戦闘の休止期間は少なくとも29日まで続きますが休止の再延長を模索する動きも伝えられ、双方の駆け引きが続いているものと見られます。
※イスラエルやパレスチナに関する動きを随時更新でお伝えします。
ガザで拘束の人質12人解放 収監のパレスチナ人30人釈放
イスラエルとパレスチナのガザ地区を実効支配するハマスは今月24日から4日間にわたって戦闘を休止し、イスラエル軍によりますと、27日までにハマスがイスラエル人と外国籍の人質合わせて76人を解放した一方、イスラエル側は刑務所に収容していたパレスチナ人150人を釈放しました。
さらに双方は戦闘休止の期間を2日間延長し、戦闘休止5日目となった28日もガザ地区で拘束されていたイスラエル人10人と外国籍2人の、合わせて12人の人質が解放された一方、イスラエルで収監されていたパレスチナ人30人が釈放されました。
こうした中、ガザ地区の保健当局は地区北部にある最大の病院、シファ病院で28日、人工透析が再開したと発表しました。保健当局は患者が透析を受ける写真を公開し地区内に搬入された支援物資などによって人道状況が改善したとしています。双方による新たな合意が守られれば、戦闘の休止は少なくとも29日まで続きますが、ハマスの幹部は地元メディアに「人質にしているイスラエル人の兵士について解放交渉をする用意がある」と述べるなど、休止をさらに延長したい意向を示しています。
“戦闘休止の再延長を模索する動き”
アメリカやイスラエルのメディアが、アメリカのCIA=中央情報局とイスラエルの対外工作活動を担う情報機関モサドのトップが、仲介役を担うカタールの首相やエジプトの情報機関のトップと人質のさらなる解放について話し合うため、28日、カタールの首都ドーハを訪れたと報じるなど、戦闘休止の再延長を模索する動きが伝えられています。
その一方で、イスラエルの有力メディアハーレツは関係者の話として、イスラエル側は10日間を超える戦闘休止には応じない方針だと伝えていて、休止の条件などをめぐり、駆け引きが続けられているものと見られます。
イスラエルがあくまでもハマスの壊滅を目指すとしている中、強い不信感を抱く双方が戦闘休止の再延長に合意できるのか、予断を許さない状況です。
ハマス 戦闘休止期間延長向け「イスラム聖戦」と協力か
ガザ地区から28日に解放された人質をめぐって、ハマスと連帯関係にあるパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」はこの日「われわれはイスラエル人の拘束者数人を引き渡した」とする声明を出しました。
ハマスが公開した、人質を赤十字に引き渡す映像ではハマスとイスラム聖戦の戦闘員が人質を挟むように両側に付き添って歩き、引き渡したあとには双方の戦闘員が抱擁を交わすなどイスラム聖戦の存在を印象づけています。
イスラム聖戦は先月8日の声明で30人以上を人質にとっていると主張していて、イスラエル側が人質が10人解放されれば戦闘休止期間を1日延長するとしている中、休止期間を延長したいハマスが人質の人数を確保するため、地区内のほかの武装組織と協力を進めている可能性もあります。
ハマス幹部「イスラエルの戦闘再開の脅しは国内へのアピール」
イスラム組織ハマスの政治部門の幹部は28日夜、レバノンの首都ベイルートで記者会見し「イスラエルによる戦闘再開の脅しは国内向けのアピールだ」と述べ、イスラエル側の揺さぶりには動じないと強調しました。
またこの幹部は、「イスラエル軍はガザ地区の土地の8割には踏み入ることができていないし今後も踏み入ることはない。敵の損失は今後数日で増加するだろう」と述べて、戦闘の再開も示唆しました。
このほか、ガザ地区の病院が機能せずに、治療を待つ人が増え続けているとして、「各国にさまざまな分野の野外病院の設置と、けが人や患者の受け入れを呼びかける」として国際社会にさらなる人道支援を求めました。
一方、ガザ地区で人質になっていたイスラエル人の女性が解放される前に書いたものだとするハマスへの感謝の手紙を紹介し、人質を丁重に扱っていることをアピールしました。
G7外相「休止のさらなる延長 必要に応じた将来の休止を支持」
G7=主要7か国の外相は日本時間の29日、声明を発表しました。
それによりますと、「人質の解放とガザ地区への人道支援の増大を可能にした敵対行為の休止を歓迎する」としています。
そして、今回の動きを「残るすべての人質が帰還することや、ガザ地区で進む人道危機に全面的に対処するための重要な一歩だ」とし、「休止のさらなる延長や必要に応じた将来の休止を支持する」としています。
一方、今月19日にイエメン近くの紅海で、日本郵船が運航する自動車運搬船「ギャラクシー・リーダー」が、イエメンの反政府勢力フーシ派に乗っ取られたことについて、「一般市民への攻撃や国際航路、商業船舶への脅迫をただちに停止し、運搬船と船員を解放するよう求める」としています。
釈放されたパレスチナ人女性「状況を世界に知らせるのが義務」
イスラム組織ハマスとイスラエルによる合意に基づき刑務所から釈放された、ヨルダン川西岸のラマラに住む、ハナン・バルグーシさん(59)が28日、NHKの取材に応じました。
ハマスとイスラエルがガザ地区での戦闘休止を2日間延長したことについて、バルグーシさんは、「2日では十分ではない。カタールやエジプト、アメリカによって休止期間が延長され、戦闘が終わるとともに刑務所に収容されたすべてのパレスチナ人の釈放を常に願っている」と訴えていました。
またバルグーシさんは刑務所に収容されているパレスチナ人が直面している厳しい状況についても明らかにしました。
バルグーシさんによりますとハマスによる大規模攻撃が起きた先月7日以降に収容されたパレスチナ人の女性は身体検査を受ける際に複数の刑務官の前で裸にさせられ、なかには「20人の兵士がおまえを暴行する準備ができている」などと脅されていた人もいたということです。
こうした中、自身が釈放されたことについて、「息子4人と兄がいまだに収容されている。さらに出所後に、ガザ地区が破壊されたことを知り胸が張り裂けそうだ」と話していました。
一方、釈放される際に刑務所の幹部から収容されているパレスチナ人の状況についてメディアに話せば「今度は無期限に収容する」と伝えられたということです。
それでも今回、取材に応じた理由についてバルグーシさんは「占領者イスラエルがパレスチナの少女たちにどんな仕打ちをしているのか世界に知らせるのは私の義務だ」と強調していました。
ガザ地区南部では依然燃料不足が深刻
戦闘の休止にともなってガザ地区には燃料や食料などの人道支援物資が運び込まれていますが、多くの人が身を寄せる南部では依然として燃料不足が深刻で住民たちは知恵を絞って生活を続けています。
NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが28日、ガザ地区南部のラファで撮影した映像では、電力と燃料の不足からミシンを動かせなくなった仕立て屋がミシンの先に自転車を取りつけ、ペダルを手で回すとミシンが動くように改造し、なんとか営業を続けている様子が映っています。
仕立て屋の男性は「ふだんは電気で動かしますが人力で動かせるようにしました。電力不足で、その場しのぎのアイデアです。多くの避難者が衣服を補修したがっているんです」と話していました。
多くの人が避難しているガザ地区南部のラファなどでは食料や飲み水だけでなく、衣服や靴などの日用品なども不足しているということで寒さが厳しくなる時期を前に人道危機のさらなる悪化が懸念されています。
靴などの修理店の男性は「いまは人々は新しい靴を買うお金などなく古いものを修理して履いています。多くの避難者がいて、ものも不足しています。私の家には25人が身を寄せていて彼らのためにも仕事をして稼がなければ」と話していました。