それによりますと、昨年度、高齢者が一緒に暮らす家族や施設の職員から虐待を受けた件数は1万7588件に上りました。
これは前の年度より752件多く、平成19年度に調査を始めて以来、過去最多を更新しました。
このうち家族などからの虐待は1万7078件で、内容について複数回答で聞いたところ、
▽「身体的虐待」が全体の66%と最も多く、
▽次いで暴言などの「心理的虐待」が39%、
▽オムツをかえないなどの「介護放棄」が20%、
▽年金を使い込むなどの「経済的虐待」が18%などとなっています。
虐待の結果、死亡した高齢者も28人に上りました。
なぜ虐待が起きたか要因については、
▽介護疲れ・ストレスが最も多く24%、
▽次いで介護の担い手の障害・病気が21%などとなっています。
また、誰が虐待を行ったかは息子が最も多く4割、次いで夫が2割と、男性が加害者になるケースが目立っています。
一方、介護施設で職員から虐待を受けた件数は510件となり、要因については、
▽介護する側の知識や技術の問題が60%、
▽ストレスや感情のコントロールの問題が26%などとなっています。
厚生労働省は、特に男性が介護を担う場合は、不慣れな家事などでストレスを感じて虐待に至ってしまうケースがあるため、介護サービスの適切な利用を促す対策を進めるとしています。
男性の介護は増加傾向
高齢者の家族を介護する男性は、増加傾向にあります。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によりますと、同居する高齢者を主に介護している人のうち、男性の割合は平成13年には24%だったのに対し最新の平成28年の調査では34%に増加し、15年間で10ポイント高くなりました。
また、こうした主な介護者に悩みやストレスがあるか尋ねたところ、平成28年には男性は62%、女性は72%があると答えています。
厚生労働省は介護している人の中には悩みを周囲に打ち明けられずにストレスを抱え込み、虐待に至ってしまうケースもあるとみています。
抱え込まず専門家に相談を
家族に対して虐待をしてしまう人の中には介護サービスを利用していなかったり、介護の負担を誰にも相談できなかったりして孤立しているケースも少なくありません。
厚生労働省によりますと家族から虐待を受けた高齢者のうち、およそ半数は加害者である子どもや配偶者などと2人暮らしだったということです。
各地域には介護の専門家に相談できる「地域包括支援センター」があり、厚生労働省によりますと去年4月の時点で全国で5000か所余りに上っています。
「地域包括支援センター」では、高齢者に対して必要な介護サービスを提供するだけでなく、介護をしている家族の支援も行っていて、1人で抱え込まずまずは専門家に相談をすることが重要です。