八冠は去年11月、新年を前に都内で報道各社の取材に応じました。
こちらは、その主なやり取りです。
2023年を振り返って自己採点すると
Q.2023年を振り返ってどうだった?
A.「2023年を振り返りますと、棋王戦、名人戦、王座戦と3つのタイトル戦で挑戦することができて、自分の思っていた以上の結果が出せた1年だったと思っています」
「八冠は達成できるとは思っていなかったことなので、自分自身、驚きもありましたし、それに際して多くの反響をいただけたことも、すごくうれしく思いました」
Q.盤上、盤外で成長したことは?
A.「まず盤上に関して言うと、依然として課題が多いと感じることもあったのですが、全体として少し苦しい局面であっても粘り強く指すことができて、その点は成長できたところだと思っています」
「盤外は、ことし体重が少し増えたのですが、それは成長ではないので、来年、また戻していきたいと思っています」
「体力づくりがまだ、なかなかうまくいっていないので、引き続き取り組んでいけたらと思っています」
Q.2023年でいちばん印象に残った1局と1手は?
A.「1局ですと、竜王戦の第3局は、序盤から前例の少ない展開になったのですが、その中で積極的な手を選び続けて、勝ちに結び付けることができたので、印象に残る1局でした」
「1手ですと、いろいろあるのですが、1つあげるとすると。棋聖戦の第3局で、中盤で8六玉と寄った手があったんですけど、決してそれがいい手というわけではないのですが、先が見えない状況の中で、自分から崩れない1手を選べたところはあったので、自分にとっては印象に残る1手になりました」
Q.タイトル戦で得られた収穫は?また、苦労した棋戦は?
A.「2023年のタイトル戦を振り返ると、本当にいろいろな方と対局があって、その強さを学べた1年だったと思っています」
「羽生(善治)九段から、柔軟な大局観というところを感じましたし、永瀬(拓矢)九段や伊藤(匠)七段との対戦では、序盤の認識の深さや読みの鋭さなど、非常に勉強になるところが多かったと思っています」
「また、タイトル戦の中で、王座戦と叡王戦は、どちらも非常に大変なシリーズだったと思っています」
「勝った対局であっても、けっこう中盤と終盤に苦しい局面も多くあったので、振り返って学ぶべきところが多いシリーズだったと思っています」
Qことしを振り返って自己採点すると?
A.「ことしはタイトル戦の結果という点でいうと、自分としては、これ以上ないような、よい結果が出せたと思っています」
「そういう点では、高い点数をつけたいですが、王座戦や叡王戦では苦戦するなど、対局の内容を振り返ると、そういう将棋が多かったと感じているので、全体で80点ということにしたいと思います」
若い世代の将棋に注目
Q.いろいろな戦術や見慣れない形を指されることが多かったが、新しい戦術を切り開いている意識はあるのか?
A.「自分自身はこれまでと、それほど大きく戦い方は変えてはいなかったのですが、それでも、やはり力戦に近いような展開の将棋が多くなったと感じています」
「まずは。そういったさまざまな形に対する認識を深めていって、対応する力をつけていくことが必要になると思っていますし、そうすることで、自分自身もいろいろな指し方を試みることができるようになるとも思っています」
Q.“藤井流”ではないが、自分の名前が冠せられるような戦術を編み出していきたいという思いはある?
A.「現代では、なかなか戦法というレベルで新しいものを見つけることは難しくなっていると思うので、“新・藤井システム”というのは、難しいかなと思っていますが、ただ序盤から工夫して、少しでも自分らしさというものを出せたらと思います」
Q.将棋全体の理解度を100%だとして、藤井八冠自身は何%くらい理解していると思う?
A.「全体がどのぐらいかということも分からないですし、日々取り組んでいく中で、知らない手筋や、ぱっと見では、判断できないような局面は本当にたくさんあるので、自分の感覚ではどのぐらい理解しているかというと、1割にも満たないくらいなのではないかと思っています」
Q.いま注目している棋士は?
A.「自分より若い世代の方が、どういう将棋を指されるかということは注目しています」
「その点で言うと、藤本(渚)四段や上野(裕寿)四段は、対局の内容を見ていても、力強い将棋を指される印象で注目して見ています」
趣味の鉄道やチェスがリフレッシュに
Q.2023年で将棋に触れない完全なオフはどのぐらいあった?
A.「一切触れないということは、たぶんなかったと思います」
「ただ、毎日時間をとって取り組んでいるというわけではなくて、そうではない日もありますが、その日の対局の中継を見るというのが、1つの日課なので、全く触れていない日はなかったと思います」
Q.鉄道好きで知られているが、どういうタイプが好き?
A.「※粘着式鉄道だけではなく、ケーブルカーなど、タイプは特にこだわりはないですが、乗ったことがないところは多いので、少しずつ乗っていきたいです」
※レールの上を車輪で走る、いわゆる一般的な鉄道。
Q.時間ができると、趣味の鉄道など気分転換に生かす?もし鉄道に乗るとしたら、どの路線に乗りたい?
A.「時間ができたら将棋以外のことをするかというと、そういうわけでもなくて、基本的に将棋への取り組みというのは、常にベースになってくるかとは思うのですが、ただ、それもずっと長時間やっていると、どうしても集中力が落ちてしまうこともあるので、気分転換、リフレッシュを挟みながらということにはなるかと思います」
「鉄道に関して言うと、どこかで海外の鉄道に乗る機会が作れたらと思っています」
Q.将棋以外のリフレッシュについて 鉄道以外に身近でできることはある?
A.「身近にということで、チェスプロブレムを合間にとくこともあって、とけないと、なかなか終わらないという欠点がありますが、とけたときは非常に気分がいいので、それも1つのリフレッシュになっていると思っています」
Q.正月の過ごし方は?
A.「将棋界には、正月は関係ないという方もいるみたいですが、私自身は、そういうわけではなくて、正月ですと、家族と自宅でゆっくり過ごすことが多いので、まだ特に予定は決まっていないですが、ゆっくり過ごしつつ、年明けの王将戦などに向けて準備をしていければと思っています」
Q.2024年はたつ年ということで、竜のイメージは?
A.「将棋でも竜王戦や、龍という駒もあります。竜というと、強さの象徴というイメージは持っています」
Q.干支(えと)で好きな動物はいる?
A.「十二支がちゃんと思い出せないので、何がいたのか、毎年、ことしは何年と聞いて、なるほどと思うのですが、出てこないので、たつ年が好きということにします」
2024年の抱負
Q.2024年の抱負を教えてください。
A.「2024年、年明けから王将戦をはじめとして、タイトル戦が続くことになるので、それらの対局にしっかり、よい状態で臨めるように準備をしていきたいと思っていますし、2023年の対局を振り返ると、序盤から、さまざまな展開になる将棋がこれまでよりも増えたと感じているので、そういった形に対応していけるような力をつけていけたらと思っています」
Q.八冠を守る立場となって、気の持ち方は?
A.「対局に臨むうえでの気持ちという点では、これまでと変わらないと思っています。盤を挟んでしまえば立場の違いは関係なく、対等な勝負ということになるので、それほど意識せずに対局に臨んでいるかと思っています」
Q.対局は減るが、どのようにタイトル戦の準備を?
A.「順位戦がなくなったということもあって、対局の続く時期と、少なくなる時期が出てきやすい状況にはなったと思っています」
「対局が少ないときも、練習対局の機会を確保することで、取り組み方に差が出ないようにしていきたいと思っています」
Q.将棋と将棋以外で取り組みたいことは?
A.「将棋に関することについてですが、序盤の展開の多様化に対応していくということはもちろん、自分自身も、これまであまり指していない形も試すことができたらと思っています」
「将棋以外は、あまり考えていませんでしたが、まずは鉄道路線、特に地方では、まだ乗れていない路線が多いので、少しずつ乗る機会を作っていけたらと思っています」