河内国交野に美しいお姫様がいた。姫の母君は長い間病床にあり、自分が死んだあとの姫の行く末を案じ、観音様にお参りしたところ、姫の頭に鉢をかぶせよというお告げがあった。母君はお告げの通りに姫に鉢をかぶせ、それから幾日もしないうちに亡くなった。
父親が姫の鉢をみっともないからと言ってとろうとするが、どういうわけかはずすことができなかった。しばらくして父は再婚し、新しい母は姫の鉢を見て気味悪がり、家来に命じて姫を遠いところへ捨てさせてしまった。姫は何年もあちこちをさまよい、生きていくのが辛くなり川へ身を投げた。
翌朝若いお武家様が川岸を通り、姫を助け上げ、自分の屋敷へと連れて帰った。姫はそこで働くことになったが、ある日の夜、蔵の中に置かれている琴を見つけ、昔を懐かしんで弾いていると、その音を若君が聞きつける。若君は姫が高貴な生まれだと感じ、素性を訪ねる。姫は自分の身の上を若君に聞かせた。
その後若君に結婚話がもちあがるが、若君は鉢かつぎ姫と結婚したいと言い、両親から猛反対される。若君の父親は鉢かつぎ姫を亡き者にしようと刀を抜いて振りかぶった瞬間、鉢が光ってこなごなに砕け、なかからたくさんの金銀財宝とともに美しい姫の姿が現れた。姫はこの若君と結ばれいつまでも幸せに暮らした。