準決勝3位で決勝へ
男子高飛び込みは高さ10メートルの台から6回の演技を行い、空中姿勢の美しさや入水した時にどれだけ水しぶきを抑えられたかなどをもとに合計の得点で競います。
東京大会に14歳で初めて出場し7位に入賞した玉井選手は、準決勝3位で決勝に進みました。
<2回目>一時トップに
玉井選手は1回目の演技で全体2位の得点をマークすると、準決勝ではミスがあった2回目の後ろ向きに踏み切って3回半回る「207B」を決め95.40の高得点を出し、一時トップに立ちました。
<5回目>全体3位に後退
3回目以降も安定した演技で全体の2位で迎えた5回目の前を向いて踏み切り後ろに3回半回る「307C」で入水が大きく乱れるミスが出て得点が39.10にとどまり、全体の3位に後退しました。
<6回目>出場選手で最高得点
しかし玉井選手は最後の6回目、得意としている後ろ向きに踏み切って2回半ひねりながら2回半回る「5255B」を入水まできっちり決め、決勝の演技で出場した選手の中で最も高い99.00の高得点をたたき出し、合計507.65で銀メダルを獲得しました。日本選手が飛び込みでメダルを獲得したのは初めてです。
金メダルは中国選手 銅メダルは英選手
金メダルは、合計547.50をマークした中国の曹縁選手が獲得し、東京大会に続いて連覇となりました。銅メダルはイギリスのノア・ウィリアムズ選手でした。
“逆境をプラスに変えて”
日本の飛び込み界で初めてのメダル獲得を果たした男子高飛び込みの17歳、玉井選手。去年、腰を痛めて満足な練習が積めない時期を経験しましたが、そこで自分自身を見つめ直し逆境をプラスに変えて大きな成長を遂げました。
東京五輪 中学3年生で出場
玉井選手は14歳、中学3年生のときに東京オリンピックに出場し、初出場ながら7位入賞を果たして注目を浴びました。
2022年の世界選手権でもジャンプ力を生かしたキレのある演技を見せて銀メダルを獲得。順調にステップアップしていきました。
世界選手権 腰痛悪化 練習できない日々に…
しかし去年、福岡市で行われた世界選手権。準決勝で7位に入りパリオリンピックの代表内定を決めたものの、腰痛を悪化させて決勝を途中棄権する結果となりました。その後は「これまでの競技人生でいちばん飛び込みから離れた時間が長かった」とリハビリに時間を費やし、練習が満足にできないもどかしい日々を過ごしました。
玉井選手は「けがをして思うようにいかない時間が長くて、心が折れてしまいそうなこともあった」と振り返ります。
「今できることをやる」
それでも「今できることをやる」と気持ちを切り替え、客観的にみずからの演技や取り組み方を見つめ直すことにしたといいます。
変化1. 飛び込みフォーム
まず見直したのが飛び込みフォームでした。
玉井選手は「どこがこれまでよくなかったのかを振り返る時間ができたので、腰への負担がかかるような踏み切りや、入水のきれいさを見直した」と説明します。
数々のオリンピック選手を育てた馬淵崇英コーチによりますと、これまでの上半身主導のフォームでは腰への負担が大きくなってしまうため、下半身をしっかり使った軸がぶれないフォームづくりに取り組んできたということです。
変化2. 練習への向き合い方
さらに練習への向き合い方も変化しました。
「試合までの調整でいかにコンディションを合わせられるかが大事だと思い知らされた」と、けがが再発しないよう飛び込みの練習の本数を抑えつつ1回1回を集中し、質を高めて飛ぶことを強く意識するようになりました。
「けがは成長できた期間だった」
馬淵コーチが「けがをした間に心も体も作り直した。基礎をやり直すいい期間になった」と話せば、玉井選手も「けがをしたことでマイナスももちろんあるが、プラスになった部分も少なからずある。成長できた期間だった」と振り返りました。
「東京オリンピックの時は余裕がなかったが、今はオリンピックで“楽しもう”という気持ちがある」と3年前からの心境の変化を語った玉井選手。心技体で一回りもふた回りも成長したことを、パリの舞台で証明しました。