Japanese News: 処理水のフェイク情報と新たな風評被害化粧品の不買運動も

処理しょり水すいの放出ほうしゅつをめぐって、いま国こくや市民しみんを巻き込まきこんだ“情報じょうほう戦せん”ともいうべき状況じょうきょうが起おきている。

政府せいふやメディアが反発はんぱつの姿勢しせいを強つよめる中国ちゅうごくではSNS上じょうに過激かげきな投稿とうこうがあふれ、それにあおられた市民しみんが日本にっぽんへ嫌いやがらせの電話でんわをかける事態じたいにまで発展はってん。

さらに、フェイク情報じょうほうによって日本にっぽんの化粧けしょう品ひんが買い控かいひかえられるという新あらたな風評ふうひょう被害ひがいまで。いま何なにが起おきているのか、データから実態じったいに迫せまる。

（8月つき28日にち放送ほうそう「クローズアップ現代げんだい」取材しゅざい班はん）

日本にっぽんへ“電でん凸とつ”の呼よびかけも

東京とうきょう電力でんりょく福島ふくしま第だい一いち原子力げんしりょく発電はつでん所しょにたまる処理しょり水すいの海うみへの放出ほうしゅつが始はじまった8月つき24日にち以降いこう、福島ふくしま県けんをはじめ全国ぜんこく各地かくちの自治体じちたいや飲食いんしょく店てん、学校がっこう、それに個人こじんの住宅じゅうたくなどに中国ちゅうごくの国くに番号ばんごうから始はじまる国際こくさい電話でんわの着信ちゃくしんが相次あいついでいる。

中なかには、一方いっぽう的てきに暴言ぼうげんを吐はいたり、ののしるようなことばを使つかって処理しょり水すいをめぐる対応たいおうに抗議こうぎするような内容ないようもある。

そうした中国ちゅうごくからと見みられる電話でんわ。

中国ちゅうごくのSNS「ウェイボー」では、日本にっぽんを非難ひなんするよう呼よびかける投稿とうこうが相次あいついでいる。

投稿とうこうの中なかには「『核かく汚染おせん水すい』を海うみに流ながした日本にっぽんを非難ひなんしたい人ひとは、この番号ばんごうに電話でんわしてください」という文言もんごんなどが記載きさいされたものもある。

東京とうきょう都内とないの施設しせつに電話でんわをしたとされる動画どうがでは、男性だんせいが「なぜ『核かく汚染おせん水すい』を海うみに放出ほうしゅつするのか」などと一方いっぽう的てきに中国ちゅうごく語ごで話はなす様子ようすがうつされていた。

中国ちゅうごくSNSの実態じったい「不満ふまん」と「恐おそれ」

NHKは、サイバー空間くうかんのSNS分析ぶんせきなどを行おこなっている都内とないの調査ちょうさ会社かいしゃと共同きょうどうで、ALPS処理しょり水すいの海洋かいよう放出ほうしゅつの前後ぜんごで中国ちゅうごく国内こくないでのSNS上じょうの投稿とうこうの変化へんかなどについて分析ぶんせきした。

分析ぶんせきに使つかったメインのワードは「核かく汚染おせん水すい」「核かく汚水おすい」「核かく廃水はいすい」の3つ。

対象たいしょうは中国ちゅうごくで広ひろく使つかわれているSNSの「ウェイボー」だ。

放出ほうしゅつ前まえの8月つき18日にちから放出ほうしゅつ後ごの25日にちまでのおよそ1週間しゅうかんのデータを収集しゅうしゅうした。

顕著けんちょな変化へんかが見みられたのは、ALPS処理しょり水すいの海洋かいよう放出ほうしゅつが始はじまった8月つき24日にちだった。

「日本にっぽんが核かく汚染おせん水すいを海うみに放出ほうしゅつ開始かいし」というハッシュタグが付つけられた投稿とうこうが、放出ほうしゅつ開始かいしからわずか3時間じかんで、12億おく7000万まん件けん以上いじょうの閲覧えつらんと、36万まん件けんを超こえるコメントが投稿とうこうされた。

投稿とうこう数すうは、21日にちには少すこし減へっていたものの、その後そのごは徐々じょじょに増ふえ、放出ほうしゅつ開始かいしの24日にちは前日ぜんじつの倍ばい以上いじょうの335件けんにのぼった。

投稿とうこうをさらに詳くわしく見みていく。

まず、投稿とうこう内容ないようについて「肯定こうてい的てき」か「否定ひてい的てき」に語かたられているかをAIで分類ぶんるいしてみると、調査ちょうさした期間きかんは批判ひはん的てきな内容ないようがほぼすべてを占しめていた。

さらに、投稿とうこう内容ないようを「怒いかり、不満ふまん、恐おそれ、喜よろこび、悲かなしみ」といった5つの感情かんじょうで分類ぶんるいした。

すると、海洋かいよう放出ほうしゅつが行おこなわれた24日にちをピークに「不満ふまん」と「恐おそれ」の2つの感情かんじょうを含ふくんだ投稿とうこうが、顕著けんちょに表あらわれていることが分わかった。

多おおく見みられたのが、SNSなどで日本にっぽんから発信はっしんされたと思おもわれる「海洋かいよう放出ほうしゅつに批判ひはん的てきな日本語にほんごのコメント」を引用いんようした投稿とうこうだった。

多おおくは日本語にほんごが中国ちゅうごく語ごに翻訳ほんやくされ、中国ちゅうごく国内こくないで拡散かくさんされていた。

さきほどのハッシュタグが付つけられた、あるアカウントの投稿とうこう内ないでは「東北とうほくの太平洋たいへいよう側がわの魚さかなは数すう年ねん食たべないようにします」など、日本にっぽん語ごのSNSのコメントが引用いんようされ、1万まん2000の反応はんのうを集あつめ、広ひろく拡散かくさんされていた。

ユーザーから多おおくの反応はんのうを集あつめた上位じょうい20の投稿とうこうのうち12が、国営こくえいの中国ちゅうごく中央ちゅうおうテレビや中国ちゅうごく共産きょうさん党とうの機関きかん紙しなど政府せいふや党とう直属ちょくぞくのメディアのアカウントだった。

中国ちゅうごくなどの情報じょうほう戦せんを分析ぶんせきしている調査ちょうさ会社かいしゃのアナリストは、こうしたデータから、中国ちゅうごくのねらいを「主張しゅちょうの正当せいとう性せい」「外交がいこう」「内政ないせい」の側面そくめんから指摘してきした。

テリロジーワークス陶山すやま航わたるスペシャリスト

「日本にっぽん発はつの否定ひてい的てきな言説げんせつが図はからずも中国ちゅうごくに広ひろく利用りようされてしまっている現状げんじょうがある。中国ちゅうごくとしては『日本にっぽん国内こくないでさえ放出ほうしゅつに反対はんたいしている人ひとがいる。そうした中なかで日本にっぽん政府せいふは断行だんこうした。どうして中国ちゅうごくが納得なっとくできようか』というロジックに、日本にっぽんのコメントを引用いんようすることで説得せっとく力りょくを持もたせたいねらいがあると考かんがえられる。処理しょり水すいの放出ほうしゅつは、日本にっぽんに強つよい態度たいどで臨のぞむための外交がいこうカードとして利用りようされている。また、中国ちゅうごくは国内こくないに経済けいざいや社会しゃかい問題もんだいも抱かかえる中なか、批判ひはんの矛先ほこさきを日本にっぽんに向むけることで、国内こくない内部ないぶの問題もんだいに目めを向むけないねらいがあるとも考かんがえられる」

中国ちゅうごくの情報じょうほう発信はっしんについては、中国ちゅうごくの外交がいこう問題もんだいに詳くわしい東京とうきょう大学だいがくの川島かわしま真しん教授きょうじゅも次つぎのように分析ぶんせきしている。

川島かわしま真しん教授きょうじゅ

「おそらく中国ちゅうごくとしては、外交がいこう的てきに取引とりひき材料ざいりょうをつくるとか、あるいは国際こくさい的てきに日本にっぽんに対にたいしてネガティブなイメージを作つくる。これは明あきらかに宣伝せんでん政策せいさくとして進すすめられているということです。加くわえて、書き込かきこみの内容ないようを見みても、ほぼ同おなじ方向ほうこうの内容ないようになっているので、おそらくは、そういったキャンペーンを張はりつつ、同時どうじに、そうした中国ちゅうごく共産きょうさん党とうの意見いけんに反対はんたいするものを消けしていく、そういうこともやっていると思おもいます。外国がいこくの問題もんだいに対にたいしては、多おおくの方ほう（市民しみん）は情報じょうほうを持もっていないので、そうなると政府せいふ系けいメディアの影響えいきょう力りょくが依然いぜん強つよく、そうしたメディアに頼たよった認識にんしきを持もつようになりがちであるということはあると思おもう」

韓国かんこくでも反発はんぱつ広ひろがる

一方いっぽう、韓国かんこく政府せいふは放出ほうしゅつに関にかんして賛成さんせい・支持しじの立場たちばではないとしながらも、放出ほうしゅつ決定けっていにあたって記者きしゃ会見かいけんで「科学かがく的てき・技術ぎじゅつ的てき問題もんだいはないと判断はんだんした」と述のべている。

しかし、韓国かんこくの市民しみんの間までは処理しょり水すい放出ほうしゅつに関にかんする反発はんぱつの感情かんじょうが巻まき起おこっていることが、SNSのデータからは見て取みてとれる。

韓国かんこく語ごで「汚染おせん水すい」を含ふくむX（旧きゅうツイッター）の投稿とうこうの数かずを分析ぶんせきツールで集計しゅうけいすると、ことし5月つきごろから投稿とうこうが増加ぞうかしはじめ、放出ほうしゅつが決きまった8月つき下旬げじゅんにはさらに増加ぞうかし、8月つき1日にちから26日にちまでにリポスト含ふくめて約やく70万まん件けん投稿とうこうされていた。

そのほとんどは処理しょり水すい放出ほうしゅつに反対はんたいする内容ないようで、子こどもたちの健康けんこうを不安ふあん視しする投稿とうこうや、反対はんたいデモへの参加さんかを呼よびかける投稿とうこうが多おおくリポストされていた。

さらには、処理しょり水すいの安全あんぜん性せいを紹介しょうかいする岸田きしだ総理そうり大臣だいじんのフェイスブックの投稿とうこうに韓国かんこく語ごで「汚染おせん水すい放出ほうしゅつをすぐにやめろ」「歴史れきしに残のこる犯罪はんざいだ」といった多おおくのコメントが書き込かきこまれるなど、反対はんたいする韓国かんこくの市民しみんによるネット上じょうでの運動うんどうが過熱かねつしている。

相次あいつぐフェイク情報じょうほう韓国かんこく・中国ちゅうごくからも

中国ちゅうごく・韓国かんこくで反発はんぱつや不安ふあんが広ひろがるなか、SNSやネット上じょうには処理しょり水すいをめぐるフェイク情報じょうほうも拡散かくさんする事態じたいとなっている。

6月つき、韓国かんこくのメディアを名乗なのるアカウントが動画どうが投稿とうこうサイトに「日本にっぽんがIAEAに政治せいじ献金けんきんを行おこなった」などとする動画どうがを投稿とうこう。

動画どうがで紹介しょうかいされた外務省がいむしょうのものとされる文書ぶんしょでは、処理しょり水すいに関にかんするレビューを行おこなうIAEAと第三国だいさんごく専門せんもん家かの意見いけんの相違そういを解消かいしょうするために、日本にっぽん政府せいふがIAEAに対にたいして100万まんユーロ以上いじょうの政治せいじ献金けんきんを行おこなったことなどをうかがわせる内容ないようが記載きさいされているとしていた。

しかし、この文書ぶんしょはうそだった。

動画どうがでは、日本にっぽん原子力げんしりょく研究けんきゅう開発かいはつ機構きこうの研究けんきゅう員いんの男性だんせいが写真しゃしん付つきで紹介しょうかいされた上うえで、文書ぶんしょでは、この人物じんぶつがあたかもIAEAとの調整ちょうせいを行おこなったかのように記載きさいされていたが、この人物じんぶつは、処理しょり水すいとは全まったく無む関係かんけいの担当たんとう者しゃだった。

私わたしたちがこの研究けんきゅう員いんに直接ちょくせつ取材しゅざいしたところ「全まったく身みに覚おぼえがない」と答こたえ、ネット上じょうの顔かお写真しゃしんが無断むだんで悪用あくようされていたことがわかった。

日本にっぽんの外務省がいむしょうは、「事実無根じじつむこんだ」と反論はんろんを行おこなったほか、韓国かんこく政府せいふも「フェイクニュースである」と結論けつろんづけるなど国際こくさい社会しゃかいを巻き込まきこんだ問題もんだいに発展はってんした。

また、中国ちゅうごく系けいとみられるSNSのアカウントが、日本にっぽん語ごで拡散かくさんしている真偽しんぎ不明ふめいな情報じょうほうやフェイク情報じょうほうも見みつかった。

特とくに7月つきから8月つきにかけて拡散かくさんしたのはこれらのイラスト。

日本人にっぽんじんアカウントの間まで拡散かくさんしている。

中なかには、核かく燃料ねんりょうに触ふれた水みずが「そのまま海うみに放出ほうしゅつされる」と、誤解ごかいさせるような書き込かきこみがされている投稿とうこうも見みられた。

このイラストを調しらべていったところ、文字もじは異ことなるものの同おなじ絵柄えがらを使つかったものが、数すう年ねん前まえに中国ちゅうごく語ごのXアカウントやブログで投稿とうこうされているのが確認かくにんできた。

数すう年ねん前まえのこの絵柄えがらが使つかい回まわされる形かたちで、中国ちゅうごく系けいのアカウントなどが日本語にほんごで投稿とうこうしたり、日本にっぽんにある中国ちゅうごく大使館たいしかんのアカウントがリポストするなどして、日本人にっぽんじんの間までも広ひろがったとみられる。

さらに、全まったくのフェイク情報じょうほうも広ひろがる事態じたいに。

「ドイツの研究けんきゅう機関きかんのシミュレーション」として、処理しょり水すいが世界せかいに広ひろがっていく様子ようすを示しめしたものだとする画像がぞう。

日本にっぽん語ごで発信はっしんする中国人ちゅうごくじんインフルエンサーが投稿とうこうした。

しかし、実際じっさいにはアメリカのNOAA（海洋かいよう大気たいき局きょく）が東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいのあとで津波つなみの広ひろがりを示しめした画像がぞうだった（この投稿とうこうはすでに削除さくじょされている）。

こうした投稿とうこうが広ひろがる背景はいけいには、中国ちゅうごく・韓国かんこくだけでなく日本にっぽんでも放出ほうしゅつに反対はんたいする声こえが広ひろがっていることもある。

X上じょうには、処理しょり水すいの放出ほうしゅつに反対はんたいするハッシュタグが放出ほうしゅつ開始かいし前後ぜんごからトレンド入いりするなど関心かんしんが高たかまっていて、関心かんしんの高たかまりにあわせて賛成さんせい・反対はんたいの双方そうほうからさまざまな情報じょうほうが飛び交とびかい、そのなかに真偽しんぎが不確ふたしかな情報じょうほうも入り込はいりこんでしまっているのが現状げんじょうだ。

日本にっぽん製品せいひんの不買ふばい運動うんどう新あらたな“風評ふうひょう被害ひがい”

こうしたフェイク情報じょうほうの広ひろがりは、新あらたな風評ふうひょう被害ひがいを引き起ひきおこしている。

標的ひょうてきとなっているのが『日本にっぽんの化粧けしょう品ひん』だ。

6月つき、中国ちゅうごくのSNS上じょうで「放射線ほうしゃせんの影響えいきょうを受うけている日本にっぽんの化粧けしょう品ひんリスト」というフェイク情報じょうほうが拡散かくさんした。

中国ちゅうごく語ごで「特とくに妊婦にんぷさんや授乳じゅにゅう中ちゅうの方々かたがたは安全あんぜん性せいを常つねに最さい優先ゆうせんに考かんがえて製品せいひんを選択せんたくしてください」などと不安ふあんをあおっている。

これにより、中国ちゅうごく国内こくないでは日本にっぽんブランドに対にたいする強つよい不信ふしん感かんが広ひろがった。

このフェイク情報じょうほうが拡散かくさんした6月つき初旬しょじゅんから中旬ちゅうじゅんにかけては、中国ちゅうごくで国内こくない最大さいだいのECセールが開催かいさいされていた時期じきと重かさなる。

都内とないのマーケティング会社かいしゃが、日本にっぽん製品せいひんのECサイトでの販売はんばい動向どうこうを分析ぶんせきした結果けっか、日本にっぽんの化粧けしょう品ひんの取引とりひき額がくが例年れいねんに比くらべ、大おおきく減少げんしょうしていた。

会社かいしゃの分析ぶんせきによると、中国ちゅうごくでも人気にんきが高たかい日本にっぽんの化粧けしょう品ひんトップブランド5社しゃの、6月つき5日にちから2週間しゅうかんの取引とりひき額がくは、前まえの年としの同おなじ時期じきと比較ひかくして、複数ふくすうのサイトで合あわせて2億おく元げん、日本にっぽん円えんにしておよそ40億おく円えんも落ち込おちこんでいたことがわかった。

その後そのごの詳くわしい調査ちょうさで、サイトのカスタマーサポート宛あてに「原産地げんさんちはどこか」、「本当ほんとうに安全あんぜんなのか」など利用りよう客きゃくからの問い合といあわせが増ふえ、返品へんぴん率りつが上昇じょうしょうしたことが明あきらかに。

さらに、多おおくの中国人ちゅうごくじんインフルエンサーが、炎上えんじょうリスクを避さけようと、日本にっぽん企業きぎょうから依頼いらいされていた商品しょうひんPRを拒否きょひするなど、販売はんばい促進そくしん活動かつどうが頓挫とんざしたことも売り上うりあげの減少げんしょうに影響えいきょうしたとしている。

マーケティング会社かいしゃの担当たんとう者しゃ

「中国ちゅうごく国内こくないでは消費しょうひを減退げんたいさせるようなニュースが非常ひじょうに増ふえていて、情報じょうほうが真実しんじつかどうか意識いしきされないまま、社会しゃかい的てきな不安ふあんが広ひろがっている。中ちゅう長期ちょうき的てきに中国ちゅうごくでビジネス活動かつどうをするのであれば、コストはかかるものの、商品しょうひん全量ぜんりょうの放射線ほうしゃせん検査けんさをして、安心あんしん感かんを証明しょうめいし、中国ちゅうごくの消費しょうひ者しゃに届とどけていくということをやらなければ、デマで広ひろがった不安ふあん感かんを覆くつがえすのは難むずかしいと思おもいます」

処理しょり水すいの海洋かいよう放出ほうしゅつ以降いこう、中国ちゅうごくの消費しょうひ者しゃの不信ふしん感かんはさらに高たかまっている。

海洋かいよう放出ほうしゅつが始はじまった24日にちには「ウェイボー」で一時いちじ「日本にっぽん化粧けしょう品ひん」が検索けんさくワードのトップになったほか、中国ちゅうごくの国営こくえい通信つうしん社しゃが実施じっしした「今後こんごも日本にっぽんの化粧けしょう品ひんを買かうか」というネットアンケートでは、回答かいとうしたおよそ1万まん8000人にんの99％以上いじょうが「買かわない」と回答かいとうしている。

こうした動うごきに対にたいし、日本にっぽんの複数ふくすうの化粧けしょう品ひんメーカーは、中国ちゅうごく国内こくない向むけのサイト上じょうなどで「中国ちゅうごくで販売はんばいされている商品しょうひんはさまざまな基準きじゅんを満みたしていて安全あんぜん性せいに問題もんだいない」などと説明せつめいしている。

そのなかの1つ化粧けしょう品ひん大手おおて・資生堂しせいどうのグループ会社かいしゃがNHKの取材しゅざいに対にたいし、「全ぜん世界せかいのお客おきゃくさまに安全あんぜんで高こう品質ひんしつな商品しょうひんを提供ていきょうするため、極きわめて厳格げんかくな法規ほうきや指針ししんに従にしたがって製品せいひんを製造せいぞうしています。今後こんごも、動向どうこうを見極みきわめながら、適宜てきぎ適切てきせつな対応たいおうをとって参まいります」と答こたえた。

“情報じょうほう戦せん”対策たいさく強つよめる外務がいむ省しょう

国くにや市民しみんを巻き込まきこんだ“情報じょうほう戦せん”ともいえるこの状況じょうきょうのなか、外務省がいむしょうは科学かがく的てき根拠こんきょや事実じじつに基もとづかないフェイク情報じょうほうへの対策たいさくを強つよめている。

フェイク情報じょうほうについて、AI＝人工じんこう知能ちのうを使つかって情報じょうほう収集しゅうしゅうを行おこない、事実じじつに基もとづかない情報じょうほうを見みつけた場合ばあいには削除さくじょを求もとめ、反論はんろんするとしている。

6月つきに韓国かんこくのメディアを名乗なのるアカウントが発信はっしんした「日本にっぽんがIAEAに政治せいじ献金けんきんを行おこなった」などとする動画どうがに対にたいしては、外務省がいむしょうはすぐさま「事実じじつ無根むこんであり、日本にっぽん政府せいふとしてこのような無責任むせきにんな偽にせ情報じょうほう流布るふに対にたいし、強つよく反対はんたいする」としてその内容ないようを否定ひてい。

さらに、8月つきに公開こうかいされた外務省がいむしょうの公電こうでんとされる文書ぶんしょに対にたいしても、外務省がいむしょうは「全まったくの偽物にせもの」ときっぱりと否定ひていした上うえで、「手段しゅだんを選えらばない悪意あくいのある偽にせ情報じょうほうの拡散かくさんは、自由じゆうや民主みんしゅ主義しゅぎに対にたいする脅威きょういであるほか、復興ふっこうに向むけ努力どりょくする人々ひとびとの感情かんじょうを大おおきく傷きずつけるものであり、断固だんことして反対はんたいする」などとする声明せいめいを発表はっぴょうし、強つよく非難ひなんしている。

外務省がいむしょう軍縮ぐんしゅく不ふ拡散かくさん・科学かがく部ぶ国際こくさい原子力げんしりょく協力きょうりょく室しつはNHKの取材しゅざいに対にたいし、「文書ぶんしょの偽造ぎぞうなどあたかも真実しんじつかのように見みせかけた特とくに悪質あくしつな偽にせ情報じょうほうだ。誤あやまった情報じょうほうやデマは速すみやかに正ただしていくことが風評ふうひょうの払拭ふっしょく（ふっしょく）につながる」と話はなしている。

また諸しょ外国がいこくの理解りかいを求もとめていくために、SNSを活用かつようして英えい・中なか・韓かん・スペイン語ごなど10か国かこく語ごで情報じょうほう発信はっしんしているほか、現地げんちの大使館たいしかんは、誤あやまった情報じょうほうや偽にせ情報じょうほうの一ひとつ一ひとつを訂正ていせいするQ＆AをHPに掲載けいさいするなどして風評ふうひょうの払拭ふっしょくに努つとめている。

安全あんぜん性せいの発信はっしんどうすれば

国くにの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎの委員いいんを務つとめた福島ふくしま大学だいがくの小山こやま良太りょうた教授きょうじゅは、各国かっこくに対にたいして、日本にっぽん政府せいふが安全あんぜん性せいの発信はっしんを継続けいぞくしていくことが大事だいじだと話はなした。

福島ふくしま大学だいがく小山こやま良太りょうた教授きょうじゅ

「中国ちゅうごくとの国際こくさい関係かんけいで言いうと、何なにを言いっても無駄むだだという人ひともいるが、そこできっちり回答かいとうした、誠実せいじつに回答かいとうしたという事実じじつはのちのちに効きいてくる。関係かんけいは必かならず変かわるので、今いまやれることをやっておくことで次つぎにつながる。国際こくさい世論せろんも味方みかたにつけていく必要ひつようはあるので、日本にっぽんが誠実せいじつに一ひとつずつ回答かいとうしている姿すがたを見みせるのは重要じゅうようだ」

一方いっぽうで、各国かっこくの理解りかいを得えていくには、各国かっこくの科学かがく者しゃどうしの交流こうりゅうなど、科学かがく的てきな発信はっしんだけではない取り組とりくみも必要ひつようだとしている。

「いかに理解りかいしてもらえる仲間なかまを増ふやすか、理解りかい者しゃを増ふやすか、結局けっきょくここに尽つきると思おもうし、いまからでも遅おそくはない。政府せいふどうしの関係かんけいだけに頼たよっていると理解りかいを進すすめるのはなかなか難むずかしい。政治せいじ的てきな対立たいりつが影響えいきょうを及およぼしてしまうのはわかっているので、そこを一ひとつずつ解ときほぐしていくしかないのではないか」

情報じょうほうに冷静れいせいに向き合むきあう

処理しょり水すい放出ほうしゅつが開始かいしされたあとも、日本にっぽんや中国ちゅうごく、韓国かんこくのSNSでのその是非ぜひをめぐる議論ぎろんはとどまる気配けはいをみせていない。

もちろん、建設けんせつ的てきな議論ぎろんは続つづけていかなくてはならない。

しかし、とりわけSNSでは、議論ぎろんが過熱かねつし、フェイク情報じょうほうだけでなく、一方いっぽう的てきなレッテル貼はりや誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうと感かんじる投稿とうこうも広ひろがっている。

そして、ネット上じょうのそうした情報じょうほうの拡散かくさんや混乱こんらんが、世論せろんを動うごかし、結果けっか的てきに不買ふばい運動うんどうなどにも発展はってんしている。

ネット上じょうの分断ぶんだんが、社会しゃかいや国家こっか間かんの分断ぶんだんをこれ以上いじょう広ひろげないように、何なによりまず、一いち人にん一いち人にんが情報じょうほうに冷静れいせいに向き合むきあうこと、そして立場たちばを異ことにする人ひとと相互そうご理解りかいを進すすめる丁寧ていねいなコミュニケーションを心こころがけていくことを、改あらためて肝きもに銘めいじたい。