中国では先月以降、子どもたちを中心に呼吸器感染症の患者が急増していて、国内の病院では子どもたちの受診が目立っています。
このうち、北京市中心部にある小児科の基幹病院では、29日朝もマスクを着用した子どもたちが相次いで発熱外来を訪れる様子がみられました。
中国の保健当局、国家衛生健康委員会は、今月26日の記者会見で、流行の中心はインフルエンザで、このほか通常のかぜのウイルスの「ライノウイルス」や、発熱やせきなどの症状が特徴の「マイコプラズマ肺炎」など複数の病原体が患者の増加に関わっていると説明しています。
またWHO=世界保健機関は、中国当局から「新たな病原体は検出されていない」という報告があったとしています。
中国の保健当局は、ワクチンの接種やマスクの着用など通常の感染対策の徹底を呼びかけています。
北京の小児科には多くの患者
北京の中心部にある小児科の基幹病院では29日朝、発熱などで体調が悪くなった多くの子どもと、その付き添いをする保護者の姿が見られました。
この病院では、1階にインフルエンザなどの呼吸器感染症にかかり発熱した子どもに点滴を投与する専用の治療室が2つ設けられていますが、いずれもほぼ満室となっていました。
病院の中もマスクをつけて診察や治療を待っている子どもと保護者などで混雑していて、ぐったりとした様子で長いすに横になっている多くの子どもたちの姿も見られました。
中国では、病気にかかった際に比較的大きな病院に患者が詰めかける傾向があるとされています。
このため、大きな病院では少しでも早く診察を受けようと整理券を受け取るため病院が開く前から多くの人が並ぶことがあり、新型コロナウイルスの感染が広がり当局による行動制限が出る前は、インフルエンザなどが流行するたびに多くの人が病院に来て混乱することもありました。
このため国営メディアは、専門家の意見として症状が軽い患者は自宅で療養するよう呼びかけています。
感染した子どもの親「熱は最も高い時で41度から42度に」
5歳の娘がマイコプラズマ肺炎にかかったという母親は「娘は10月から11月にかけて症状が1か月も続き、点滴の投与は半月にわたった。熱は最も高い時で41度から42度に達し、5日ほど発熱が続いた」と話していました。
また、この母親は感染した原因について「ことしはマスクをせずに人が密集したところに出かけたために感染したのではないか」と話し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動制限などがなくなり、自由に移動できるようになったことも関係しているのではないかという見方を示していました。
そして、娘が通う幼稚園の状況について「多くの子どもが発症しほとんど誰も通園しない時もあった。のどが赤かったりせきの症状があったりすると幼稚園の先生らが自宅で休むよう促していた」と話していました。
このほか、幼稚園に通う娘がインフルエンザにかかったという父親は「最初のころは症状が重く起き上がれず全身に力がない状態で座れなかった。娘の友達も幼稚園に行けない状態でほとんどが自宅待機だ。予防や消毒を心がけるほかない」と話していました。
北京の日本人学校で学級閉鎖も
北京にある日本人学校でも、発熱や体調不良を訴える子どもたちが増え、29日現在、▽小学部で4クラス、▽中学部で1クラスが学級閉鎖になっているということです。
中国の専門家“十分な免疫持たない人が多いことが原因か”
感染症に詳しい南京大学医学院の呉稚偉教授は、国営の中国中央テレビのインタビューで、呼吸器感染症の患者が増えていることについて「通常、冬場には、インフルエンザやマイコプラズマ肺炎などの呼吸器感染が増える。しかし、新型コロナウイルスの感染対策により、この3年間は多くの人がほかのウイルスに感染してこなかったことも理由の1つではないか」と指摘し、「ゼロコロナ」政策のもとで感染対策が徹底されたためさまざまな感染症に対して十分な免疫を持たない人が多いことが原因の1つではないかと指摘しています。
そのうえで呉教授は「問題は、病院に多くの患者が詰めかけることで、医療体制がひっ迫し、病院で感染が広がるおそれがあることだ」と述べたうえで、症状が軽い患者は、自宅で療養するよう促す必要があると指摘しました。