一方、アメリカのバイデン大統領はイスラム組織ハマスに拘束されている人質の解放に向けた交渉について、合意に近づいているという認識を示しました。
※11月21日(日本時間)のイスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。
WHO担当者「新生児みな重症 集中的な治療必要」
ガザ地区北部のシファ病院から移送された新生児31人について、WHO=世界保健機関でこの地域の緊急対応を担うリック・ブレナン氏がロイター通信のインタビューの中で、新生児の詳しい状況を明らかにしました。
このなかでブレナン氏は「31人のうち、11人から12人が命の危険がある状態で、ほかの子どもたちもみな重症だった。全員が小さく産まれた低出生体重児であるうえ、それぞれ深刻な感染症にかかっている」と説明しました。
WHOによりますとシファ病院から移送された新生児31人について28人はエジプトに退避し、3人はガザ地区南部の病院で治療を受けているということです。
ブレナン氏は「合併症が進み、今後急速に容体が悪化する可能性がある。これからしばらくの間は集中的な治療が必要だ」と述べ、新生児へ抗生物質や酸素の投与などを続けているものの症状が改善するか、予断を許さない状況だということです。
トルコ大統領 核兵器めぐりイスラエル追及の考え
ガザ地区への地上侵攻を続けるイスラエルを激しく非難するトルコのエルドアン大統領は20日、閣議後の会見で「われわれはイスラエルの核兵器をめぐる議論が忘れ去られることを許さない」と述べ、今後、この問題でもほかの中東諸国と連携して、イスラエルを追及する考えを示しました。
エルドアン大統領の発言は今月5日に、イスラエルの極右政党からネタニヤフ政権に入閣している閣僚のひとりがラジオ番組でパレスチナのガザ地区に核爆弾を投下するべきかを問われ「選択肢のひとつだ」と述べたことを念頭に置いたものです。そのうえで「イスラエルは核兵器の保有を公然と自白しているのに、国連の安全保障理事会もIAEA=国際原子力機関も調査を始めてすらいない」と述べ、国際社会に行動を起こすよう訴えました。
イスラエルは核兵器の保有を公式に認めていませんがスウェーデンのストックホルム国際平和研究所は、80発の核弾頭を保有していると推計しています。
米国務省 報道官「貨物船拿捕は明白な国際法違反」
アメリカ国務省のミラー報道官は20日、記者会見で「イエメンの反政府勢力フーシ派が貨物船を拿捕(だほ)したことは明白な国際法違反だ。われわれは貨物船と乗組員の即時解放を求める」と述べ、国連や同盟国と協議し、解放を求めていく考えを示しました。
WHO担当者「シファ病院で何人もの患者が生命の危機に」
ガザ地区最大のシファ病院から新生児の移送にあたったWHO(世界保健機関)の担当者が20日、エジプトとの境界にあるラファからオンラインで会見し、シファ病院に到着した今月18日から翌日の19日にかけてのわずかの間に、シファ病院で新生児2人が死亡したと明らかにしました。
その後、WHOは、パレスチナ赤新月社などと連携して、命の危険がある新生児をシファ病院からまず南部の病院に移送し、20日にはエジプト側に移送したと説明しました。
ただ、病院には、症状が非常に重い患者が取り残されており、担当者は「いまもシファ病院には、生命の危機にひんしている患者が何人もいる。数日以内にシファ病院に戻るつもりだ」と述べ、今後再びシファ病院からの患者の移送を支援する考えを明らかにしました。
また、この担当者は「シファ病院に注目が集まっているが、緊急の対応が必要な病院はそこだけではない」と述べ、ガザ地区北部の多くの病院が危機的な状況に陥っていると訴えました。
貨物船乗っ取りのようすか フーシ派が映像投稿
イエメンの反政府勢力フーシ派は20日、紅海を航行中だった日本企業が運航する貨物船を乗っ取った時のものだとする映像をSNSに投稿しました。
映像では、航行中の貨物船の後方からヘリコプターが近づき、銃を持ったおよそ10人の戦闘員が、船へと乗り移っていきます。その後、戦闘員たちは乗組員を銃で制圧し、「イスラエルに死を。アメリカに死を」などと叫ぶ様子も確認できます。
映像にはヘリコプターに加え、複数の小型船などで貨物船を囲むように航行する様子も映されていて、大規模な作戦だった可能性もあります。
イスラエル軍は乗っ取られた船はイスラエルの船ではないとしていますが有力メディアのハーレツなどは船を所有しているのはイスラエルの実業家、アブラハム・ウンガー氏の関連企業だと伝えています。
フーシ派は乗っ取った貨物船はイスラエルの船だとしたうえで今後も同様にイスラエルの船舶や関係する船舶を標的にすると主張していて、世界の物流への影響も懸念されます。
イスラエル軍が取り囲むなか インドネシア病院に数百人か
中東の衛星テレビ局アルジャジーラは20日、前日にイスラエル軍の攻撃を受けたガザ地区北部のインドネシア病院の内部の様子を伝えました。
病院内は天井が大きく壊れるなどしていて患者など12人が死亡したほか、イスラエル軍が取り囲む中、いまも病院内には700人ほどが残っていると伝えています。
病院を支援するインドネシアの人道支援団体はジャカルタで会見を開き「攻撃をやめるべきだ」と訴えたほか、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長も「医療従事者や市民がこのような恐怖にさらされることがあってはならない」とSNSに投稿し、攻撃を非難しました。
ガザ地区で野外病院設置の動きも
中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、ガザ地区中部のブレイジ難民キャンプにある国連機関が運営する学校にもイスラエル軍による攻撃があり、学校に避難していた人など少なくとも10人が死亡したと伝えています。
こうした中、ロイター通信は20日、医療機材を積んだおよそ40台のトラックがエジプトとの境界にあるラファ検問所を通過し、ガザ地区に入ったと伝えました。これはヨルダン政府の調整のもとで行われ、およそ180人の医師や看護師なども同行し、多くの人が身を寄せている南部のハンユニスに、48時間以内に野外病院を設置することを目指すということです。
イスラエル軍の連日の攻撃によってガザ地区の人道状況は悪化の一途をたどっていて、その改善が急務となっています。
バイデン大統領 “人質交渉は合意に近づいている”
アメリカのバイデン大統領はイスラム組織ハマスに拘束されている人質の解放に向けた交渉について、合意に近づいているという認識を示しました。
アメリカのバイデン大統領は20日、ホワイトハウスで開かれた感謝祭のイベントに出席した際、記者団から「人質交渉の合意は近いか」と問われたのに対し「そう思う」と答えました。
人質の解放をめぐってはアメリカの有力紙ワシントン・ポストが18日、イスラエルとハマスが、アメリカの仲介による交渉で5日間の戦闘の休止と引き換えにガザ地区で人質となっている数十人を解放することで合意に近づいていると伝えています。
バイデン大統領は連日対応にあたっていると強調していますが、解放に向けて合意に近づいているという認識を示した形です。
中仏首脳が電話会談 “2国家共存が根本的な解決方法”
中国の習近平国家主席とフランスのマクロン大統領が20日、電話で会談し、両首脳はイスラエル・パレスチナ情勢のさらなる悪化の回避が急務であり、「2国家共存」が根本的な解決方法だという認識で一致しました。
中国外務省によりますと、両首脳はこのほか、共に関心を持つ国際的・地域的な問題について意思疎通を続け、世界の平和と安定に貢献することで合意したということです。
冷え込み増すガザ地区 避難所で洪水の懸念も
ガザ地区では冷え込みが増しています。イギリスの公共放送BBCは20日、気象学者の話として、ガザ地区では例年、12月と1月には夜間は10度まで気温が下がると伝えました。
また、10月下旬に雨季が始まり、冬に向けて降水量が増加するとしています。そのうえで雨について「ガザ地区では真水が非常に限られているためここ1週間ほど、人々はバケツに雨水を集めているが雨が激しくなると、避難所の人々にとって洪水が問題になる」と伝えています。
こうした状況について、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は20日、SNSに「ガザ地区全域に大雨が降っている。この状況下の避難所には住むことができない。人々には選択肢がない」と投稿し、避難生活を強いられる人々の状況に懸念を示しました。
『この皿を満たせ』ロンドンでガザ地区への食料支援を訴え
WFP=世界食糧計画は、ガザ地区に供給されている食料は必要な量の1割にすぎず、市民は差し迫った飢餓の危機に直面していると指摘しています。
こうした状況を受け、パレスチナに医療物資などを提供している慈善団体は、20日、イギリスの首都ロンドン中心部で開かれた世界の食料問題について話し合うイギリス政府主催の国際会議の会場前で『220万人がおなかをすかせている』とか『この皿を満たせ』などと書かれた数百枚の紙皿を路上に並べ、停戦と食料支援を直ちに実現するよう訴えました。
慈善団体の代表は、この日の国際会議の議題にガザ地区への食料支援が含まれていないと批判した上で「現地の医師からは、子どもたちに急性栄養失調の兆候が見られるという情報が寄せられていて、このままではさらに多くの人が亡くなることになる。国際社会はこれを阻止するため今すぐ行動しなければならない」と呼びかけました。